Yohei Kato Koichi Ono
2016年5月10日

生活者が能動的になったデジタル時代に求められる、 企業コミュニケーションの仕組みづくりとは?

デジタル化が進み、リアルタイムマーケティングやコンテンツマーケティングなど、様々な新しい手法が提唱されている。しかし、その価値や意味、あるいは位置付けが不明瞭なまま、手法ありきで検討を進めてしまい、壁にぶつかる、あるいは実行に進めない場合も多いのではないだろうか。

小野洸一氏(左)と加藤洋平氏
小野洸一氏(左)と加藤洋平氏

スマホやSNSの浸透は踊り場に来ており、コミュニケーションの構造を変える因子が一通り出そろい、変化も一度落ち着いた感がある。そこでいま、あえて一度立ち止まり、個別手法の議論をするのではなく、コミュニケーション全体を俯瞰で眺めてみたい。その手がかりとしたいのが、この稿で論じる「エコシステム」的思考によるコミュニケーションシステムの構築という考え方である。

この思考の起点となるのは、生活者が情報の受信も発信も可能になったことにより、発信者と受信者の間での”非対称性”が崩れたこと、さらにはスマホの浸透も相まって、検索による情報取得の容易化、あるいは情報接点のリアルタイム化、カスタマイズ化が大きく進んだことである。

従来は受動的態度の生活者に対して接触のタイミングを一斉に作れることが前提にあり、宣伝費の対価としてのキャンペーン認知や興味などの短期的な指標が一義とされていた。しかし、上記のような状況変化は、生活者のキャンペーン以外での情報接点、一言でいうと、生活者の「情報環境全体」を視野に入れる必要性を生じさせている。それは、俯瞰すれば、消費者の能動性、時間軸や理屈に由来し、様々な情報が常に動いている構造体、いわば情報の「エコシステム(=生態系)」と捉えることができる。

つまり、「エコシステム」的思考では、生活者が生活者の理屈で能動的に動くことが前提となる。彼らを待ちかまえ、きっかけを捉えて個別にアプローチすることを叶える環境づくりに重きを置き、継続的な購買などの長期的な指標を一義とする。結果、オウンドメディアやアーンドメディア、製品といった顧客との接点全てに着目し、近づいてきてくれた生活者を迎え入れ、あわよくば味方になってもらうことまで見据える思考ともいえる。

現時点の日本では、TVの力がまだまだ強く、キャンペーン的思考で成果を挙げることはもちろんできる。しかし、デジタルネイティブな世代が世の中心を担う未来が確実にやってくることを考えると、今のうちから「エコシステム」的思考のアプローチへの投資を始め、この2つの思考を組み合わせてコミュニケーション全体を設計し、その考え方を社内全体に浸透させ、意思統一を始めるべきだと考えている。

「エコシステム」的思考によるコミュニケーションの設計は、各企業の置かれた状況に応じて異なる。まずは自社の顧客の「本当の情報環境」の把握から、取り組み始めてみるべきではないだろうか。
今回、このような場を提供いただいたことに感謝の気持ちを抱き、『キャンペーン』誌が従来型の「キャンペーン」的思考に変化をもたらすメディアであってほしいと願っている。

加藤洋平・小野洸一
株式会社電通
デジタルマーケティングセンター
POEMマーケティング部
コミュニケーションプランナー

提供:
Campaign Japan
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