Dan Neary
2023年2月16日

2023年ブランドが押さえておくべきソーシャルトレンド

人工知能(AI)、メッセージ、越境EC、VR、AR、クリエイター、オンラインショッピング、ショートフォーム動画など、ブランドが今年注目すべきトレンドについて、メタのAPAC担当バイスプレジデントが語る。

2023年ブランドが押さえておくべきソーシャルトレンド

例年、年の始めは、メタのビジネスに関わるソーシャルメディアトレンドについて、各社に話をする機会が多くなる。今日のつながった世界においては、ソーシャルネットワーク、クリエイターやインフルエンサー、そして友人や家族は、製品やサービスを発見し、評価してもらう上で、極めて重要な存在となっている。

また、今日のビジネスのやり方が、わずか3年前と比べてさえ、大きく異なっていることも、ソーシャルトレンドを知っておくことが重要な理由のひとつだ。デジタル化がいや応なしに進む世界では、ライバルがどこから現れても不思議ではない。イーマーケターの最新リポートによれば、2023年には、APAC(アジア太平洋地域)が、世界のソーシャルネットワークユーザーの60%近くを占めることになるという。この地域の今年の成長率はわずか2.7%だが、世界の他地域の全てよりも多くのユーザー(5900万人以上)が参入した。したがってこの地域で、オンラインでブランドを構築すれば、顧客とつながることができる可能性は非常に高い。

とりわけ、世界的な景気後退が差し迫っているなかでは、このつながりを持続的かつ効果的に構築し、企業の成長に役立てる必要がある。不況の動向を予測することは難しいが、このまま不況が永遠に続くわけではないことは確かだ。そしてまた、不況の時期に優位に立つものは、テクノロジーを効果的に活用し、変化に迅速に対応し、パフォーマンスに注力した企業であることも間違いない。

そこで、2023年に企業が意識し、ビジネスに活用すべき、有望なソーシャルトレンドをいくつか紹介していこう。

  1. 人工知能:ジェネレーティブAIは、2022年末にブレークスルーを遂げた。技術の進歩と機能拡張が続くなか、AIはますます主流になりつつある。その結果、スマートホームデバイス、自動運転車、バーチャルアシスタントなど、AIを取り入れた製品やサービスが、ますます拡大している状況だ。AIを利用して、さまざまな非構造化データをベースに、情報を分析・整理したり、アクセスやアドバイザリーサービスを提供したりする動きは、今後も拡大を続けるだろう。IDCによれば、APACにおけるAIシステムへの支出は、2022年の176億ドル(約2兆3380億円)から、2025年には320億ドル(約4兆2500億円)に達する見込みだ。企業は今、顧客体験の向上や作業時間の短縮を目的とした自動化を進めている。例えば、顧客対応のAI機能を強化して、サポートの課題を解決することや、インテリジェントな自動化によって、複雑で反復的な業務を効率化し、意思決定のスピードを速めるなどだ。
     
  2. 企業メッセージング: 私たちは、メッセージファーストの世界に生きている。APACでは、オーストラリア、インドネシア、韓国、フィリピン、台湾、タイ、ベトナムで、ビジネスメッセージの活用が増えている。メタがボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と共同で行った最近の調査によれば、APACの消費者の3人に1人は、少なくとも週に1回、企業とチャットでやり取りを行っている。中小企業は、何年も前からビジネスでメッセージを利用しているが、今や大企業も、メッセージをビジネスモデルの重要な要素と捉え始めている。今回調査対象となった大企業の10社に7社は、自社のビジネス全体におけるメッセージの重要性を「高い」または「極めて高い」と評価していた。
     
  3. 越境EC:テクノロジーのおかげで、どこからでも簡単に買い物ができるようになったことで、世界はますます狭くなりつつある。人々は外国から商品を買うことに不安を感じておらず、越境ECの成長率は、国内ECをすでに5ポイント上回っている。2026年には、越境ECの市場規模が世界全体で2兆2000億ドル(約292兆2000億円)になる見込みであり、2019年からの年平均成長率(CAGR)は17%となっている。メタがユーガブと共同で、8カ国の1万6000人以上の買い物客を調査したところ、調査対象者の半数以上が、海外から製品を購入した経験があった。また、82%が購入に抵抗がないと答えるなど、越境ECの将来的な可能性が浮き彫りとなっている。ソーシャルメディアは、顧客に商品を見つけてもらう上で極めて重要な役割を果たしており、調査に参加した越境EC利用者の58%が、ソーシャルメディアで外国企業の製品を見つけたと述べている
     
  4. VR(仮想現実)とAR(拡張現実):企業はこれまで、主に顧客体験の向上を目的としてARやVRを採用してきた。現在の大企業は、より創造的で没入感のある方法でブランド体験を提供しようとしている。IDCによれば、APACではARやVRへの支出が年平均で42.4%成長し、2026年には166億ドル(約2兆2000億円)に達する見込みだという。企業はAR広告を利用することで、顧客とのつながりを深め、全体的な広告体験も向上させることができる。
     
  5. クリエイター:クリエイターには未来がある。興味深いことに、先の調査に参加した越境EC利用者の51%が、製品を発見したり評価したりするための最大の情報源としてクリエイターを挙げていた。ブランドはクリエイターと協力することで、ブランドストーリーを共に創り出すことができる。メタは2022年末、「クリエイターズ・オブ・トゥモロー」というグローバルキャンペーンを展開した。これは、メタのさまざまなアプリを活用して、コミュニティを構築し、イノベーションを起こしているクリエイターたちにフィーチャーしたもので、多様なクリエイターのアイデアを紹介している。ブランドにとって、他社ブランドやさまざまなクリエイターとのコラボレーション・共同制作を模索するのに、今ほど最適な時期はない。早く行きたいなら1人で行けば良い、しかし遠くへ行きたいならみんなで行くのが良い、ということだ。
     
  6. オンラインショッピング: 消費者は、実店舗に戻りつつあるが、パンデミックの際に作り上げられたデジタルショッピングの習慣は依然として根強い。モバイルは、X世代とベビーブーマー世代に見つけてもらうためのチャネルとして成長を続けている。ニールセンの調査では、APACの買い物客の85%が、今後もオンラインで買い物をすると回答しており、中でも東南アジアの買い物客は、オンラインショッピング意向が60%以上と、最も高い値を示していた。ソーシャルコマースは最も急速に成長している販売チャネルで、APACのオンライン買い物客の62%が「好んで利用するチャネル」として挙げていた
     
  7. ショートフォーム動画:短尺動画は、インターネットでも、メタのプラットフォームでも、猛烈な勢いで成長中だ。APACでは、メタの製品で人々が自分自身を表現するための、主要な手段のひとつとなりつつある。

では、企業はこれらにどのように対応すべきなのだろうか。まずは、ブランドの構築や没入感の高いショッピング体験の促進など、目標を明確にすることから始めるべきだろう。ブランド構築やブランド認知で企業が成果を上げるには、さまざまなフォーマットや尺の動画でブランドストーリーを伝えることが、今後は不可欠になる。企業にとって幸いなのは、ソーシャル、オンライン、没入体験、会話形式でのユーザー体験など、人々とつながったりブランドを構築したりするための手段はすでに数多くあるということだ。そこには探究すべきエキサイティングな分野が広がっている。

そして、ビジネスを運営したり消費者とつながったりするための新しい手段は、今後もますます増えていくだろう。


ダン・ニアリー氏は、メタのAPAC担当バイスプレジデント。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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