Ryoko Tasaki
8 時間前

世界マーケティング短信:電通グループ、海外事業が厳しい結果に

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:電通グループ、海外事業が厳しい結果に

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

CXMは苦戦、メディア事業は安定的な成長 電通グループ

電通グループが2025年度第1四半期の業績を発表し、売上総利益は2873億円、オーガニック成長率は+0.2%だった。日本市場は人員強化により人件費が増えたにも関わらず、オペレーティングマージンが27.6%(前年同期)から29.0%に向上した。全体のオペレーティングマージンは11.8%、営業利益は254億円(前年同期比+75.5%)。

地域別にみると、日本(売上総利益に占める構成比は45%)はオーガニック成長率が+5.5%で8四半期連続のプラス成長だったが、米州(同27%)は-5.1%、欧州・中東・アフリカ(同20%)は-0.9%、アジア太平洋(同8%)は-4.6%といずれもマイナス成長だった。顧客体験マネジメント(CMX)は日本以外で苦戦が続き、中にはマイナス2桁成長の市場も。一方、メディア事業は安定的に成長した。

同社は経営基盤の再構築のため、2025年度に500億円を先行的に支出する他、AIやデータ&テクノロジー、人財の領域を中心に今後3年間で450億円を投資する予定。2027年度に16~17%のオペレーティングマージンを達成するため、オペレーティングコストの削減(年間500億円規模)に向けた施策の約9割を特定し、実行中とのことだ。

オグルヴィ、APACのソーシャルマーケティング機能を統合

大規模な組織改革を実施中のオグルヴィ(Ogilvy)が、アジア太平洋地域のソーシャルマーケティング機能を統合する。

これまではソーシャルメディアのリサーチ、キャンペーン開発、コンテンツ制作、メディアプランニングとバイイング、インフルエンサーマーケティング、ソーシャルコマース、CRMなどを個々のエージェンシーブランドが担っていたが、今後は16市場にまたがる事業をSocial@Ogilvyに統合し、550人のスペシャリストが協業していく。

同社はCampaign Asia-Pacificに対し「これはサービス提供の統合であり、事業の合併ではない」と明言し、人員削減を伴わないと説明。包括的なソーシャル・マーケティング・ソリューションへの需要の高まりに対応したもので、200人以上を新規で採用したという。

オグルヴィでアジア太平洋地域担当共同CEOを務めるクリス・ライターマン氏は「ソーシャルメディアは人々のつながり、コミュニケーション、そして消費行動を形成する文化的な影響力として最も強力」とコメント。「ブランドはソーシャルメディアを単に戦術として使うだけでは、もはや不十分。あらゆるタッチポイントにおいて文化的な関連性、コミュニティー、そして会話を生み出し、ブランドを根底からソーシャル化することが必要です。統合された当社のサービスはクライアントを、ブランド価値の創造、消費者エンゲージメント、ソーシャルコマースに至るまで、より深いインパクトや効率性、そして成果へと導く統合的でシームレスなアプローチで支援します」。

マイクロソフト、DSPXandr Invest」を終了しAI活用へ

マイクロソフト・アドバタイジング(Microsoft Advertising)が、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)であるザンダー・インベスト(Xandr Invest)を終了し、AIを活用したソリューションに移行していく。

マイクロソフトは2021年、ザンダーをAT&Tから買収。だが同社がAIにフォーカスするようになり、マイクロソフト・マネタイズ(Microsoft Monetize)のようなサプライサイドプラットフォーム(SSP)に軸足が移った。昨年はリテールメディア向けのソリューション「プロモートIQ(PromoteIQ)」から撤退している。

カンターのBrandZ、米国ブランドがトップ10を独占

カンター(Kantar)が毎年発表するブランドランキング「ブランドZ(BrandZ)」のトップ10を米国ブランドが独占した。トップ100のうち、米国ブランドが占める割合は、63%(2006年)から82%(2025年)へと上昇。中国ブランドの価値も過去20年間で倍増し、現在はトップ100全体の6%を占めている。

4年連続で首位に立ったのはアップル(Apple)で、1兆3000億米ドル(前年比+28%)のブランド価値を持ち、トップ10の合計値の12%を占める。2位以降にはグーグル(Google)、マイクロソフト、アマゾン(Amazon)、エヌビディア(NVIDIA)、フェイスブック(Facebook)などが続く。

日本発のブランドで、カテゴリー別のトップ10にランクインしたのは、アパレル部門のユニクロ(3位)とアシックス(8位)、自動車部門のトヨタ(2位)とホンダ(10位)、コンシューマーテクノロジー部門のソニー(9位)、通信部門のNTT(9位)だった。

カテゴリー別にみると、リテールブランドのブランド価値は48%上昇と勢いを維持している。アパレル(0%)は横ばい、食品・飲料(-1%)、パーソナルケア(-5%)のブランド価値は減少した。健康・ウェルネスへの関心の高まりを受け、アルコール飲料はマイナス成長(-11%)。ラグジュアリーはパンデミック中も成長した数少ない分野だったが、ステータスシンボルとなる物質的な消費からライフスタイルにおける体験消費に移行したことから-2%となった。

ブランドZの責任者であるマーティン・ゲレーラ氏は「世界経済危機や混乱の中、世界で最も価値のあるブランドは、20年以上にわたり一貫して米S&P 500やMSCIワールド・インデックスなどにおいて優れたパフォーマンスを示してきました。これらは、マーケティングの価値を証明する揺るぎない証拠です」と語る。「ブランドは企業にとって最も価値のある資産であり、市場がショックを受ける中で企業が最も避けるべきことは、マーケティングへの投資を削減することです」。

このランキングは、54市場、22,000ブランド、450万人の消費者へのインタビューに基づき、財務データと広範なブランド資産リサーチを組み合わせて評価している。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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