Ryoko Tasaki
2022年6月03日

人種差別の「治療薬」、ニューヨークの薬局に陳列される

パンデミック以降、米国でアジア系に対するヘイトクライム件数が急増している。

人種差別の「治療薬」、ニューヨークの薬局に陳列される

米国でアジア・太平洋諸島系米国人(AAPI)への憎悪犯罪(ヘイトクライム)が深刻な問題となっている。先日は韓国の人気グループ「BTS」がホワイトハウスを訪問し、差別問題についてバイデン大統領と会談した。

そんな中、ニューヨークの薬局の棚に「Cure For Racism(人種差別の治療薬)」と書かれた紙箱が陳列された。市販薬によく似たこの箱には「人種差別に対する、医学的な治療法はありません。学ぶことと理解することのみによって改善します」というメッセージや、非営利団体「ストップAAPIヘイト(Stop AAPI Hate)」のウェブサイトURLも記されている。

手掛けたのは、クリエイティブエージェンシー「アンカー・ワールドワイド(Anchor Worldwide)」。ゲリラマーケティングの手法をとったのは、潤沢なメディア予算が無いため「直感的でリアルな方法で人々とつながりたかったから」だと、CCOのアーロン・セドラック氏は語る。

このプロジェクトの発端となったのは、アンカー・ワールド社でオフィス復帰に躊躇したスタッフがいたことだ。アジア系への差別を恐れ、外に出たくないという話を聞き、AAPIスタッフを数多く抱える同社としてスキルを活用し何かできないか考えたのだという。

「私たちが目指すのは新しいムーブメントを作ることでなく、既存のムーブメントに参加すること。私たちが信じる対義のために、自分たちの役割を果たしたのが今回のプロジェクトです」。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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