Jessica Goodfellow
2022年2月03日

グーグル「Topics」は、ベーシック過ぎる?

アドテク業界関係者の第一印象では、グーグルが新たに提案したChromeのCookie代替技術は、消費者や規制当局には好まれるかもしれないが、広告主にとっては大幅な価値低下をもたらすものだという。

グーグル「Topics」は、ベーシック過ぎる?

グーグルが新たに提案したChromeブラウザのターゲティング技術は、業界からあまり歓迎されていないようだ。

この新しい広告ターゲティング技術は「Topics」と呼ばれ、これまでの「FLoC(Federated Learning of Cohorts)」の代わりとして、グーグルが2023年末までにサードパーティCookieを段階的に廃止する際のソリューションとして、新たに提案された技術だ。どちらのソリューションも、グーグルの取り組みであるプライバシーサンドボックスイニシアチブによって開発されている。

Topicsは、Chromeユーザーの過去3週間の閲覧履歴に基づき、ユーザーが関心を持つ3つのトピックを広告主と共有する。ユーザーは自分のトピックを確認したり、トピックを個別に削除したり、機能そのものを無効にすることもできる。FLoCとは異なり、行動に共通点があるユーザーのコホートを利用するものではない。人種や性別といったデリケートなカテゴリーも使用しない。

Topicsは、FLoCよりはるかにシンプルだ。そのため消費者は、自身のインターネット行動について容易に理解することができ、情報に基づく選択もしやすくなる。これは規制当局に歓迎される特徴だ。しかし、アドテクの専門家たちに言わせれば、そのシンプルさには欠点もある。「あまりにベーシックで」で、マーケターが効果的にオーディエンスをセグメント化したり、メッセージを調整したりできず、Chromeに表示される広告の価値が下がるというのだ。

Cookieの消滅後、広告主がターゲティング、測定、アトリビューションを続けるためのソリューションはアドテク業界の至るところで開発されており、グーグルのソリューションはその1つにすぎない。Campaign Asia-PacificはAPAC(アジア太平洋地域)や世界を舞台に活動するアドテク関係者に、Topicsの第一印象を聞いてみた。その中には、他のIDソリューションを開発している企業や他のIDソリューションと提携している企業に属する人物も含まれる。Lotameは2020年に「Panorama ID」を発表している。OpenXは「Unified ID 2.0」を採用し、LiveRampの「Authenticated Identity Infrastructure」とも緊密に連携している。

「広告主にとってはあまりにベーシックだが、オーディエンスにとっては有益」

オムニコム・メディアグループ タイ法人CEO、ロシェル・チャヤ(Rochelle Chhaya)氏

まず、グーグルが代替案を見つけようとしていることは評価します。オーディエンスの立場からすると、最新のトピックが重視されることは有益であり、「その瞬間」に最も関連性が高い広告が表示されることになります。例えば、数週間前にノートPCを購入していたとしたら、ノートPCの広告を見る必要はもうありません。しかし、それがあまりにベーシックだと言う意見にも賛同します。ただし、私たち広告主にとって、Topicsも数あるデータシグナルの1つにすぎないことを忘れてはいけません。Topicsと合わせて、他にも多くのデータポイントを持つ必要があるでしょう。また、これがChromeを中心に置いた技術であることを考えると、他のブラウザが独自のソリューションを開発するのか、Topics APIを積極的に取り入れるのかを、十分に見極めなければなりません。エコシステム全体がどのように対応するのか、とても興味深いところです。さらに、広告主としては、個々の顧客とそのビジネス目標のために、最適なデータセットを見つける必要があるでしょう。

