David Maria Röhrscheid
2021年3月29日

親世代を踏襲する、日本の若者たち

日本のデジタル世代とのコミュニケーションに欠かせないのは、安全性・安心感を与えるフォーマルなインタラクションだ。

(写真:Shutterstock)
(写真:Shutterstock)

若者文化を理解しようとすると、どうしても古い世代との違いに目を向けがちだ。特に日本の若者は、世界を魅了する個性的なサブカルチャーを次々と生み出してきた。一見、親世代を拒絶し、常識を覆すかのようなティーンエイジャー。だが彼らを理解するには、過去の世代から脈々と受け継ぐ側面に光を当てる方が得策かもしれない。

その話に入る前に、まずは日本文化の特性を再認識する必要があろう。それは、人々の間で様式化された「無難な」インタラクション=やり取りだ。つまり、日本ではさまざまな状況における言葉遣いや身振り、態度に対して人々の共通認識があり、その場の「参加者」は一定の様式と適切なリアクションを期待されるということ。これは他者への最低限の好意を示し、気まずさを回避する目的がある。重要なのは、こうしたインタラクションが仕事や責任、好意、ささやかな友情の表現といったように区分けされて理解されていることだ。そして、これらは個人的感情の表現とはみなされていない。この違いは西洋人にとって懐疑的に映るが、日本人には広く好まれる流儀だ。

では、オンラインの世界にどっぷりと浸かっている日本の若者はこうした社会規範にどのように対応しているのだろう。驚くべきかな、彼らはこうした伝統的ルールを壊したり無視したりせず、新しいメディアの中でも本能的に受け入れている。それが顕著に表れているのが、日本で最も人気があるソーシャルメディア、ツイッターだろう。実生活でつながりのない他者のツイートに、果たしてどう反応するべきか。彼らはいち早く暗黙のルールを確立した。礼儀を怠らぬよう考え出したのは、「FF外から失礼します」という言い回しだ。確かにこのセリフを使えば、無礼だったり、馴れ馴れしかったりする印象を相手に与えずにすむ。

カジュアルなインタラクションの中でも摩擦を防ぐため、日本の若者が確立したルール。もう1つの例は、ニンテンドースイッチの「あつまれ どうぶつの森」だろう。パンデミック(世界的大流行)によってゲームの人気は世界中で飛躍的に高まり、愛好家は友人や家族とのインタラクションを「デジタル化」した。実生活での友人との交流にはさまざまなデリケートな要素がある。それを取り除いたシンプルなオンライン上の交流は、特に日本人のゲーム愛好家を魅了したようだ。そして実生活さながらに、きまりの悪さや摩擦が生じるのを避け、他者への礼儀と謝意を示す暗黙のルールが数多く成立した。たとえば、誰かがバーチャルの「島」で大麻を育てていても、それを邪魔することは決して許されないのだ。

ではビジネスを考えた場合、こうした若者たちの特徴から何が学べるのだろう。そのヒントとなるのはユーザー主導による日本最大のフリマアプリ「メルカリ」で、文化的感受性への深い理解が成功につながることを証明している。メルカリのユーザー間ではアイテムの値段交渉や予約に関する基本的「儀礼」が確立しているが、特筆すべきは売り手と買い手の間に生じる責任への対処法だ。

多くのアイテムは、バーコードを読み取れば自動的に商品に関する説明と価格が提示される。一見シンプルな仕掛けだが、これがユーザーから大きな支持を受けた。つまり、売り手の責任の大半が免除されるからだ。さまざまな誤解を避けられるとともに、アイテムの相場価格が保証されるのだ。さらに、アイテムの配送が匿名で行われることも大きな長所。売り手はアイテムをコンビニに持って行き、携帯電話でバーコードを読み取る。そうすれば自分の住所を知らせず、また買い手の住所を知らずに発送手続きが完了する。つまり、両者の個人情報を特定することなく配送が行われるのだ。こうしたシステムは、人と人とのインタラクションに安全装置を設ける。老若を問わずリアルなつながりを躊躇する人々の間で、「仮のつながり」が成立するのだ。

オンラインで若年層をターゲットとするさまざまな企業にとって、ここに1つの学びがある。日本人が求める安心感や安全性を担保することは、今も欠くことができない。米国の多くの主要プラットフォームに見られるカジュアルなトーンやビジュアルではなく、日本ではフォーマルなアプローチがトランザクション活性化の決め手となる。ブランドはリレーションマネジメント(RM)において、文化性を重んじてインタラクションを展開していかねばならない。摩擦や不安を取り除く微妙なニュアンスを理解することは、日本の消費者との関係を築くための重要な要素だ。たとえ、ターゲットがどんなに時代の先端を行く若者であっても。


ダビッド・マリア・ローシュハイド氏は、戦略コンサルティング会社「ゆず兄弟」のディレクターを務める。

(文:ダビッド・マリア・ローシュハイド 翻訳・編集:水野龍哉)

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