Drew Benvie
2025年12月18日

豪のソーシャルメディア禁止法を考える

オーストラリアの16歳未満の子どもたちのデジタル行動は変わりつつある。法律施行による波及効果は極めて大きい。

豪のソーシャルメディア禁止法を考える

今月10日にオーストラリアで施行された16歳未満のソーシャルメディア禁止法が、世界的な注目を集めている。ブランドは次世代の子供たちとどう関わり、理解していくのか。その影響は豪州のα(アルファ)世代にとどまらず、世界のあらゆる世代に及ぶだろう。

現代の広告制作において、若者文化ほど大きな影響力を持つものはない。また、ソーシャルメディアほど今日のティーンエイジャーに影響を与えているものもない。AIコンパニオンから新しい語彙、ダークソーシャルやDMに至るまで、若者がデジタル空間を移動する手法は、彼らの年齢層をはるかに超越した行動様式になっている。

それゆえ私は、昨年11月にこの法律が可決された際、社会に今後どのような影響を与えるのか調査を始めた。ティーンの安全性に加え、消費文化に与える意味やブランドがどう適応するのか関心を持ったのだ。

なぜ10代が禁止されるのか

ソーシャルメディアの進化につれて、若者のオンライン上の安全をめぐる議論はもはや無視できないものになっている。ソーシャルメディアを通じて子どもたちは「最良のもの」と「最悪のもの」を経験している事実は否定できない。

多くの批判は脳の退化やドゥームスクロール、有害コンテンツ、虐待などに関するものだ。しかし、ソーシャルメディアは多くの人々にとって素晴らしいプラットフォームでもあった。人とのつながりや情報、教育、娯楽などで不可欠なチャネルとなり、スクロール以前の時代では不可能だった、個人やブランドが文化の一部になることを可能にした。しかし、良い面が悪い面を相殺するわけではない。

16歳未満のティーンに主要ソーシャルメディアの使用を禁止するという豪州の決定は、時宜を得て世界的な注目を浴びた。マーケターや規制当局、テック企業はこの大胆な措置が若者のオンライン参加をどう再構築するのか、そして広域な分野にどのような波及効果をもたらすのか注視している。最も重要なのは、その効果と今後の展開を見極めることだろう。

オンラインの安全性?

豪州の決定は重要だが、現実ははるかに複雑だ。問題の核心は「理解」にある。規制を決める人々は往々にして、現代の若者の実際のデジタル行動を十分に把握していない。

ソーシャルメディアやデジタル文化に携わる者なら、オンラインでの生活が直線的ではないこと、アプリを閉じてもユーザーがネットから離脱しないことを理解しているだろう。彼らは規制を回避し、他のプラットフォームに移り、行動を適応させる。そして彼らのニーズは、やがて業界のイノベーターたちによって満たされる。10代のネット利用を禁止する法律を制定しよう、と言う間もなく、新たなソーシャルネットワークが出現するのだ。

私は全ての答えを知っているわけではないが、ソーシャルメディアの世界に長く身を置いてきたからこそ、こうした推測がある程度できる。

私は90年代後半、偶然にもブロガーとなった。広告代理店でのキャリアを積みながら始めたこの初期の執筆活動が、2006年にウィキペディアのソーシャルメディアページへの最初の寄稿者となるきっかけとなり、数多くの主要ソーシャルネットワークとの仕事にもつながった。仕事と並行して、10代の子供を持つ親としての実体験も考えを形成した。若者の安全対策に即効性や単純な解決策はないことは身をもって知るが、法律をつくる人々はそうした現実を聞きたがらない。

10代の意見

私は今年の大半を、13~16歳の若者たちと直接関わる仕事に費やした。これによって、彼らの実際のオンライン体験を最前列の席で観察できた。ソーシャルメディアへの本音、あるいは利用するプラットフォームが突然禁止された場合、彼らはどう行動するのだろう。

多くの若者は年齢制限を「ほとんど気にしない」と答えた。彼らは主流のソーシャルメディアプラットフォームだけでなく、規制の外側にあるAIチャットツールや新しいテクノロジーも活用していた。

何人かは、「どんな制限があっても回避する方法を見つける」と平然と語った。それは決して反抗的ではなく、淡々と事実を述べる口調だった。ティーンエイジャーは「デジタルエスケープ」の名人で、豪州は間もなくその現実を知ることだろう。

AIの脅威

今夏の調査に参加したティーンのグループでは、多くが従来のソーシャルメディアよりも「AIチャットプラットフォームに愛着を感じる」と述べた。AI依存は私にとって最も懸念される傾向の一つだ。しかも、子どもたちが依存しているのは単なるAIチャットボットだけではない。

感情のサポートや交流、娯楽のためにAIを利用していると話す者もいた。主要なAIプラットフォームの一つ、Character.aiは、深刻なメンタルヘルス問題の報告を受けて18歳未満の利用を禁止した。これは、若者が直面するリスクがインスタグラムやTikTok(ティックトック)のような馴染み深いプラットフォームだけではないことを示す。

ソーシャルメディアの年齢制限だけに頼っても、政府が望む安全な世界は決して実現しないだろう。早急に必要なのは技術革新とアルゴリズムの再構築、そして広範な教育プログラムのコンビネーションだと私は考える。

ティーンへの禁止措置は断固たる対応に映るが、既存の行動パターンには対処できない。規制が緩く、監視が不十分で、はるかに危険なオンライン空間へ若者を追いやるリスクも生まれる。政策立案者が規制対象者のエコシステムを完全に理解しない限り、解決策は課題の一部にしか対処できないだろう。

ブランドの対応

オーディエンスは今まさに、地殻変動を経験しようとしている。その影響は豪州をはるかに超え、世界に波及するだろう。マレーシアやインドネシア、パプアニューギニア、ニュージーランド、シンガポール、そして欧州全域でも既に同様の動きが始まっている。若者の行動がどう変化し、その変化が文化をどう形づくり、それに応じて様々な層がどうシフトしていくのか −− これこそが、今後1年の注視すべきトレンドとなるに違いない。


ドリュー・ベンヴィー氏はグローバルソーシャルメディアコンサルティング企業バテンホールCEO。若者のソーシャルメディア安全対策を考える非営利団体レイズの創設者でもある。

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