Raahil Chopra
2023年6月29日

カンヌライオンズ2023:広告は注目されなければ意味がない

カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルの初日、イーライリリー、ノットコ、ペプシコの幹部らがマーケターの役割について討論した。

カンヌライオンズ2023:広告は注目されなければ意味がない

第70回カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルの初日、ノットコ(NotCo)の最高マーケティング責任者(CMO)のフェルナンド・マチャド氏と、イーライリリーの最高コーポレートブランド責任者のリナ・ポリメニ氏、ペプシコの国際飲料部門CMOのマーク・カーカム氏らが、マーケターが直面する課題と機会について討論を行った。

この討論では、フェスティバルのコンテンツ担当シニアバイスプレジデント兼編集長のジェニ・ミドルトン氏がモデレーターを務めた。

討論の口火を切ったマチャド氏は、マーケティングの役割とその進化について語った。

「私たちはいつも変化に圧倒されている。毎年毎年、何かしら新しいことが起きる。私はそうした変化にも大いに興味を惹かれるが、一方で、古いマーケティング戦略についても読んだり学んだりしている。それは、マーケティングの基本を知り、それを正しく行いたいからだ。それが私の学びに役立っている」

自身の経歴がそれを示しているとマチャド氏は語る。彼は、ユニリーバで18年間働いた後、バーガーキングに移り、ゲームソフト開発のアクティビジョン・ブリザードを経て、チリ発のフードテック、ノットコでの現職に至っている。

「私はこれらの役職でも、常に学び続けてきたのだ」と同氏は付け加えた。

ミドルトン氏から、マーケティングの基本について問われ、マチャド氏はこう答えた。「嫌なクライアントになるな。正しいリサーチをしよう。正しい方法でパフォーマンスマーケティングをしよう。これらを実践すれば、良い成果を得られるはずだ」

同氏はさらに、マーケティング業界が急速に変化している例のひとつとして、メタバースとAIについて言及した。

「昨年は、みながメタバースについて語っていた。だが今は、その話題はほとんど出なくなり、みなAIの話題に夢中になっている。来年、どうなっているかは神のみぞ知る、だ」

マチャド氏はまた、CMOがCEOの右腕として見られる必要があると主張した。

「CMOの役割は進化し、マーケティングは4P(製品=Product、価格=Price、販促=Promotion、流通=Place)だけではなくなった。マーケティングは今や企業の推進力だ。CEOの右腕が最高財務責任者(CFO)だったら、決してうまくいかないだろう」

イーライリリーのポリメニ氏は、マーケティングの役割が変化しているという話に関して、ブランドが文化に追いつくことが重要だと述べた。

「ブランドは進化しているが、カルチャーはさらに速く変化している。競争で優位を保つには、組織としてのビジョンを持つことが必要だ。製品が顧客にどうフィットしているのか見極める必要がある。消費者にリーチする方法は大きく変化しており、私たちはカルチャーのスピードに合わせて動かなければならない」

モデレーターのミドルトン氏は次に、マーケターには誰でもなれるという一般論を持ち出し、ペプシコのカーカム氏に意見を求めた。

カーカム氏はこう答えた。「もちろん、私たち(マーケター)はスキルを身につけなければならない。しかし、それは多くの人に依存して成り立っている。CMOという立場は、エージェンシーと協力して適応範囲を広げなければならないが、それはブランドの枠組みにとどまる必要もある。それでも、私たちはグローバルな価値観をもって実行しなければならない。ブランドの枠組みの中での柔軟性という考え方が現実的であり、それに従う必要がある」

成長の推進力としてのマーケティング

カーカム氏は次に、マーケティングを成長の推進力とみなす必要性を強調した。

「今は多様な方法で成長を測定することができる。素晴らしい広告は成長の主要な推進力であり、それがビジネスを成長させる要因のひとつだ。これは業界についても言えることで、飲料業界全体が成長すれば、私たちの事業も成長することができる」

この話題について、イーライリリーのポリメニ氏はこう補足した。「今求められるCMOの役割は、クリエイティビティの必要性を根気強く説明することだ。マーケティングチームは、クリエイティビティの伝道師でなければならない」

マチャド氏はさらに、自分の信念を貫くことの重要性に言及した。「キャンペーンの成果を測定できるのは、作品が世に出た後のことだ。会社は常に短期的な結果を気にするし、確かに結果を出すことは必要だ。しかし、それでもやはり自分の信念を貫くことも必要だ。もしうまくいかなかったとしても、それを教訓として活用し、次の機会にもっとうまくやればいい」

広告における演出と安全性

賞を取るため、あるいは単なるスタント(人目をひくためのもの)として作られた広告について質問された際、マチャド氏は、それがどう評されるかは気にしないと答えた。

「人々が広告に注目したのなら、それが例えスタントであっても、私は気にしない。(マチャド氏の前職バーガーキングのCM)『カビだらけのワッパー』では、私たちは人工保存料を使わないことで、カビだらけになる過程を見せ注目を集めた。周りの企業もみなスタント広告を作っていた。その中には、注目された広告もあれば、そうでないものもあった。何をするにせよ、それがスタントであってもそうでなくても、注目されることが肝心なのだ」

討論の最後にミドルトン氏は、パネリストたちに、チームのモラルを維持しながら挑戦させるにはどうしたらいいかを尋ねた。

ポリメニ氏は、自身が携わる製薬業界についてこう語った。「私たちの業界が、安全を信条としているのは、そうしなければ(悪い)結果を招くからだ。当然ながら、規制には理由がある。規制当局者は、企業が何をしてよくて、何をしたら危険であるかを示すために働いてくれている。私たちの仕事は、規制の境界線を探ることではなく、カウンターの向こう側にいる顧客に手を差し伸べることなのだ」

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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