Jo Allan
2022年1月04日

フェイクニュースによる誤情報拡散に、広告業界はどう立ち向かうか

広告業界には、ニュースブランドのような、信頼できるメディアへの投資を増やしていく責任がある。

フェイクニュースによる誤情報拡散に、広告業界はどう立ち向かうか

私たちは、フェイクニュースや誤情報で荒廃したオンラインの世界に生きている。マサチューセッツ工科大学(MIT)は2018年の調査で、フェイクニュースが本物のニュースより、約6倍も速くソーシャルメディアで拡散することを明らかにしている。

ここ数年で私たちが経験してきたさまざまな出来事を考えれば、2018年など遠い昔のように思える。だが、それから状況は変わっただろうか? フェイクニュースの規模と拡散の速度は衰えただろうか?

どうやらそんな気配はなさそうだ。フェイクニュースの問題は、消え去ってもいなければ、鈍化もしていない。むしろ悪化し、これまで以上に拡散して制御不能になりつつある。

世界保健機関(WHO)は2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するフェイクニュースが「ウイルスよりも速く、容易に拡散する」と警告した。

だが、憂慮すべきはその拡散速度だけではない。フェイクニュースは利益を生む──しかも、莫大な利益を。フェイクニュースは今や、明らかにビッグビジネスになっているのだ。

ニュースメディアの信頼性を評価するニュースガード(NewsGuard)とネット視聴率測定を手がけるコムスコア(ComScore)の共同調査によると、広告業界は意図せず、誤情報を拡散するサイトに、毎年20億ポンド(約3027億円)も支出しているという。

英国だけでも、その金額は約1億1000万ポンド(約166億5000万円)に上ると推定される。意図的にフェイクニュースを拡散し、そこから利益を得ている組織や個人に、泣きたくなるほどの大金が流れ込んでいるのだ。

こうした状況は、気候変動から、人種差別、移民問題、新型コロナウイルスに至るまで、世界のあらゆる問題に現実的な影響を及ぼしている。そして、その影響を最も強く受けるのは、たいてい社会でも最も弱い立場の人々だ。

広告業界が真摯に取り組んでいる気候変動問題を例にとると、米英を拠点とするNGO「デジタルヘイト対抗センター(CCDH)」と英シンクタンク「戦略的対話研究所(ISD)」が最近別々に実施した2つの調査で、気候変動否定論が、ソーシャルメディア上で、チェックもされずに広範に拡散していることが明らかになっている。

一方、良い兆しとしては、こうした課題を認識する人が増えてきているということだ。責任あるメディアへの投資の必要性が議論される機会が増え、広告主とエージェンシーは今や、自らの広告費がどこへ流れ、それが社会にどんな影響を与えているのかについて、より強く意識するようになってきている。

コンシャス・アドバタイジング・ネットワーク(Conscious Advertising Network)は11月、数百人が署名する公開書簡を発表し、気候変動に関する誤情報に、莫大な広告費が投じられる可能性があるとしてソーシャルメディア企業に対処を求めた。

筆者がCEOを務めるニューズワークス(Newsworks)の独自調査では、英国人の過半数が、ソーシャルメディア上での、気候変動に関する誤情報の氾濫について懸念しており、69%は、ニュースブランドが気候変動に関する誤情報に対処することを期待していると回答した。

質が高く信頼できるジャーナリズムは、かつてないほど重要性を増している。特に気候変動のような重大な問題への取り組みを支える上では、極めて重要だ。

過去10年間で、ニュースブランドの読者は大幅に増加した。とりわけ2020年に急激に伸びたのは、かつてないほど多くの人が、新型コロナウイルスに関する信頼できる情報を求めたからだ。

大勢の人々は、日常的にニュースブランドに信頼をおいている。情報を提供し、楽しませ、鼓舞し、キャンペーンで支援し、自分たちを代表して、重要な問題提起を行う存在として、ニュースブランドを頼りにしているのだ。

生活者がエンゲージメントを感じる、プロが作った信頼できるコンテンツに、ブランドの広告が表示されるとき、広告の魔法は起きるのだ。質の高いメディア環境で広告を目にすることで、ユーザーのエンゲージメントはより高まり、ブランドへの反応も向上する。

コンテンツは常に広告の基本だが、今日の世界では、広告を掲出するメディアのコンテンツも、広告のメッセージと同じくらい重要になっている。

英紙ガーディアンで最高広告責任者を務めるクレア・ブラント氏は、最近Campaignに寄稿した記事で、そのことを的確にこう要約している。「消費者は、ブランドが広告を出しているスペースと、ブランドが広告の投資先として選んだメディアに注目している。メディアは何よりもまず、広告主の目的を達成するための効果を担保する必要があるが、次の検討事項として、世界に与えるインパクトについても考慮する必要があるのは確かだ」

ブラント氏の言葉を受けて、私も次の提言で締めくくろう。広告業界は、ニュースブランドのような信頼できるメディアへの投資を、もっと増やしていく責任があるはずだ、と。


ジョー・アラン氏は、ニューズワークスのCEO。この記事は、マインドシェア(Mindshare)がロンドンで開催したイベント「Huddle」で同氏が行った講演を編集したもの。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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