Ryoko Tasaki
2020年6月26日

世界マーケティング短信:人々が今、脅威に感じるもの

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:人々が今、脅威に感じるもの

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

フェイスブック、ヘイト拡散への対策が不十分だとして抗議される

米国では6つの人権擁護団体が、フェイスブックが人種差別的な投稿の拡散に十分な対策を講じていないとして#StopHateForProfitキャンペーンを展開し、同プラットフォームへの広告掲載のボイコットを広告主に求めている。このキャンペーンに、ノースフェイス、パタゴニア、REIなどのアウトドアブランドが賛同。電通イージス・ネットワーク傘下のエージェンシー「360i」も、広告掲載の見合わせをクライアントに呼びかけている。

ユダヤ系の団体「名誉棄損防止同盟(ADL)」のジョナサン・グリーンブラットCEOは声明で「憎悪が拡散することで大きな危害が及ぶ他、オフラインでも許容されるようになってしまう」とコメント。フェイスブックが事態の進展に向けて真剣に取り組むことを、いかにユーザーや広告主が願っているか、このキャンペーンによって示していきたいと述べる。

全米有色人種地位向上協議会(NAACP)のデリック・ジョンソンCEOも、フェイスブックがプロパガンダの削除に消極的であると指摘し、「誤った情報の拡散が、民主主義に取り返しのつかない被害を及ぼした。それにも関わらず、同社とマーク・ザッカーバーグCEOが無関心であることは明らか。これは単なる過失ではない」と述べた。

 

感染症よりも社会格差が脅威に

マッキャン・ワールドグループが約2週ごとに実施しているグローバルアンケートの、第5回目の結果を発表した。3月上旬下旬4月下旬下旬に続くもので、今回は6月8~15日に世界18カ国・1万8000人を対象に行われた。この時期は欧米先進国が経済活動再開に向けて舵を切る一方で、新興国・発展途上国では感染が拡大。日本でも緊急事態宣言(4月7日~5月25日)が解除された。その動きを反映してか、新型コロナウイルスへの不安感が先進国を中心に大きく下がり、日本でも74%→66%と3月上旬の水準まで下がった。

新型コロナの影響で「社会の不平等が顕在化した」と考えている人はチリ(54%)やコロンビア(42%)など新興国・発展途上国で4割前後だが、先進国でもフランス(42%)、日本(40%)という結果に。新型コロナウイルスよりも「社会格差の方が脅威である」と回答した人は、チリでは4割超、欧米先進国でも3割超、日本では27%であった。

 

パンデミック期、投稿内容は「映え」よりもリアルへ

ウィー・アー・ソーシャルとグローバル・ウェブ・インデックスが5月下旬に、米国と英国の2,419人を対象に実施した調査によると、パンデミック期にはSNS映えするキラキラした日常を投稿しようと考える人は、わずか23%だったという。特に男性の46%は、日々の苦難について包み隠さず載せるようになったとのこと(女性は31%)。

ソーシャルメディアでシェアしたいと考えられている話題は、パーソナルな出来事(40%)、面白い動画(36%)、ネット上で拡散していく画像や動画といった「ミーム」(29%)であった。ミームのシェアは特にZ世代(44%)とミレニアル世代(34%)で顕著であり、ベビーブーマー世代(12%)と大きな差が開いている。

 

パーパスは購買行動の決め手となる

ゼノグループ(Zeno Group)が8つの市場(米国、カナダ、英国、フランス、中国、インド、シンガポール、マレーシア)で8,000名以上を対象に実施した調査によると、消費者は、パーパス(ブランドの持つ存在意義)に賛同するブランドから商品を購入する可能性が4~6倍高くなる。一方で、パーパスや価値に賛同できない場合には購入をやめると回答した消費者も8割近くに上るという。

「組織が果たすべき役割や社会での価値であるパーパスは、事業を成長させ、世界にポジティブな影響を与えることができます」と同社のマネージングディレクター、アリソン・ダシルバ氏はコメント。「どのように行動し、どのような課題に取り組み、ステークホルダーとどのように関係性を構築するか。明確なパーパスは、意思決定におけるフィルターとなるのです」

 

オグルヴィ、CEOにアンディ・メイン氏を任命

オグルヴィのワールドワイドCEO、ジョン・サイファート氏が退く意向をこの春発表したが、後任にアンディ・メイン氏(デロイトデジタルのグローバルヘッド)が任命されたと明らかになった。メイン氏は7月にオグルヴィに参画し、リーダーシップを引き継ぐ。

 

BBHウィグリー氏が今月いっぱいで辞任

BBHのアジア担当チェアマン、チャールズ・ウィグリー氏が今月末で同社を去り、英国に戻る予定だ。同氏はアジアで20年間、ロンドン勤務時代を合わせると24年間をBBHで過ごした。

今回の辞任は個人的な理由によるものだと、同氏はCampaign Asia-Pacificに語る。「子どもたち(双子の息子)はどちらも直近の2年間、英国で学校に通っており、彼らと一緒に過ごしたいと思っています」。しかし広告業界での仕事は、これで終わりではなさそうだとも付け加えた。「まだ心がアクティブ過ぎますし、この仕事のこともまだ大好きですから」

 

【お知らせ】

マーケティング、メディア、広告、コミュニケーション領域で活躍するアジア太平洋地域の女性を毎年40名選出する「Women To Watch」の、本年度のエントリーが開始となりました。エントリーのサイトはこちら(英語)で、締切は7月17日(早期エントリーの締切は7月10日)。昨年までのWomen To Watchはこちらから。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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