Gurmeet Lamba
2017年8月09日

AIによるパーソナル化の「不気味さ」を拭い去る方法

人工知能(AI)の活用はますます進化を遂げる。今やブランドやパブリッシャーはユーザーを煩わすことなく、より個々に合った体験を提供することが可能だ。

AIによるパーソナル化の「不気味さ」を拭い去る方法

人は誰でも、程々の人間的触れ合いを好む。行きつけのランチの店でウエイターがいつもの注文を覚えていてくれたり、靴屋の店員がこちらの顔を見ただけで好みのスタイルを分かってくれたりすれば、やはり嬉しいものだ。完璧に「没個性」でいたい人などいない。我々は巨大な集団の中の顔の見えない「その他大勢」ではなく、実体のある個人として扱われることを望んでいる。

ただし、これは「オフライン」での話だ。オンラインの世界のパーソナル化には我々は常に警戒心を抱くし、はっきり言ってそれは気味が悪い。調査会社eマーケターによれば、個人の志向に合った商品の案内メールが役に立つと思う人々は80%に及ぶという。確かにユーザーは自分に合った内容のメールは歓迎するが、ニュースを読むときやフェイスブックを見るときにつきまとうディスプレイ広告にはうんざりしているだろう。

ユーザーは役に立つと思う広告は好意的に受け止めるが、住んでいる所を知られたり買ったものを公表されたりすることは望まない。特にオンラインのパーソナル化したアプローチが実際の店舗で買い物をする際のパーソナルタッチと重なり合うと、ひどく違和感を覚える。

基本的にはあまりパーソナルになりすぎず、ほどよい距離感を保つパーソナル化が大切だ。この原則は特に小売業に当てはまる。

では、小売などのウェブサイトがユーザーを辟易させることなく、パーソナル化のメリットを享受するにはどうしたらいいのだろうか。パーソナル化は、どの程度が最適なのだろう。

まず大事なのは、ユーザーがどのようなパーソナル化を好むか把握することだ。購買パターンに基づいて送られる個々の志向に合った案内メールが歓迎されるのは前述の通り。これを例に話を進めて行こう。

このようなパーソナル化は、ユーザーが欲しいものを見つけるのに役立つ。つまり、ユーザー体験に付加価値をもたらしているからこそ機能するのだ。個々の興味に的を絞って案内を送るだけなので、ユーザーがほかのウェブサイトを見るときにつきまとうようなことはしない。メール内容はパーソナルだが、それを見てどうするかはユーザー自身の判断となる。実際に購入するなら、それはユーザーが自分の意思でメールを開けて読み、欲しいと思うからこその行動。ショップで店員が、「これをお求めになってはいかがですか」「今、ご購入されたらどうでしょう」などと客にしつこくつきまとうのとは対照的だ。

だが問題もある。こうしたパーソナル化を実現するには膨大なデータが必要だ。「あなたのようなユーザー」の大量の購買実績に基づいて購買パターンは導き出され、お勧め情報はつくられる。しかも、ユーザーがログインしていることがそもそもの前提になる。

ここで、AIの出番となる。AIを使えば様々な不備を補い、ユーザーを煩わすことなくよりパーソナルな体験の提供が可能となる。しかもユーザーは、パーソナル化されていることに気づかない場合が多い。

それがどのように機能するのか、1つ例を挙げてみよう。

例えばユーザーが、ある小売のウェブサイトをはじめて開いたとしよう。それまではログインしたことがないので、パーソナル化に必要な購入履歴はない。また興味の対象が新商品のラインナップであれば、過去の商品は参考にならない。こうした場合、通常ユーザーに提供できるのはごく一般的な体験になってしまう。しかしAIを使えば話は別だ。ユーザーが画像を1枚クリックするだけで、AIはキーワードやタグ付け、閲覧履歴だけでなく、その画像自体を分析し、何百もの画像の構成要素を読み取り、視覚的類似性に基づいて実際の商品を勧めることができる。

そして、次のクリックがパーソナル化の始まりとなる。ユーザーが閲覧を続けて勧められた商品をクリックすれば、AIはユーザーが何を本当に求めているかを理解し始める。ユーザーが重視するのは商品の形なのか、色なのか、それとも表現しにくい微妙な特徴なのか。あるいはそれらの組み合わせなのか、ほかの要素も含まれるのか……。AIはこれだけでパターン認識ができ、その場でユーザーの好みを効果的かつ直感的に捉えることができる。しかもユーザーがログインする必要はない。

これこそがパーソナル化しすぎない、程良いパーソナル化と言えるだろう。

ほかにも例が挙げられる。AIを使ったウェブサイトの最適化だ。AIが見出したユーザー層に基づいてパーソナル化を行い、特定ユーザーの共感を得られるようなメッセージやデザインを提供できる。つまりウェブサイトがその時々のユーザー層やユーザー行動を捉えて変化し、進化を遂げるのだ。

こうしたAI活用の様々なメリットでも特筆すべきは、ユーザーとブランドの双方に素晴らしい体験をもたらすことだろう。ユーザーはより良い商品とより優れたウェブサイトをいち早く目にすることで、欲しいものを素早く見つけ出せる。一方、ウェブサイトを提供するブランドにとっても商品のタグ付けや時間のかかるA/Bテストといったお決まりの作業を減らせ、迅速なビジネスが展開できる。更に、より深い顧客インサイト、新しいメッセージングや体験の提供、今後のトレンド予測も可能となる。実際、あらゆる戦略や販売促進を実現できるだろう。

兎にも角にも肝心なのは、オンラインでのパーソナル化でユーザーに不気味だと思わせないこと。このひと言に尽きる。

(文:ガーミート・ランバ   翻訳:鎌田文子   編集:水野龍哉)

ガーミート・ランバはサンフランシスコを拠点とするAIテクノロジー企業「センティエント・テクノロジーズ」のチーフ・オペレーティングオフィサーを務めている。

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