Damian Thompson Linna Zhao
2022年11月11日

不況時にこそブランディングが必要な理由

強いブランド力がなければ、どれだけパフォーマンス広告に力を注いでも、慎重に吟味された買い物リストにあなたの製品が残ることはないと、ウェーブメーカーのトップリサーチャーは言う。

不況時にこそブランディングが必要な理由

世界的な景気後退が迫り、マーケターはブランド投資を継続すべき、というおなじみの声が聞こえてくる。しかし、不況時にブランド予算を維持するメリットは、机上の空論ではなく、歴史が証明している。景気後退局面で支出を減らせば、景気後退後の成長が鈍化し、逆に投資を増やせば、長期的にはライバルを凌駕することができる。ブランドコンサルタントのマーク・リトソン氏によれば、景気後退は「ブランドを構築し、市場シェアを拡大する絶好の機会」だ。

危機が訪れても、ブランドが成長する方法は変わらない。しかし、単にブランドを目立たせることや、人々に思い出させるだけでは不十分だ。家計が縮小しているときこそ、ブランドは消費者に価値を示す必要がある。賃金が低下し、物価が上昇しているときに、値下げ幅を抑制しつつ人々に引き続き購入してもらうには、ブランドコミュニケーションへの投資が不可欠だ。自分たちのブランドには購入する価値があると示し、しかも、消費者が何かを買いたいと思う前から、この価値が消費者の頭の中で確立されている必要がある。

あなたのブランドには高い金額を支払う価値が本当にあるのか?

単刀直入に言えば、ブランドの価値とは、製造コストと消費者が支払ってもよいと考える価格との差だ。そして、そのブランド価値を生み出すのは、そのブランドが人々にとってどんな意味があるかだ。ブランドの象徴的な価値は、ユーザーにとって、製品の機能と同じくらい(しばしばそれ以上に)重要となる。2021年にロレックスを購入した100万人のユーザーは皆、時刻を知るだけならばはるかに優れたスマートウォッチも持っている。イージー・ギャップのスウェットシャツはフルーツ・オブ・ザ・ルームのスウェットシャツより暖かいわけではない。対価に値するブランドの価値は、製品に内在しているわけではない。消費者によるブランドの使用と誇示、そして、ブランドコミュニケーションと行動への投資によってこそ、ブランド価値は生まれるのだ。

この危機の下で、プライベートブランドや代替の二次製品に向かわないでほしい、自分たちのブランドを選んでほしい、と説得するには、人々がその手のブランド(製品ではない)に何を求めているかを理解する必要がある。消費者は、単に製品を買い続けるよう求めるだけでなく、説得してくれることをブランドに期待している。あなたのブランドがもたらす価値に、なぜお金を支払う必要があるのか?あなたのブランドとその付加価値は、生活の中でどのように役立つのか?

受け入れがたいことかもしれないが、高い金額を支払う価値はないと判断され、買い物リストから真っ先に外されるブランドがある。景気後退局面では、多くの人が無駄な買い物を控える傾向にあり、そのため、ブランドは有益な買い物だという安心感を与えるか、人々のやりくりを手助けしなければならない。中国における、歯磨き粉ブランドの価値評価(BAV)チャートを見れば明らかだ。このままインフレ圧力が続けば、いくつかのブランドは間違いなく市場シェアが維持できなくなるだろう。

中国では、トップブランドの市場シェアが極めて高く、それがさらに進行しているという事実が、こうした状況を悪化させている。このチャートにも載っていないブランドは、人々が節約のためにブランドを乗り換え始めれば、生き残るのが相当難しくなるだろう。これは、他の国々には必ずしも当てはまらないかもしれない。製品カテゴリーによっても異なってくる。例えばコーヒーの場合、中国以外の国では、トップブランドの市場シェアは40%弱だが、それが中国では80%近くに達する。

それぞれの消費者が求める価値に即したブランドコミュニケーションへの継続的な投資は、消費者に、そのブランドには高い金額を支払う価値があるという安心感を与えるための鍵となる。そして同時に、人々に自分たちのブランドを選んでもらうための原動力となる。人々が単にそのブランドを思い浮かべるだけではなく、そのブランドが習慣的に候補リストに入るよう積極的に働きかけるのだ。生活が厳しい時期であっても、大部分の消費者はごく少数のブランドしか検討対象とはしない。継続的投資は極めて重要だ:

これは、すべての製品カテゴリーに当てはまる。ウェーブメーカーのカスタマージャーニー調査「MOMENTUM」によれば、消費者の60%は購入プロセスに入る前に、すでにどのブランドを購入するかを決めている。具体的には、購入の契機が訪れるずっと前、つまり、欲求が「ゼロ」のうちから、あるいはオンラインで情報に触れる前からすでに決定しているのだ。私たちはこれを「プライミングバイアス」と呼んでいる。あるブランドを好む傾向が、何かを買おうとするときの行動に影響を与えるのだ。

では、厳しい時期が訪れたとき、なぜブランディング予算が真っ先に削られるのか?

優秀なマーケターが、ブランド投資の重要性をどれほど理解していても、実際には、短期的なROIを唯一の成功指標とするパフォーマンスマーケティングへの偏重が長く続き、その傾向がますます強くなっているからだ。その証拠に、近年、特にここ1年、マーケティング投資のほとんどがパフォーマンスメディアに費やされている。

短期的ROIの信奉者たちは、この手法が、長期的には投資対利益を減少させるだけであることに気付いていないか、気付かないふりをしている。カンターによれば、パフォーマンスマーケティングへの投資に偏りすぎると、売上のベースラインは徐々に下がっていくという。長期的には、ブランドは悪循環に陥ることになる──ROIに「拉致」されたようなものだ。結局、ブランドマーケティングなしでは、売上のベースラインの健全な維持はできないということだ。

カンターの分析によれば、2019年から2021年にかけて、ブランディング投資を増やしたブランドは、企業価値が72%向上した。一方、投資を減らしたブランドの企業価値は20%しか上がらなかった。つまり、これこそがブランド広告の重要な役割であり、その予算を確保するため、役員会で戦うべき理由なのだ!ブランディングによって、(景気後退局面では、最も重視される)売上や、ブランド認知が維持されるだけでなく、ブランド選好やブランド力も高められる。ブランディングに投資しなければ、どれだけパフォーマンス広告に力を注いでも、人々が慎重に吟味した買い物リストに、あなたの製品が入り続けることはないのだ。


リナ・ジャオ氏はウェーブメーカー中国法人のソートリーダーシップ責任者。ダミアン・トンプソン氏はウェーブメーカーの消費者インサイト担当グローバル責任者。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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