Ryoko Tasaki
2023年6月23日

世界マーケティング短信:カンヌライオンズ、幅広い部門でエントリー増

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:カンヌライオンズ、幅広い部門でエントリー増

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

カンヌの応募総数、昨年より6%増加

カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルが、19日に開幕した。今年のエントリー数は合計26,992点で、昨年から6%増加した。

設立3年目のCreative Business Transformation部門に前年比59%増の応募があった他、Creative Strategy部門(35%増)、Creative Commerce部門(25%増)などでエントリー数が大きく伸びた。今年新設されたEntertainment for Gaming部門には609点の応募があった。

Entertainment部門(18%増)では、消費者向けサービス分野からの応募が78%増加。またOutdoor部門(7%増)では、日用消費財(30%増)や旅行産業(84%増)からの応募が大きく増えた。

「エントリー作品の変化は、業界の状況や新しいトレンドに関する強いインサイトを与えてくれます。消費者向け製品のブランドからの応募が大幅に増加したことは、クリエイティビティが事業を推進するものとして価値が置かれていることを示しています」と語るのは、カンヌライオンズのCEOであるサイモン・クック氏。「BtoB、ゲーミング、コマース、ビジネストランスフォーメーションといった新興分野など、幅広い分野で応募点数が増えています。これは従来とは異なるチャネルに対し、信頼と投資の機運が高まっていることの表れでしょう」。

カンヌライオンズへの応募総数は、2019年に30,953点に達したが、2020年はパンデミックにより中止。オンライン開催で2年分の審査が行われた2021年は29,074点、3年ぶりの対面での開催となった2022年は25,464点だった。

IASとメタ社、リール広告向けの計測ツールを提供開始

インテグラル・アド・サイエンス(IAS)は、メタ社のフェイスブックならびにインスタグラムのリール広告向けの計測ツールを提供すると発表した。2016年に始まったパートナーシップを拡大したもので、リール動画フィードの広告に対するビューアビリティーと、無効トラフィックの計測を提供し、広告が実際のユーザーに見られているかを確認できるようになる。

「フェイスブックとインスタグラムのリールは、広告主に非常に人気があります」と語るのは、IASの最高商務責任者のヤニス・ドシオス氏。毎日1,400億回以上再生されるリールの中で、どの広告が見られ、成果をもたらしているかといったインサイトを得ることができるようになる。「メタ社とIASの既存のパートナーシップの成功をもとに、一緒に取り組みを拡大し、リール広告に深いレベルの透明性を提供できることを、嬉しく思っています」。

パンデミックを機にデジタルメディアやeコマースの占める割合が高まり、広告界は大きな変革の最中にある。消費者からは革新的かつパーソナライズされたデジタル体験が期待される一方で、プライバシーやセキュリティーへの要求も強まっている。激しい変化の中で、広告主はマーケティング戦略を見直し、新しいアプローチを模索するようになり、データの可用性の変化に対応しながら、さまざまなチャネルでの可視性を確保することが、課題となっていた。

アリババグループの会長兼CEOが交代

中国のアリババグループ(阿里巴巴集团)は、会長兼CEOの張勇(ダニエル・チャン)氏が退任し、執行副会長の蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)氏が会長に、呉泳銘(エディ・ウー)氏がCEOにそれぞれ就任すると発表した。

呉氏は中国国内のオンラインショッピング事業「淘宝(タオバオ)」や「天猫(Tmall)」の会長と、グループCEOを兼任する。張氏は引き続き、クラウドインテリジェンス事業の会長兼CEOを務める。

同グループは3月末に最大規模の組織再編を行い、6部門に分割したばかり。5月中旬に発表された最新の四半期決算によると、クラウドサービス事業は前年同期比2%減と低調で、この部門のスピンオフ(分離・独立)を計画している。

次期会長の蔡崇信氏(左)と、次期CEOの呉泳銘氏

広告界の包摂性に目立った改善はみられず WFA調べ

世界広告主連盟(WFA)やCampaignなど10社・団体は今年の3~4月、日本や米国など33市場で、広告・マーケティング業界におけるDEI(多様性、公平性、包摂性)の進捗を調べる「第2回DEI調査」を実施した。その結果、業界内で期待されるDEIに改善は見られなかった。

第1回目(2021年)では性別や年齢、障害の有無などによって、処遇に差に生じるといった課題が明らかになっていたが、今回の調査でもこれらの課題は依然として残っている。障害者の4人に1人、少数民族の5人に1人、女性の6人に1人、そしてLGBQ+の6人に1人が、DEIの欠如を理由に業界を去ることを考えているという。インクルージョン指数は63%で、2021年(64%)から1ポイント下がった。

WFAは結果について、「これらの課題は非常に根が深く、社会に制度として組み込まれたものであるため、結果にはそれほど驚かなかった」とコメント。だが取り組みに対する回答者の意識の高さには、明るい兆しがみられる。WFAのCEO、ステファン・ローク氏はこのように述べる。「最初のステップは、課題に対する認識を高めることです。世界的に目立つほどの変化を起こすには至らなかったかもしれませんが、業界の取り組みはますます顕著になっています。今こそ取り組みを強化し、やり抜くべき時期。私たちの努力は最終的に、多様性に富んだ公平で包摂的で、最高の人材が集まる職場という形で結実することでしょう」。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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