Surekha Ragavan
2022年1月20日

これからの企業PRのあり方とは?

ビジネスや社会環境における分断がますます進行するなか、コミュニケーション責任者やビジネスリーダーは2022年、何を優先すればよいだろうか? APAC(アジア太平洋地域)の業界関係者に話を聞いた。

これからの企業PRのあり方とは?

ここ数年、ESG(環境・社会・ガバナンス)、説明責任と透明性、クリエイティビティとデータの融合といった課題に注目が集まるようになってきた。また、シニカルな消費者(加えて時には従業員)の目も厳しくなるなかで、パーパスウォッシング(表面的で実態を伴わないこと)の危険性も増している。そこで私たちは、企業PRのエキスパートに2022年の見通しを聞いた。コミュニケーション責任者とビジネスリーダーは、パンデミックの再来や人材不足、ステークホルダーの需要の変化、組織への監視の強化といった難題に、どう立ち向かえばいいだろうか。

変わり続ける世界の大きな問題に取り組む
MSL APAC & MEA 最高経営責任者、マーガレット・キー氏

2022年は昨年と似通った年になるだろうと思いますが、ソリューションにはより重点を置く必要があるでしょう。企業には、緊迫した今の世界を理解し、そのなかで変化、前進していくことが求められており、そのプレッシャーは急速に高まっています。主な課題としては、現在進行形のパンデミックによる健康リスク、オフィス勤務と在宅勤務のバランス、世界的サプライチェーンの見直し、テクノロジーとメタバース、ESG、気候変動などが挙げられます。

こうした状況のなか、コミュニケーションやPRの役割はがますます重要になります。ただし、ほとんどの企業にとっての問題は、どうやってコミュニケーション部門を適切に組織し、様々なステークホルダーの要求や新旧の課題に対応していくかということでしょう。現在、企業はビジネスの損失を回避しつつ、ビジネスモデルを再考し、究極的にはその存在意義までも再定義しなければならないでしょう。このような状況はかつてないものだと思います。そして、企業の存在意義に変化をもたらすことができるのはPR部門だけなのです。

「型にはまらない」人材の獲得
アーキタイプ(Archetype) エグゼクティブバイスプレジデント兼リージョナルディレクター、リー・ニュージェント氏

2022年、コミュニケーション責任者やビジネスリーダーは、大量離職によって物事の優先順位の再考を迫られました。2022年は、人材争奪戦の年になるでしょう。現在、私たちはかつてないリソースのひっ迫に直面しており、コミュニケーション部門は、これまでとは異なる分野からも人材を求める必要に迫られるでしょう。また、社内人材の育成にもさらに力をいれていく必要があります。今後数年のうちに多様な視点がもたらされ、誰もがその恩恵にあずかれるようになることを願っています。

同様に、企業コミュニケーションにおいては、メンタルヘルスや個人の成長、社会的目的といった課題に取り組むため、人を中心に据え、従業員を重視した、ウェルビーイングやケアに関するプログラムを継続することが重要になります。従業員、顧客、その他のステークホルダーは、経営陣に対し、単なるリップサービスではない共感的リーダーシップの実践を求めています。

ステークホルダー資本主義を前提に
アリソン+パートナーズ(Allison+Partners) シンガポール、ゼネラルマネージャー、アデリン・ゴー氏

ビジネスコミュニティが、本質的なレベルでこれほど多くのプレッシャーに直面する事態は近年なかったことです。企業リーダーは、単に成果や自社収益の拡大だけでなく、より広い意味での経済課題や社会課題に対する信念や行動で評価されるようになってきました。

企業がコミュニティや社会を含めた、すべてのステークホルダーの価値に配慮するという「ステークホルダー資本主義」の概念は、世界の動向やポスト・パンデミックの未来に備えるなかで、もはや理想論ではなく、より現実的なものとみなされはじめています。企業リーダーは、目的、共感、誠実さをもって行動しなければなりません。こうした行動を成功に導くのが、私たちコミュニケーターの仕事なのです。

大胆な方法でディスラプションを乗り切る
アシュベリー・コミュニケーションズ(Ashbury Communications) 創業者・マネージングディレクター、アダム・ハーパー氏

企業として、破壊的な変化の波にどう対処するかが、2022年の企業コミュニケーションの成否を分けることになるでしょう。ほとんどの企業はパンデミックにうまく対応しました。今年、考慮に入れなければならない課題としては、環境問題や社会問題に対する運動の活発化、ウェブ3.0やメタバースに適応したビジネスモデル、地政学的リスクの増大などが挙げられます。

