Goro Hokari
2017年3月30日

「隔てない90年代生まれ」の登場

同じミレニアル世代の中でも80年代と90年代生まれでは、ライフスタイルや価値観に大きな違いがある。90年代生まれの特徴を一言で言い表すならば「隔てない」ことである。

「隔てない90年代生まれ」の登場

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ミレニアル世代というキーワードは、イマドキの若者世代をざっくりと指し示す言葉として定着しており、1980年から99年生まれまでが含まれる世代だという。

しかしマーケターにとって、ミレニアル世代というターゲットは定義が広過ぎて、実際は使い勝手に困るのではないだろうか。特に、近年の社会変化が大きいアジアにおいて、80年代と90年代生まれを同一世代とするのは無理があるようにも思える。

こうした問題意識のもと、博報堂生活総合研究所アセアンではミレニアル世代の「80年代と90年代生まれにある世代ギャップ」を研究している。80年代と90年代生まれはさまざまな面で違う特徴を持つことから、それぞれ別の名前を付けることを提唱。80年代生まれを「キュレーター80s(厳選・編集する80年代生まれ)」、90年代生まれを「コンバージェネーター90s(隔てない90年代生まれ)」と名付けた。

80年代生まれはインターネットやソーシャルメディアを、自分のキャラを作る「ステージ」として捉え、「キラキラした自分を見せる」ことで承認欲求を満たしている人たちである。いわば「自分をキュレーションしている人たち」ということで、「キュレーター80s」と呼ぶ。

一方の90年代生まれは、彼らが「隔てない人たち」であることを最大の特徴と捉え、「収束」を意味するConvergenceをもとに「コンバージェネーター90s」 という少し難解な造語で呼ぶこととした。

では90年代生まれは、何を隔てない人たちなのだろうか?

彼らは「デジタル」と「リアル」を隔てない人たちである。例えば90年代生まれは、現在進行中の出来事をスナップチャットでリアルタイムに共有することが好きだ。デジタルは、80年代生まれが自分のキャラづくりの舞台と見ているのに対し、彼らにとっては「リアル世界の一部」である。

そこで、博報堂生活総合研究所アセアンが行った「世代間ギャップに関する家庭訪問インタビュー」で印象的だった90年代生まれを、以下に紹介する。

この写真はマレーシアの90年代生まれの男性が、その日の朝にスナップチャットであげた「高速道路を走っているだけ」の動画だ。70年代生まれの私には、ただ走行中の動画をシェアする意味が分からないが、彼らはむしろこうした現在進行中のありふれたひとコマをシェアする傾向にある。彼によれば、写真や動画をきっかけに「今、これ何やっているの?」といった会話が始まるとのこと。彼らにとっては写真や動画は記録のためではなく、会話のためにあるのだ。


この写真は、インドネシアで話を聞いた90年代生まれの女性だ。伝統のヒジャブの上から、最近買ったというVR機器を装着している。彼らは「伝統」と「革新」を隔てない人たちと言うこともできる。彼女に言わせると「特に大きな意味はなく、そんなに高くなくて面白そうだから買ってみただけ」とのことだ。



買い物行動では、90年代生まれの彼らは、気に入らなければすぐに売る、リアルな評価を伝えるべくレビューを書くなど、買った後の行動まで重視している。買ったらおしまい、ではなく「買った後」のプロセスを「隔てることなく」生活に取り入れている。

このシンガポールの90年代生まれの男性は「まず買ってみて、気に入らなければすぐ売るのでリスクは少ない」と言って、自身が出品しているフリマサイトを見せた。



また、彼らは好きなことを仕事にして自己成長を図っているので、オンとオフの境目も無い。90年代生まれのインドネシアの彼は「チャレンジしないことが最もリスク」が信条で、インスタグラム専業のフラワーブーケショップを開業している。注文が入ってから近所の花市場で仕入れるので、リスクが無い。「最初は資本探しからというのが80年代生まれ。90年代生まれは、資本が要らない仕事から始めたら?という」とのことだ。



こうした事例は、90年代の意識や行動の一部かもしれない。しかし「隔てない」という意識や行動は、裏表なくオーセンティックでありたいという90年代生まれの、欲求の根幹に通ずる意識・行動だと考えられるのではないだろうか。

博報堂生活総合研究所アセアンや調査・研究に関する情報は、こちらをご覧ください

博報堂生活総合研究所アセアン所長
帆刈吾郎

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