Ryoko Tasaki
2019年12月19日

2019年、最も注目された話題 トップ10

2019年に最も読まれたCampaign Japanの記事を振り返る。

2019年、最も注目された話題 トップ10

1. 変革の最中にある電通

2020年は変革の年」と山本敏博CEOが語るように、その前年である2019年も、電通にとって変化に富む一年となった。春にはメディアエージェンシー「電通メディアランウェイ」を設立。M&A(合併・買収)を次々と実施。さらに2020年1月1日からは純粋持株会社制へと移行し、称号も「株式会社電通グループ」に変更となる。人の入れ替わりが激しい一年でもあった。今年の主要な動きをまとめた記事(英語)をご覧いただければ、いかに多くの人々が同社を去ったのか、あるいは参画したのかが明らかだろう。さらに11%の人員削減を実施することも今週発表された。


2. 大きな盛り上がりを見せたラグビーワールドカップ

開催直前に盛り上がりが本格化した、ラグビーワールドカップ2019日本大会。オフィシャルスポンサーや、ニュージーランド代表を起用したCMを展開してきたAIGジャパン、女子ラグビーの日本代表選手を取り上げたギネスなどが、広告やイベントを通じてW杯大会、そして競技そのもののPRに力を注いだ。日本代表が予選を勝ち抜き、ベスト8入りしていく中で人気が急上昇し、閉幕後も代表選手たちがテレビ番組に登場したり、新語・流行語大賞でも「ONE TEAM」が年間大賞を受賞した。


3.  本田哲也氏の新会社設立

ブルーカレント・ジャパンのマネージングディレクターを務めていた本田哲也氏がこの春、新会社を設立した。同氏は設立の理由を「日本のPR市場が成熟し、PRの専門家は10年前よりずっと高く評価されるようになった。日本という広告中心の市場では、PRは比較的新しい領域ですから」と語る。(なお本田氏は近藤麻理恵氏を招いたセッションを企画支援。これに先駆けてCampaignが取材した記事も、多くの方々に読まれた)


4. 広告会社とコンサルティング会社は競合するのか

大手コンサルティング会社のエージェンシー買収など、広告界への進出の動きはここ数年とても注視されている。広告会社とコンサルティング会社は競合するのか? この筆者は「広告界の人間が、偽物のコンサルタントになろうとすることは無駄」と説く。


5. 大坂なおみ選手の取り上げ方で試されるダイバーシティー観

昨年のテニス全米オープンで見事優勝した大坂なおみ選手が、いくつかのCMに登場。その描き方もさまざまだった。まず2016年からスポンサー契約を締結してきた日清食品が、アニメCMで同選手を白人化して描いたとして騒動が勃発。ナイキのCMは、一躍注目されることとなった同選手の疲弊をリアルに描き出している。秋には若手芸人による差別的な失言についても、批判の声が上がったが、自身が登場する資生堂の日焼け止めにさりげなく言及して切り返した。


6. ブラウザーのクッキー規制

プライバシーへの関心が高まる中、2019年はChrome(グーグル)やSafari(アップル)などのブラウザーが、相次いでクッキー利用に制限を設けた。クッキーをターゲティング広告に用いていた企業は対応を迫られるが、多くの業界幹部は「古き良き」コンテクストマーケティング(消費者の背景や心情を理解し、「現在の業界は実績ベースのマーケティングを活性化させようと、クッキーのトラッキングに大きく依存している。大抵の場合、クリック数をできるだけ多く得ることに主眼を置いています」と語るのは、インテグラル・アド・サイエンスのローラ・クイグリー氏。「我々が以前の姿に戻り、クッキーではなく再びコンテンツに注力するようになれば、業界に良い結果をもたらすと思います。エコシステムの浄化にもつながるでしょう」


7. 社会課題の解決を呼びかける広告

社会的課題を扱った広告が話題に上ったり、賞を獲得することが世界的に増えているようだ。例えばスパイクスアジア2019では、経済的に恵まれない子どもに教育の機会を提供するプロジェクトや、性産業で働かざるを得ない女性たちの就業支援、偏見や差別に苦しむLGBTQへの支援、献血の啓発などを扱った作品がグランプリを獲得している。

今年当サイトでご紹介したさまざまな作品の中で、非常に多く閲覧されたのが、ブラック校則に異議を唱えたパンテーンのキャンペーン。生まれつきの髪の色を否定され、黒染めを強要されることに疑問を投げかけた。

社会的な大義によって消費者との関係づくりが促される効果はあるが、その一方で、強引で浅はかな企画もみられると警鐘を鳴らすのは、電通の田辺俊彦氏だ。見掛け倒しのキャンペーンを消費者は見抜き、最悪の場合はブランドを毀損することもあるという。「パーパスは、ブランドに深く根差したものであるべきです」


8. 「本当に面白い仕事に注力したい」 Whateverの誕生

2019年1月、独立系エージェンシー「Party」のニューヨークオフィスと台北オフィス、そして制作会社「dot by dot」が合併し、「Whatever」が誕生した。広告代理店と制作会社の業務、つまり「思考と制作のプロセスを完全に一体化すること」を目指す。重視するのは、予算規模よりもオリジナルの昨比wの作れるプロジェクトかどうか、そして多彩なスキルを持つクリエイターたちと必要に応じてコラボレートできるネットワークの構築だ。「企業と、その外部との障壁をなくしていきたいのです」と富永勇亮CEOは語る。

9. 博報堂、ビジュアルアイデンティティを刷新

7月、博報堂が新しいビジュアルアイデンティティ(VI)を発表した。「センタードット」と呼ばれるこのVIは、新しい社会・生活・未来への「起点」と「結節点」を象徴したもの。またVI変更に伴い、10月にはコーポレートサイトも大幅にリニューアルした。

10. 壮大すぎる、みずほ銀行の利用休止予告動画

みずほ銀行のATMが3連休中に休止するため、事前に現金をおろしておくよう呼びかける動画が、2月にSNS上で話題となった。世の中がパニックに陥り、戦闘機まで出動するという壮大な設定で、洋画予告編のパロディーだ。この動画は公式のCMではなく、VJとして活動する会社員が個人的に制作したもの。人々の笑いと共感を呼んだこの作品は、7月にATMが再び休止した際にも数多くシェアされている。なお7月には第2弾の動画も公開、今度はがらっと作風が変わって、少女漫画風だ。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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