David Courtier-Dutton
2022年3月04日

2022年、音声ブランディングはソニックブームを引き起こすか

2022年、マーケティング業界でブームが到来しそうな、ソニック・ブランディングに関する10の予測。

2022年、音声ブランディングはソニックブームを引き起こすか

音声を活用するブランディング手法、いわゆるソニック・ブランディングの認知度が高まっている。2022年が「ソニックブーム」の年になる可能性は十分にある。ブランディングの専門家やマーケターがついに音声の力を理解し、サウンドが消費者の感情に訴えかける力を利用し始める年になるのだ。

ソニック・ブランディングがこの先、どのように展開し、業界にどのような影響を与えるかについて、10の予測を示していこう。

1. ブランディングエージェンシー各社が、ソニック・ブランディングのサービス提供体制を強化する

最近まで、クライアントがソニック・アイデンティティ(ジングル等)を必要としたら、大手エージェンシーからソニック・ブランディング専門のエージェンシーに外注されるのが一般的だった。しかし今、状況は変わりつつある。今後は、ブランドの知識を持つエージェンシーが音楽制作の専門家を直接雇用したり、提携したりすることで、音楽ブランディングのフルサービスを提供するケースが増えていくだろう。しかし需要が増えれば、競争も激しくなる。

2. TikTok(ティックトック)が音楽投資の波を促進する

TikTokが最も成長しているソーシャルアプリと認められたことで、10億人を超えるTikTokのオーディエンスと接点を持ちたいブランドは、音楽への関心をいっそう高めることになるだろう。当然ながら、TikTokは音声と音楽をマーケティング戦略の中核に据えている。そして、新人アーティストの登竜門としてだけではなく、TikTok世代と深い関係を築きたいブランドにとっても、この戦略はすでに成果をもたらし始めている。

3. 音声認識インターフェースの普及が音への投資を促進する

音声アシスタントやスマートスピーカーの普及によって、テレビ、PC、スマートフォンの画面は、もはや消費者がブランドに接する場としての支配的な地位を失った。視覚メディアがブランドと消費者の関係を構築する能力を弱めるなか、音声エンゲージメントがこれまで以上に重要となる。その結果、ブランドにマッチする音楽、声、アプリ内サウンドへの投資はますます加速するだろう。

4.  音楽の力を利用して潜在意識に働きかけるブランディングが増加する

サウンド、とりわけ音楽は、主に潜在意識のレベルに大きな影響を及ぼす。システム1(潜在意識)における反応は、システム2(顕在意識)より圧倒的に大きく、ビジュアルコンテンツ(CMなど)と組み合わせる場合、その傾向がより顕著になる。サウンド効果を評価するためには、この潜在的な反応を定量的に測定する能力が重要となるだろう。

5. 賢明なブランドはソニック・ブランディング戦術を強化する

ブランドはよりスマートに、自らの音声資産を活用するようになるだろう。消費者との最適なタッチポイントでブランドのサウンドキューを発することは、ブランドの存在感を短期間で高める非常に効果的なアプローチだ。例えば、Netflixを起動した時に聞こえる「ta dum」と呼ばれるサウンドは、消費者がリラックスしつつ、受容力が最も高まっている瞬間に再生される。そして、マスターカードのサウンドロゴは、購入が確定したまさにその瞬間に流れる。

6. 戦略的な音声活用が、ブランディングからマーケティングに拡大する

多くのブランドが、新たに獲得したサウンドの専門知識を、マーケティング資産にまで波及させるのは時間の問題だ。音声マーケティングの方向性をブランドパーソナリティと一致させることは、単に優れたマーケティングであるだけでなく、消費者と関わるたびブランドの存在感を高めることにもつながる。

7. 持てる者と持たざる者の格差が広がる

今後、よく練られたサウンド戦略を持つブランドと持たないブランドの価値の格差が拡大するだろう。音楽に投資し、独自の音声資産を構築しているブランドは、ブランドの個性と共鳴する一貫した音声アプローチによって、いずれはブランドの存在感を大いに高めることになる。音声資産を持たないブランドは、競合他社に存在感を奪われるリスクを抱えるだろう。

8. より高度な音声テストによって、主観的な意思決定のリスクを軽減する

ソニック・ブランディングや音声マーケティングにおける主観的な意思決定を減らし、確実にROI(投資利益率)を高めるため、専門的な消費者テストを実施するケースが増加するだろう。しかし、消費者テストがクリエイティビティに取って代わるわけではなく、むしろクリエイティビティを刺激するものとなる。信頼性の高いテストツールは、発表前の最終的な意思決定を最適化する。また、これらのツールはソニック・ブランディングへの投資を裏付け、正当化するのにも役立つ。

9. 大手音楽出版社がカタログにブランドパーソナリティ検索を導入する

豊富な音楽レパートリーを誇る音楽出版社は現在、さまざまな音楽にタグ付けを行い、クライアントのブリーフにマッチした音楽を検索するのに活用している。手作業でタグ付けしている出版社もあれば、AIによるタグ付けを用いる出版社もある。音楽がブランド資産の重要な一部となった今、総合的かつ戦略的なブランド構築を目指すブランドにとって、ブランドパーソナリティに即した音楽をいかに選択するかがますます重要になってくる。

10. 音声ブランディング、マーケティングの分野に、VC投資とM&Aの波が到来する

サウンドアイデンティティや音声戦略が、世界中のブランドにとって不可欠となる運命だとしたら、2022年はこの分野で統合とイノベーションの火ぶたが切られる年になるだろう。この分野のリーダーとして台頭するのは、スポティファイ(Spotify)やアイハートラジオ(iHeartRadio)、ユニバーサルミュージックなどではない。ブランディングの深い専門知識を持ち、実証済みのブランディング戦略を音楽メディアに応用できる企業だ。

ブランディングやマーケティングにおける音声の重要性を現在どう考えるかはさておき、この先、音声の活用はますます勢いを増し、まさに「ソニックブーム」のような衝撃波が到来するはずだ。自身のブランドや顧客、キャリアのためにも、この福音に耳をふさぐべきではないだろう。


デイビッド・コーティア・ダットン氏は、サウンドアウト(SoundOut)のCEO。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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