David Blecken
2017年6月14日

中年層の感情をゆさぶるネスレ日本のショートフィルム

高校の同窓会にまつわる甘くてほろ苦い恋心を、ネスレのブランディング動画が描く。

俳優の黒木瞳が監督を務めたショートフィルム「わかれうた」は、前編と後編の2本の動画からなるシリーズだ。変わらない友情、大人になってからの再会、そして甘酸っぱい恋の思い出がテーマとなっている。
主人公は、成熟の年を迎えたシングルマザー。高校の同窓会への出席を期に、かなわなかった恋の記憶がよみがえり、もし成就していたらどうなっていたかと思いをめぐらせる。さらには、新しい関係が始まる予感も……。(詳しくは後編へ)

作品の完成発表会は、ネスレ日本が協賛する「ブランデッドショート」で行われた。登壇した代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏は、「感情をゆさぶるような体験を、テレビCMではなし得なかった次元で提供したかった」と語る。監督自身の修学旅行の思い出に着想を得たというこの作品に、ネスレ商品が登場する場面は最小限に抑えられている。

高岡氏によると、同社はネスカフェブランドをストレートに訴求するCMを過去数年にわたって展開し、認知度は上がった。しかし消費者と感情面でのつながりを構築することは、容易ではない。そこでフォーマットに自由度があり、クリエイティブへの制約が少ないブランディング動画に、可能性を見出したのだという。

またオンライン動画は、国境も越えることができる。例えば、同社は日本のキットカットを韓国で昨年秋に販売開始したが、すぐに10%のシェアを獲得できたのは、日本で行ってきた施策が奏功したためだという。「良いブランディング動画がもたらす効果は絶大なのです」

Campaignの視点:
まず浮かんだのは、前編12分、後編15分という動画の長さへの懸念だ。長いコンテンツを作ることができるからといって、長い作品を作らなくてもいいのだ、と。

しかし作品はストーリーや演技、音楽によってうまくまとめられている。登場人物の置かれた状況や心境は、多くの人にとって感情移入しやすいものとなっているし、控えめなプロダクトプレイスメント(商品の露出)も好感を持てる。

結局のところ、視聴者が見たいのは、視聴者自身についての物語であって、ブランドの物語ではないのだ。無論、この動画によってネスカフェの商品が売れるのかどうかは、まだ分からないが。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

1 日前

日本の広告詐欺、依然として世界最悪レベル:IAS調査

日本のビューアビリティは世界でも最低水準で、アドフラウド(広告詐欺、不正広告)率も最も高い水準 −−インテグラル・アド・サイエンス(IAS)社の最新調査で、日本のウェブ環境が依然として改善されていないことがわかった。

3 日前

スパイクスアジア2022、エントリー始まる

35回目を迎える「アジアのカンヌ」こと、スパイクスアジア。来年は「クリエイティブデータ」と「ソーシャル・アンド・インフルエンサー」の2部門を新設。タングラムスアワードはスパイクスアジアに統合され、「ストラテジー・アンド・エフェクティブネス(戦略と有効性)」として生まれ変わる。

2021年10月15日

最先端D2Cブランドから学ぶべきこと

成功したD2C(Direct-to-Consumer)ブランドは、直販事業者だけにとどまらず、しばしば一般の消費者ブランドをもインスパイアするような、最先端のマーケティングを実践している。

2021年10月15日

TikTokワールドへようこそ

私たちは10年以上前から、ソーシャルメディアが大きな影響力を持つ世界で暮らしている。だが、マーケターのゲームを一変させるTikTokのようなプラットフォームが現れることはめったにない。