David Blecken
2019年6月14日

世界マーケティング短信:PR業界の評価

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

写真提供:Shutterstock
写真提供:Shutterstock

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

PRエージェンシーは、自己評価ほどは進歩していない

アジア太平洋地域のマーケティングおよびコミュニケーション担当の幹部110名を対象にCampaignとイプソスが実施した調査によると、PRエージェンシーはあらゆるエージェンシーの中で、クライアントから最も信頼されていることが分かった。クライアント企業の72%がPRエージェンシーを信頼していると回答しており、これは広告のエージェンシー(52%)よりも高い。だがPRエージェンシーの進化の度合いについては、PRに携わる人々が自認するほどではないようだ。「PRエージェンシーが他エージェンシーより速いペースで進化している」と考えている割合はPRエージェンシー側が54%だったが、クライアント側はわずか19%。また「PRエージェンシーが提供するサービスが広範だと考えている」という回答者も、PRエージェンシー側は8割、対するクライアント側は54%であった。つまり、今日のマーケティングコミュニケーションのエコシステムの中でPR業界が提供できるものは多いが、自意識過剰にならないよう注意すべきだということだ。詳しい調査結果はこちらから。

今年のトップブランドは…?

Campaignがニールセンと共同で毎年行う消費者意識調査「トップ1000ブランド」で、アジアで最も人気のあるブランドにサムスン電子(韓国)が8年連続で選ばれた。この結果には多少見飽きた感も否めないが、マスへのアピールや、広範囲にわたる商品カテゴリーは他社の追随を許さない。画面二つ折りスマホ「Galaxy Fold」の不具合が来年のランキングにどのように影響するか、成り行きを見守っていこう。アップル、パナソニック、ソニー、ネスレ(順に2~5位)も昨年と順位を変えることなく、トップ5入りした。ナイキは7位に浮上した一方、グーグルは9位に沈んだ。

一方で、カンターのブランド価値ランキング「ブランドZ」では、アマゾンがアップルとグーグルを抜いて首位に。そのブランド価値は前年比52%増となった。

テック大手の頭痛の種は、ヘイトスピーチやディープフェイク

グーグルのサンダー・ピチャイCEOは今週アクシオス(Axios)の取材に対し、ユーチューブについて「我々はまだ満足のいくところまで来ていない」と認めた。ユーチューブは「ヘイトスピーチだと推察できるコンテンツについて、もっと良いフレームワークを構築する」必要があるというのだ。

一方、マーク・ザッカーバーグ氏のディープフェイク動画が、インスタグラムで公開された。このような動画の登場は、時間の問題だっただろう。動画内でザッカーバーグ氏は、フェイスブックユーザーから盗んだデータの悪用について語っているように見える。インスタグラムはこの動画を削除しないことを決定したが、同社のこのような判断が「誤った情報を拡散させている」と批判を呼んでいる。

モバイルに年間30日分以上を費やしている可能性も

ゼニスが発表したメディア消費予測によると、人々はここ1年間で800時間、つまり33日分もモバイルの画面を見ていたことになるそうだ。2021年には930時間にまで増加する見込み。1日当たりのメディア消費は平均8時間にまで増えているとのことだ。

一方で、デジタルミニマリズムの動きも広がっている。疲労を感じたり、SNSやネット閲覧に費やす時間が価値があるのか疑問を持った人々が、本当に必要な利用のみにそぎ落とすムーブメントのことだ。SNSプラットフォームがこの動きに懸念を示しているようには見えないが、懸念すべき問題かもしれない。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

22 時間前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

1 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。

2024年4月19日

世界マーケティング短信: オープンAI、アジア初の拠点を都内に設立

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。