Campaign staff
2018年3月30日

世界マーケティング短信:「フェイスブック・スキャンダル」、広告主への打撃

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをまとめてお送りする。

マーク・ザッカーバーグ氏(写真提供:AFP)
マーク・ザッカーバーグ氏(写真提供:AFP)

フェイスブック関連、続報

今週もフェイスブック(FB)にとっては厳しい1週間だった。英ケンブリッジ・アナリティカ(CA)社による個人データの不正取得で、FBの市場価値は約1兆米ドル(105兆円)も低下。(ちなみに米ビジネス誌ファーストカンパニーによると、CAのCEOが以前WPPに会社を売却しようとしていたことが明らかになった。WPPは米陸軍へのピッチでCAと協働していたが、この事件以降距離を置こうとしている)。

更にFBは、5月に予定していたホームスピーカーの発売を延期。長期的に見れば、FBは多くのユーザーや広告主を失うリスクも抱えている。既にソフトウェア会社モジラ(Mozilla)がFBへの広告掲載停止を発表、他社もそれに続く動きを示す。ブランドは「倫理的行動を取っている」という印象を消費者に与えたがるものだが、ある観測筋はこうしたFBからの広告撤退を「偽善的行為」とみなす。

「これらブランドは、大きな可能性を秘めたFBの個人データを喉から手が出るほど欲しがっていたのです。友人レベルの密接なネットワークに影響力の強いコンテンツを発信するためにね」。こう話すのは、ロンドンに本社を置くある広告代理店の戦略責任者。「実際に彼らはデータがもっと入手できるよう、FBに圧力をかけていました」。

結局のところ、この醜聞でFBのユーザー数が大きく落ち込むことはないのかもしれない。だが当然のごとく同社はデータの扱い方に関し、再考を余儀なくされている。この水曜日には、サードパーティデータのプロバイダーであるアクシオム(Acxiom)やエクスペリアン(Experian)といった企業との提携解消を発表。これら企業は広告主がユーザーを特定する際、有用な情報を提供している。長年こうしたデータに依存し、緻密なメッセージングを行ってきたブランドにとっては深刻な打撃だ。こうした動きがFBの広告収入にどれだけの影響を及ぼすか、現段階ではまだ定かではない。

もっと大きなスケールで考えれば、今回の一件で消費者はオンライン上のプラットフォームや広告主とどのように付き合うべきか、より注意深く考えるようになるかもしれない。ある調査によると、自分のデータがどのように使われ、その見返りが何かはっきりしているのなら、多くの人々はデータの共有を厭わないという結果が出た。問題はこうした透明性がFBに限らず、どの主要なプラットフォームにおいても稀なことだ。

「今回の件で、現在のデータ戦略に反発する声が出るとは思いません」。こう話すのは、東京のある国際的広告代理店のトップ。「しかし、シェアをする関係が進化していくことは間違いないでしょう」。

「安全性への懸念」を尻目に、オンライン広告は増加

透明性や安全性への懸念にもかかわらず、ブランドのオンライン広告への支出は増え続けている。結局、そうせざるを得ないからなのだろう。調査会社ゼニス(Zenith)は、今年の広告主のオンラインへの支出は広告費全体の40.2%に達するという予測を出した(昨年は37.6%)。更に2017年から2020年にかけて、米国でのオンライン広告費は約200億ドル(2.1兆円)、中国では170億ドル、日本は30億ドル伸びるという。

一方eマーケターによれば、グーグルとフェイスブックによる複占は今年から2020年にかけて徐々に弱まり、アマゾンの比重が増すと予測している。

フォード車の「自販機」を過小評価するべからず

アリババとフォードが、広州で5階建ての「自動販売機」をオープンさせた。Tモール(天猫)とタオバオのアプリを使うことで、自動車の試乗と購入ができるというもの。話題作りの側面もあるが、誰もが忙しくせっかちな今の時代、この取り組みは「試乗」に対する実践的アプローチと言える。今後は、車ブランドによるより多くの実験的試みが期待できそうだ。例えば、三菱自動車。“デジタルエコシステム”を世界で推進するため、エクスペリエンスデザインを専門とするエージェンシー「クリティカルマス(Critical Mass)」との提携を今週発表している。

TGIフライデーズは新たなテック企業?

レストランチェーン「TGIフライデーズ」のチーフ・エクスペリエンス・オフィサー、シェリフ・ミトヤス氏は米アドウィーク誌のインタビューで、「我が社はテクノロジー企業です。たまたまビールやスペアリブを売っているに過ぎない。カスタマーエクスペリエンスを改善するためにAIを導入しています」と語った。ここではっきり言わねばならないのは、同社は決してテック企業ではないということ。また、そのように立ち位置を変えようする試みも馬鹿げている。改革のためにテクノロジーを利用しているのであり、自分のブランドを見失っているに過ぎない。実に愚かな話だ。

付記:Campaignが行う、ジェンダー平等の向上に関するアジア太平洋広域調査をご覧ください(質問は全て英語)。性差別は改善されているのか、現況を把握するにはあなたのご意見が不可欠です。締め切りは4月6日。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

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