「はるかにわかりやすいが、広告パフォーマンスが低下する可能性も」

オーバードース 東南アジア担当マネージングディレクター、イエスティン・キース(Iestyn Keyes)氏

消費者のプライバシーは依然として最優先事項であり、業界は透明性のある方法でターゲティングを改善するため、ともに革新を続ける必要があります。このアプローチがどのように機能するかはまだわかりませんが、FLoCの a)あまりにブラックボックスで中身がわからない、b)プライバシーに関する欧州の懸念を完全には解消できていない、という課題にグーグルが対応しようとしていることは明らかです。広告の配信先を選択するのに、最新のトピックをランダムに3つ選ぶという方法は、広告主にとっては、消費者へのメッセージに連続性がなくなり、パフォーマンスが低下する可能性があります……しかし、一方で、はるかにわかりやすいというのも事実です。

それぞれのプレイヤーのモチベーションは全く異なるため、これは簡単なプロセスではないでしょう。例えば、Braveはブラウザとして市場シェアを拡大するため、何よりプライバシーを重視していますが、グーグルは、広告ビジネスに影響を与えることなくプライバシーの懸念に対処したいと考えているでしょう。

業界がどのように対応するかに注目してください。やはり鍵を握るのは透明性とイノベーションです。

「パブリッシャーのオプトインを促すため、グーグルはどのようなインセンティブを用意するのか?」

マグナイト アジア事業ディレクター、ターシャ・コー(Tasha Kaur)氏

TopicsはFLoCと異なり、具体性に乏しいため広告主にとっての価値も低いと思われます。また、パブリッシャーには、ユーザーのオプトインを求めるということですが、どのようにオプトインを促すのか、グーグルはどのようなインセンティブを用意するつもりなのかという重大な問題があります。Cookieに代わるものを実現するには、プライバシーに焦点を当てる必要があり、成功と見なされるためには、パブリッシャーと広告主の幅広い支持を得る必要があります。この提案がそれを成し遂げるかどうかはまだわかりません。

「ターゲティングを骨抜きにするアプローチ」

アキリズ CEO、ゴータマン・「Gマン」・ラゴタマン(Gowthaman 'G'man' Ragothaman)氏

APACは先進国市場に比べ、独自のファーストパーティのデータベースを構築する取り組みがかなり遅れています。特に、消費財(CPG)企業は消費者をターゲティングする際、サードパーティトラッキングに完全に依存しています。さらに気になるのは、APACのマーケターの発言力が非常に限定されていて、弱いことです。

Topicsはターゲティングを骨抜きにするアプローチです。多くの人は「コンテクスチュアルターゲティングの復活」と見ているかもしれませんが、私はもっと程度の低いものだと思っています。このアプローチには2つの理由で「本質的な信頼性」がないためです。まず、これは非常に限定された方法であり、Chromeという1つのブラウザのみから行動を理解します。ブラウザ全体に占めるChromeのシェアはかなりのものですが、消費者の行動を完全に表しているわけではありません。次に、Topicsはセッションベースのため、過去2~3週間の行動のみに限定され、極めて戦術的なものであり、全く戦略的ではありません。

しかも、これはプライバシーを重視し、規制当局からの増大する要求を満たす唯一の方法ではありません。業界は学習の共有を迅速に進めなければなりません。例えば、複数の企業が安全な方法でオーディエンスインサイトを共有できる連合学習モデルを開発すれば、共同のアクティベーションや測定に利用できるようになるでしょう。

「有望な技術に見えるが、成果は実装方法によって決まる」

Open X  APAC担当マネージングディレクター、アンドリュー・トゥー(Andrew Tu)氏

結局のところ、オーディエンスターゲティングはデジタル広告の生命線です。そのため、それを大規模に実現できるものであれば、Open Xは歓迎します。まだ初期段階ではありますが、Topicsは正しい方向への一歩に見えます。(消費者を含むすべての人にとって)よりわかりやすく、より直接的に役立つ情報を提供すると同時に、消費者により優れたプライバシーを保証するものだからです。Topics APIの実用性は、トピックが決定されるレベルとトピックの粒度に大きく左右されると思います。もしトピックの決定がサイトレベルであれば、精度の問題が生じます。もしトピックが極端に曖昧であれば、その価値が下がります。有望な技術に見えますが、それがどのように実装されるかが最終的な成果に大きな影響を与えるでしょう。また、APACに関して言えば、国ごとの差異をすぐにTopicsに反映させるのは難しく、最初はより一般的な形で構築されることになるでしょう。しかし、徐々に市場ごとの違いが見えてくるはずです。

