Naoko Ito
2016年10月05日

明日から使える新たな成長市場の攻略法

急速に変化する成長市場に対応するため、マーケティングに求められるものは何か。重要となる二つの規範について語った。

伊藤直子氏
伊藤直子氏

グローバル市場で成功したければ、成長市場の変革の本質を的確に捉え、ブランドのVELOCITY(速度)を生み出す新しい戦略が必要だ。オグルヴィは成長や変化の速度、中流層の購買力を評価し12の新たな成長市場での消費者動向の洞察をまとめた「VELOCITY 12」を発表したが、そこには女性の社会進出、テクノロジーの普及、イスラム教徒である中流層の増加など、マーケティング戦略策定の際に考慮すべき新たなビジネスのキーワードがみられる。(ここではこの消費者調査の説明は割愛する。詳しくは、「オグルヴィ「V12」消費者レポート 日本にとっての意味」を参照いただきたい)

国際企業として成長市場の消費者にどう向き合っていけばより信頼され、かつ愛されるブランドになれるのか。マーケット構造が急速に変化する時代に求められる新たなマーケティング規範について考えてみたい。重要となるのは「ブランド行動規範」と「オムニチャネル原則」だ。

ブランド行動規範
ブランド行動規範とは、「社会から求められるブランド」になることだ。社会から求められるブランドは、それがどのような価値観を持っているのかを示すことを通じて、急速に変化する市場の消費者と対話する。V12市場の消費者は、自分たちにとって大切なテーマに取り組んでくれる企業やブランドを求めている。ブランドは、自らの手でブランドを思い通りに創造することはできないという事実をしっかりと受け止める必要がある。ブランドの確立にあたっては、その顧客が重要な役割を果たしており、彼らとのやり取りから身を引くことはできない。このことを認識し、適応していくためには、思考と行動を変えていかなければならない。これは「行動ブランディング」と呼ばれている。行動ブランディングでは、ブランドは何かを「訴える」だけでなく、自ら「行動する」ことが要求されるのだ。

オムニチャネル原則
オムニチャネル原則は、テクノロジーの急速な進化と、チャネルの多様化によって市場に起こっている重要な変化に対応するものだ。企業はテクノロジーによって生まれたチャンスを収益へとつなげ、どのようなメディアにおいても、消費者の期待に応える戦略を立案しなければならない。オムニチャネル原則は、モビリティー、eコマース、データに注目しながら、VELOCITYを促す主な原動力を活用する。ブランドは自らの熱狂的なファン「スーパーファン」を探すべきだろう。彼らは非常にモチベーションが高く、デジタルコミュニティーにも深くかかわっており、ブランドとの交流が促されるように行動してくれる。そうした「スーパーファン」は、彼ら自身が売上に貢献してくれるだけでなく、コミュニティーの他のメンバーにも影響を与えて、彼らの購買行動も活性化してくれる。消費者への影響は、チャネルが広がり、それらが結びついて共同で機能した場合に強くなるということが、多くの研究で示されている。

最後に、これからの10年間、グローバル市場において成功するには、中流層消費者が鍵となり、急速な成長が予想される市場を念頭に置いた新たなスキルとマインドセットが必要になると考える。グローバル社会における中流層の急速な拡大は、少なくとも2050年ごろまで続くと予想されている。マクロな視野で見た場合、アジア、アフリカ、ラテンアメリカのV12 市場において、さらに数十億人の消費者が生まれ、テクノロジーやインターネットへの接続などを駆使して、よりよい生活を模索するようになるだろうと考えられる。こういう現状の下、伝統的な企業とデジタル企業の双方が、世界のあらゆる場所で従来のビジネスモデルに変革を起こそうとしている。ブランドは「素早い進化か、さもなくば撤退か」という姿勢で臨まなければならない。

伊藤直子
オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン
プランニング ディレクター

(編集:田崎亮子)

 

提供:
Campaign Japan

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