Eric Ellefsen
2020年3月10日

男女平等な社会を実現する鍵は、私たち広告会社が持っている

「女の幸せ」という言葉の背景には、女性が家庭に入って愛されることというイメージが反映されている。今こそ人々の意識を変え、行動を促すことが広告会社の役割だと、TBWA HAKUHODOのエリック・エレフセン氏は語る。

男女平等な社会を実現する鍵は、私たち広告会社が持っている

男女平等が当たり前である社会――私たちはその実現を心から願っています。

現代の女性は、経済力と権力を持てるようになりました。女性には、さまざまな道が開かれ、それらを追求する自由があります。しかし、完全な男女平等への道のりはまだ長いのが実情です。

私たち広告会社は、女性も男性も同じ土俵に立ち、共により活躍できる社会にするために、何ができるのでしょうか。

私たちは、既存のルールや、長い間受け継がれている古い価値観のDisruption(創造的破壊)が答えだと考えています。無意識のうちに古い価値観を持ち続けていないか、自問・分析するところから始めてみましょう。

たとえば、「女の幸せ」という言葉を聞くことがあります。

「女の幸せ」とは、家庭に入り、男性と子どもに愛されることであるというイメージは、今でも多くの人が持っているでしょう。現代の広告・マーケテイングコミュニケーションでも、日常生活の中でも、私たちはこのイメージを常に目にしています。

しかし、「女の幸せ」という、一見ありきたりで無害に思えるこの言葉の背景には、いつの時代の社会的秩序や理想や価値観が反映されているのでしょうか。私たちは、このすでに過ぎ去った時代からのメッセージを、いつまで持ち続けるのでしょうか。さらに、ここで言う「女」とは誰のことでしょうか。同性愛者の女性や、男性の身体に生まれてきた、いわゆるトランスジェンダーの女性は含まれないのでしょうか。

私たち広告会社の仕事は、人々の意識を変え、行動を促すこと。

コミュニケーションとクリエイティブのプロフェッショナルとして、その力を駆使して世の中を変えていきましょう。

私たちは、ステレオタイプな思考や固定概念を自分の頭の中で壊していかなくてはなりません。今まさに、新しいストーリーを描き、人々に伝える時がきています。人の幸せの形はさまざまであり、女性も男性も関係なく、私たち一人ひとりが切り開くことのできる、無限の道のストーリーを。

今や、生活者は、商品やサービスの価格や性能だけではなく、その企業やブランドの価値観が自分の価値観と一致しているかどうかを、より重視するようになってきています。そのブランドが環境に配慮しているか、ダイバーシティやジェンダー平等に対してアクションを取っているか……。それらが生活者の購買行動に影響を与えているのです。生活者の声に耳を傾け、それをブランドストーリーに組み込んでいけるブランドが勝ち抜いていく世界が、すでに目の前にあります。

私たちの持つコミュニケーションとクリエイティブの力を合わせれば、世界や人々の行動に変革をもたらすことができるはずです。

男女平等、誰もがイコールな社会。それを実現する鍵を持つのは、私たちです。


エリック・エレフセン氏は、TBWA HAKUHODOの通訳・翻訳・トランスクリエイションチーム ディレクター。

(文:エリック・エレフセン、編集:田崎亮子)

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