「分類がシンプルになり、透明性が高まったTopicsは、規制が厳しい業界の広告主にとっての選択肢になる」

フォレスター バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト、ジョアンナ・オコネル(Joanna O'Connell)氏

FLoCから大きく変わった点が1つあります。FLoCは機械学習とAIでコホートを構築していましたが、Topicsのアプローチはよりシンプルで、本質的に透明性が高いという点です。グーグルは、ゴールはどのサイトがどのトピックと関連しているかという分類を構築してくれる、第三者機関の存在になるだろうと述べています。ユーザーがウェブサイトを訪問すると、グーグルはそのウェブサイトと3つの関心(トピック)のみを共有し、FLoC IDがデバイスの識別子として使用されるリスクを軽減します。トピックの保存期間は3週間です。

このような透明性の向上は、ユーザーと広告主の両方にとって意味があります。ユーザーは自分にどのようなトピックが関連づけられているかを確認し、ウェブサイトと共有したくないトピックを削除できます。Topicsそのものをオプトアウトすることも可能です。また、金融サービスなどの規制が厳しい業界の広告主にとって、FLoCは選択肢になりませんでしたが(不透明なモデリングは問題外)、分類がシンプルになり、透明性が高まったTopicsは選択肢となりえます。

しかし、俯瞰的に捉えると、違いはほとんどありません。データ規制は全速力で進行しており、広告主はやはりデータの消滅に備えるべきです。それは、戦略的な見地から言えば、ゼロパーティデータとファーストパーティデータの戦略を強化し、消費者エンゲージメントが意味ある価値をもたらしているかを検証し、完璧な「1対1のコミュニケーション」の必要性について従来の前提を見直すことを意味します。戦術的には、オーディエンス開発、広告ターゲティング、パーソナライズ、測定に関する現在のアプローチを点検し、Cookieベースのソリューションに代わる代替案をテストするためのロードマップを作成することを意味します。

そのためには、Topicsはツールボックスに入った道具の1つ、つまり、選択肢の1つにすぎないと考えてください。(Topicsは)グーグルが管理するツールであり、FLoCからの脱却ではありません。あらゆる方向からの逆風にさらされ、その地位を維持しようと試みるアドテク/コンテンツ/検索/ブラウザ/ウェブサービスの巨大企業による戦いの次なるステップにすぎないのです。

「現代のマーケターの大多数にとっては極めて不十分」

Lotame COO、マイク・ウーズリー(Mike Woosley)氏

グーグルはTopicsについて、「一握り」の関心領域から、そのいくつかをユーザーに割り当て、それを3週間にわたって持続させるブラウザユーティリティだと説明しています。2005年頃のコンテクスチュアル広告の手法をほうふつとさせる機能です。残念ながら、このような技術では、現代のマーケターの大多数にとっては極めて不十分です。マーケティングボイスを決定したり、顧客をセグメントに分け、ブランドへの親近感を測定したり、非常に細かいセグメントを持つ保険のような商品のマーケティングを調整したりするため、現代のマーケターは詳細なペルソナを必要としています。「スポーツ」と「ホッケー」の違いでさえ、デジタルマーケターにとっては、価値の有無に関わる相違になりえます。ホッケーはスポーツのトラフィックの3~4%にすぎないかもしれません。このような初歩的なツールに頼っていては、グーグルは認証済みトラフィックの巨大帝国を維持できないでしょう。そして、それを世界中に広めるようとするのは、デジタルメディア業界の大多数に対する侮辱だといえます。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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