Robert Sawatzky Matthew Miller
2019年11月19日

電通決算と新体制、詳報

先週、第3四半期連結決算と新たな経営・役員体制を発表した電通。来年から純粋持株会社体制へと移行し、商号は「電通グループ」となる。

電通決算と新体制、詳報

第3四半期連結決算では中国と豪州の業績が悪化、アジア太平洋地域(APAC)と海外全体におけるマイナス成長の要因となった。

電通グループのオーガニック成長率は1−9月累計で1%減。国内で0.9%減、海外事業を統括する電通イージス・ネットワーク(DAN)は1%減だった。

APACのオーガニック成長率は累計で9.7%減。第3四半期だけで12.3%減と全体の足を引っ張った。その主な要因は中国と豪州で、「両市場での回復の兆しは見えず、地域とグループ全体の業績に引き続き多大な影響を及ぼしている」(報告書)。

DANの第3四半期オーガニック成長率は1%減。米州は5%増と大きく成長したが、欧州・中東・アフリカ(EMEA)は英国とフランスの業績悪化の影響を受けて1%減だった。

山本敏博・代表取締役社長執行役員はニュースリリース(英語版)の中で、「海外事業を持続的に成長させ、クライアントにより効果的なサービスを提供するため、クリエイティブ、メディア、CRMの3本に事業を統合した」とコメント。「2020年は変革の年であり、2021年までに新たな体制に完全に移行して業務を行う」としている。

第3四半期は国内で大規模スポーツイベントがなく、従来型メディア(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)市場も減少。だが後者は、デジタル領域での大幅増収で相殺されたとしている。

「日本での収益は従来型メディアからデジタルチャネルへとシフトしつつあるが、これはグループ企業である電通デジタルやISIDなどの業績を如実に反映している」と山本氏。「引き続き、従来型メディアからのシフトで価値の転換を図っていく」。

第4四半期では、ラグビーワールドカップや東京モーターショーといった大型イベント効果による国内での業績回復や、米国での高いモメンタムの貢献が期待される。

電通グループ全体の売上総利益(為替影響排除ベース)は、第3四半期累計で前年同期比の3.3%増。国内事業が1.4%増、DANが4.6%増だった。

だが、増収の主たる要因はM&A(合併・買収)。電通は今年度、11件の買収を実現した(EMEAで3件、米州で2件、APACで6件)。

調整後営業利益は累計で755億円。前年同期の895億円から減少。オペレーティングマージンも前年同期の13.4%から11.2%に減少した。

2019年業績予想に関しては、8月の発表内容から修正はなかった。

「チーミング・カンパニー」

電通は、2020年1月1日から純粋持株会社体制へ移行することも正式に発表。商号は「株式会社電通グループ」に変更となる。同社内には、国内事業全般を統括する「電通ジャパン・ネットワーク」を設立。DANは引き続き海外事業を統括する。経営体制の刷新は1年以上にわたって検討されてきた。

これまでの電通の機能は株式会社電通承継準備会社に承継され、その商号は「株式会社電通」となる。

新たな体制が目指すのは、「多様な視点を持ち寄り、誰からでもどこからでもイノベーションが生まれる状態を当たり前にすること」(ニュースリリース)。更に、「そうした人材がdentsu(グループの総体)内だけでなく、外部の様々なパートナーと柔軟にチームを組むことで、新たな価値と新しいビジネスを次々に創造していく」。

持株会社の電通グループはグループ全体のガバナンスだけでなく、価値とイノベーションを創造する「全てのグループ内の個社・個人をエンパワーする役割」を担う。電通グループは「いわゆる一般的な持株会社ではなく、dentsu全体をチームにする会社、すなわち『チーミング・カンパニー』を目指す」としている。

国内116社を統括する電通ジャパン・ネットワークは、あらゆる課題に最適なチームを組んで対応できるよう「フラットで緊密なネットワークを築く基盤整備」を行う。

116社のうちの1社である新たな「株式会社電通」は、「より独立した形での事業成長と、自らのビジネストランスフォーメーションをこれまでとは違う次元のスピードを持って推進していく」。

新たな役員体制はこちらから

(文:ロバート・ザワツキー、マシュー・ミラー 翻訳・編集:水野龍哉)

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