Matt Bourn Sebastian Munden
2024年4月23日

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

なぜ持続可能性の話題が、広告業界でそれほど議論されていないのか? 広告業界として持続可能な未来を支援できるよう飛躍的な進歩を望む、業界内外の多くの人々はこのような疑問を呈している。

私たちは2024年の初めに、業界の年始イベントに複数参加したが、そこでは持続可能性についてはあまり触れられていなかった。また、マットは英広告協会で広報を担当する同僚と共にAIを使って、業界メディアが発表したトレンドや予測の記事25本を精査した。

上位5つのテーマを大まかにまとめると、次のようになる。

1. 責任あるAI開発と応用。社会的課題に対処し、悪用や悪影響を防ぐために、AIの倫理的な使用方法を確立すること。

2. 社会的信頼の回復と、誤情報への対処。フェイクニュースや誤情報に対抗するための、高品質で人間を中心に据えたストーリーテリング。

3. イノベーションや変化の受け入れ。重要な課題の解決策を見出すための、研究や開発への投資。

4. 社会格差の縮小と、結束の促進。社会的、政治的、文化的な境界を越えた議論やコラボレーション、理解の促進。

5. 優秀な人材の確保と維持。これには、イノベーションの推進や競争力維持のための給与や手当の増額や、成長機会の提供が含まれる。

この5つのテーマは少しAIに寄ったものになっているが、注目してほしいのはここに気候変動や持続可能性が含まれていないということだ。3点目「重要な課題の解決策」に含まれるという解釈もできるが、無理があるだろう。

気候変動への対策がこの業界で議論の中心にあり続け、散漫にならないようにするという真の難題に直面している。これが、私たちが至った結論だ。

立ち止まっている場合ではない

広告業界の脱炭素化を進め、持続可能な経済を促進するために持てる力を発揮し、価値創造と物質的な消費を切り離すには、一貫したリーダーシップや、常に見直しを続ける必要がある。

ところで、この課題を抱えているのは私たちの業界だけではない。BBCの経済担当編集者であるファイサル・イスラム氏はある年始の集まりで、1月末にダボスで開催された世界経済フォーラムで持続可能性と気候変動についてほとんど言及されなかったと振り返っていた。

多くの企業が持続可能性を“織り込み済み”と考えているからなのか、それとも単にもっと差し迫った、あるいは興味深いことが議論されていたからなのか。彼は後者ではないかと考えており、私たちも同じ見方だ。

しかし選定された議題と、企業が優先的に進めている実際の懸念事項とは必ずしも一致していない。

サステナビリティーは、英広告協会の評議会で昨年夏に検討した後、協会会員にとっての課題のトップ3にランクインしている。

広告業界が英国の経済的・社会的発展に最も責任ある貢献をしていくために必要なものとして、サステナビリティーは信頼性とインクルージョン(包摂性)と並ぶのだ

また、人材の獲得や維持においても極めて重要で、クライアントが調達契約に明記するほどである。

今回初めて多くの大企業が、自社やサプライチェーンの広告やメディアを含むカーボンフットプリントを開示することになる。

つまり、立ち止まっている場合ではないのだ。

私たち一人ひとりに、何ができるだろうか?

まず、広告業界のイベントを主催するのであれば、このトピックを議題としてきちんと取り上げ、躍進を遂げる登壇者やトピックからインスピレーションを得られるようにすることだ。

世の中には驚くような刺激的なことが起こっていて、聞いていて楽しいものだ。共著『Sustainable Advertising持続可能な広告)のリサーチ中にも、多くのそのようなことに出合った。

もしも広告やマーケティングの仕事に携わっているのであれば、この業界にはさまざまなタイプの組織があるが、ポジティブなインパクトを生み出すための一歩を踏み出そう。そして、完璧を目指そうとするあまり、進歩を止めないでほしい。また、上述した書籍の第1章にあるマニフェストについて同僚と話し合ったり、準備万端なのであれば第16章のチェックリストを実行に移そう。

広告賞を運営しているのであれば、応募者に何を求め、何を優秀賞として表彰しているのか、よく見つめ直して考えよう。

私たちは気候変動の時代に生きている。優れた作品として表彰する作品は、この問題を大きくするのか、小さくするのか? 最高の賞は、未来の作品に創造的なインスピレーションを与えるもの。持続可能な未来の実現にフォーカスした作品がこの業界から生まれるよう、ご自身が運営する広告賞をぜひ役立ててほしい。

もしあなたが業界誌の記者ならば、業界リーダーとのインタビューで持続可能性に関する質問を毎回1つや2つぶつけても問題はない。進歩を阻害する要因を明らかにすることは有益だが、可能であれば失敗話だけでなく、前進している部分や人々が学べるような点を強調しよう。しかし、最も重要なことは、持続可能性について報じる枠を確保することである。

業界団体に勤めているのであれば、サステナビリティーのワーキンググループを盛り上げていこう。アド・ネットゼロ(Ad Net Zero)、プラネット・マーク(Planet Mark)、グリーン・エレメント(Green Element)、パーパス・ディスラプターズ(Purpose Disruptors)などが提供するリソースを活用しよう。サステナビリティーに関する話題を取り上げる『ビジネス・グリーン(Business Green)』や『エディー(Edie)』などのメディアも、幅広い話題を提供してくれる。もしも所属団体でこのような動きが見られないのであれば、アップデートを求めよう。

もしあなたがコミュニケーションのプロであるならば、進歩に関するエビデンス(根拠)を求め続けよう。アド・ネットゼロのような取り組みに参加し、同じような課題に取り組む人たちの声を聞こう。

広告業界に対する業界内外からの声に耳を傾け、自分の仕事がポジティブな進歩に役立っているか確認しよう。

私たちは皆、持続可能性(そして私たちが進める取り組み)がこの業界の重要課題として議論され続けるよう尽力する責任を負っている。そしてそれは不純な動機からではなく、正当な理由のために議題であり続けなくてはならないのだ。


マット・ボーン氏は広告協会のコミュニケーション・ディレクター。セバスチャン・マンデン氏はアド・ネットゼロの会長で、キャンペーン・アド・ネットゼロ・アワード2024(Campaign Ad Net Zero Awards 2024)の議長を務める。共著に『Sustainable Advertising: How Advertising Can Support a Better Future』(コーガン・ペイジ社)がある。

 

提供:
Campaign UK

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