Joanna Reynolds
2023年6月08日

世界経済の減速 今こそマーケティング支出を

今年の世界経済はさらなる成長の減速が予想される。しかし、今こそマーケティング支出を増やして効率化を促進し、将来的成長の布石とすべし −− マーケティング企業トップが語る。

世界経済の減速 今こそマーケティング支出を

一般的にマーケティングは、企業にとって決して優先順位の高い業務ではないだろう。したがって不況の際には、真っ先にコスト削減のターゲットになってしまう。だがマーケティング支出を減らしたからといって、難局を乗り切れる保証があるわけでもない。経済の先行きが不透明な今だからこそ、マーケティングの強化が競争力とブランド力を高め、ひいてはビジネス成長達成の鍵となるのだ。

コスト効率の高い広告を展開し、顧客の獲得と維持に努め、ブランド認知を向上させる −− こうした戦略こそ、企業の成長には欠かすことができない。

見込み顧客の獲得

不透明な時代におけるマーケティング強化のメリットとは何か。第一に挙げられるのは、企業のプレゼンス(存在感)向上と見込み顧客の獲得だ。B2B向けSaaS(サービスとしてのソフトウェア)企業にとっては、見込み顧客獲得は特にビジネス成長を大きく左右する。

メールマーケティングやソーシャルメディア広告、コンテンツマーケティングなどによるキャンペーンは、見込み顧客獲得と売上増加に極めて大きな効果を発揮する。大きなメリットは、ROI(投資利益率)やコスト効率性の向上だ。需要を喚起するキャンペーンはパイプライン(営業担当者が獲得した見込み客を受注するまでの段階的プロセス)を強化し、ビジネス成長を呼び込む。そしてさらなる見込み客を獲得し、売上げを伸ばす。

例えばメールマーケティングの効果は、平均値が4400%に上る。つまり1ドルの投資で44ドルの利益が上がるのだ。重要なのはソリューションや企業の価値・メリットをよく考慮し、ターゲットマーケティングを実行すること。それが見込み顧客の獲得と拡大につながる。これはB2B向けSaaS企業にとっても同様だ。

ペイドメディアの活用も効果的だろう。いくつかのケースでは、CPC(クリック単価)は0.5ドルにまで下がっている。

基本的なマーケティング戦術を成功させることは、ビジネス成長に不可欠だ。直接検索やオーガニック検索、有料デジタル広告、バーチャル及び対面式イベントといった手法は、マーケティングパイプラインにおける重要な収益源となる。新たなアプローチの模索も大切だが、こうした基本戦術を見過ごしては成功を呼び込めない。その効果的な実行が、ビジネス成長と収益増につながる。

ターゲットマーケティングはコストを抑えつつ、見込み顧客の獲得・拡大を可能にする。正しい戦略を実行することで、キャンペーンは企業に収益増と長期的成功をもたらす強力なツールになり得るのだ。

ブランド認知の確立、リーチの拡充

マーケティング支出の2つめのメリットは、ブランド認知の確立と市場における地位の確保だ。一貫したブランドアイデンティティーとメッセージの発信は、見込み顧客の間でブランドの存在感と認知度を高める。そして信頼感とロイヤルティを醸成し、ブランド想起を向上させる。

リーチをさらに広げ、新たな市場・顧客を獲得できる可能性も高まるだろう。マーケティング支出によって、企業は新しいオーディエンスとビジネス成長の機会を得られるのだ。経済の不透明感が増し、企業が新たな収益源の発掘と競争率維持を図る今だからこそ、この点は特に重要になる。

変化への対応、競争力の維持

3つめのメリットは、市場や消費者行動の変化にいち早く対応できること。トレンドをいち早く察知し、消費者のニーズや期待に応えられる戦略を立案すれば、企業は時代を先取りし、競争力を維持できる。

不透明な時代、B2B向けSaaS企業にとって切実な課題は顧客の維持だ。新規顧客の獲得は、既存顧客の維持よりも5〜25倍の予算がかかるとも言われる。マーケティング支出によって顧客と効果的なコミュニケーションを図り、ソリューションの価値を示し、堅固な関係を築く −− これによって顧客維持率を高め、長期的成功を実現できるのだ。

マーケティングオートメーションの導入

今のような時代は、予算の使い方に社内で厳しい目線が注がれる。そのような時にマーケティング活動の効率化とROIの最大化を目指すなら、マーケティングオートメーション(MA)がゲームチェンジャーとなり得るだろう。MAツール「マルケト(Marketo)」の調査結果では、MAを活用する企業の見込み顧客は451%増加するという。また、マーケティング戦略・調査会社「アバディーン・グループ」の調査結果では、見込み顧客のコンバージョン率は53%増に及んだ。

MAは企業の効率化と時間・人材の有効活用に寄与する。メールキャンペーンや見込み客獲得といった単純な反復作業を自動化すれば、企業は戦略やイノベーションといったより高いレベルの業務に人材を注力させることができる。また、MAによってマーケティング戦略に有益なデータやインサイトも確保でき、変化の激しい市場での優位性維持に資する。

こうした要素を鑑みれば、現在の状況は将来的成長を見込んでマーケティング支出を行う絶好のタイミングと言えよう。ブランド認知の確立と見込み顧客の獲得、リーチの拡充、変化への対応 −− これらを実現すれば、困難な時期にあっても企業には成功が約束される。

難局を乗り切り、競争に打ち克とうとするなら、マーケティング支出こそが企業にとって最善の選択なのだ。

 

ジョアンナ・レイノルズ氏はSaaSマーケティング会社「ボルドー&バーガンディー」のマネージングディレクターを務める。

(文:ジョアンナ・レイノルズ 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:Performance Marketing World

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