こうした一触即発の状況では、企業リーダーは最悪の事態を想定することはもちろん必要ですが、同時に、より良い未来に向けた展望を明確に語る勇気ももつべきです。今後数年で、テクノロジーの進歩とサステナビリティの推進により、経済とビジネスに本質的変化が訪れる可能性があります。疲弊し、怒りに満ち、分断されたこの世界に、ボジティブなビジョンを届けることは、コミュニケーションにおける難題ですが、私の感覚では、オーディエンスはより良い未来の展望に飢えています。ただし、そのビジョンは、サステイナブルファイナンスやデジタル化といった、すでに起こりつつある変化に根ざしたものであることが重要です。

「変革のエージェント」としてのコミュニケーター
エデルマン(Edelman) APAC、企業イノベーション責任者、サイモン・マーフィー氏

今日の企業リーダーは、長引くパンデミックや、地政学的緊張の高まり、テクノロジーによる創造的破壊、加速する気候変動危機などのなかで舵取りをしつつ、それでも成長しつづけるレジリエントな企業をつくりあげなくてはなりません。企業のコミュニケーションチームは、企業リーダーが社内外のステークホルダーの要求の変化に対応しつつ、収益を伸ばすための取り組みを支える存在であるべきです。実にエキサイティングな時代といえるでしょう。

しかし、コミュニケーション機能の重要性が高まる一方で、その実践のためのリソースは不足しています。こうした環境のなかで成功するには、コミュニケーターは、付随的なコストセンターから、臨機応変で分野横断的、インサイトドリブンな不可欠のパートナーへと転換すべきです。そして変革のエージェントとして行動し、現在進行している変革にいっそう力を注ぐ必要があります。

ローカルで共感重視のコミュニケーション
H+Kシンガポール 国内PRサービス責任者、セレナ・シャイフ氏

今年、企業リーダーは、社内チームやステークホルダー、顧客などの、信頼とエンゲージメントを再構築する必要があります。その影響力を高めるため、リーダーは一貫性と信頼と共感を重視して、もっと積極的にコミュニケーションをとるべきです。現在見られるような大量離職は、人々がベストパフォーマンスを継続するために、もっと細やかでインクルーシブな待遇を求めていることを明らかにしました。

この先、企業が評価を高めていくには、現地のコミュニティと関係を築き、国ごとの状況に応じた取り組みを進めることが重要です。進むべき道は、よりニュアンスを含んだメッセージや、わかりやすいコンテンツを、従来型メディアとソーシャルチャネルの両方で、提供する統合的コミュニケーションです。また、データと分析を基に決定を下したり選択したりすることも、引き続き重要です。

若い人材の獲得が鍵に
SPRGシンガポール ゼネラルマネージャー、エドウィン・イェオ氏

最大の課題の一つは大量離職問題です。これにより企業が新たなプロジェクトを実行してイノベーションをもたらすことが難しくなりました。この難題を前に、企業はエンプロイヤー・ブランディング(職場の魅力を高め、社内に発信する活動)や従業員とのコミュニケーションにいっそう力を入れていくことになるでしょう。若い人材を引きつけることがやや難しくなりましたが、これは結果的には企業の健全化につながります。Z世代の働き手は、単なる利益至上主義でない、目的志向の組織で働きたいという意欲をもっています。もちろん企業としては、目的を達成しつつも収益を上げることが大前提とはなります。多くのスタートアップがこうした目標を達成しています。従来型企業は、こういった点を彼らからもっと学ぶべきでしょう。

加えて、役職や等級を越えて人材を抜擢することが、もうひとつのトレンドとなるでしょう。企業評価は、どんな人材を擁しているかに大きく左右されます。鍵を握る人材をもっと前面に押し出してくる企業が増えてくるのではないでしょうか。 

ステークホルダーはもっと多くを求めている
イオングループ(The EON Group) 企業PR責任者、デニース・チン氏

リモート環境下でステークホルダーとの関係を構築し強化することが引き続き課題であるなかで、私たちは信頼の構築という目的に常に立ち返るようにしています。顧客とのコミュニケーション戦略においては、真実に基づくだけでなく、文化的に共感しやすく、ノイズや誤情報に侵されないものにすることを重視しています。

企業リーダーは、不測の事態に備え、常にデータを把握し、柔軟かつ臨機応変に対応すべきです。状況に取り残されないよう、常に計画を見直しアップデートする必要があります。2022年においては、ステークホルダーから責任を問われるもの、すなわちエンプロイヤー・ブランディング、CSR、ESGといったテーマにとくに気を配り、常にデータを活用しながら有意義な戦略を構築する必要があるでしょう。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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