Patricia Freijo
2023年5月11日

ChatGPTとWeb3、広告の信頼性を揺るがす問題

トラフィックガードのパトリシア・フレイジョ氏によれば、ジェネレーティブAIやブロックチェーンの分散化技術の進化は、アドフラウドの温床になる恐れがあるという

ChatGPTとWeb3、広告の信頼性を揺るがす問題

新しい技術が登場すると、いつも広告業界はその話題で持ちきりになる。そして、新たなテクノロジー関連の流行語が、毎年のように業界イベントやクライアント向けブリーフ、パワポのプレゼン資料に氾濫する──次のトレンドが到来するまでは。

そして、2023年の話題の中心は、ChatGPTとWeb3のようだ。しかし、これに注目しているのはマーケターだけではない。インターネット上で不正を働く者たちも、詐取の手段ともなり得る話題の技術や新しいトレンドにはとても敏感だ。そしてこれが、広告においては、偽のクリック、インプレッション、ボットトラフィックとして現れることになる。これらは、総称して広告詐欺(アドフラウド)と呼ばれている。

今では、マーケターやエージェンシーも、アドフラウドの危険性や被害については、もう十分に理解しているはずだ。アドフラウドは多額の広告予算を無駄にするだけでなく、キャンペーンの効果をも損なってしまう。

ジェネレーティブAIの一種であるChatGPTや、Web3のような新技術は、新しいオーディエンスにリーチし、広告体験をパーソナライズする魅力的な機会をもたらす。しかし一方で、これらの技術にはアドフラウドを増殖させるリスクがあり、そのほかにもいくつか課題が残されている。

予見されるジェネレーティブAIのリスク

サイバーセキュリティ研究者は2023年、悪意あるAI広告キャンペーンと思われるものを初めて発見した。その広告の目的はビジネスソーシャルプラットフォーム「リンクトイン」の乗っ取りで、機密性の高い個人情報を取得する意図があったとされている。この偽広告は重大な懸念とまでは言えないものだったが、今後起こりうる事態の予兆とは言えるだろう。

広告詐欺師は通常、デジタル広告を掲載するための偽のドメインを作成し、そのサイト上でボットによる大量アクセスを発生させて、広告主から広告費を詐取しようとする。しかし、もしジェネレーティブAIがドメインを作成すれば、より巧妙かつ大規模な不正が可能となり、マーケターは深刻な問題を抱えることになるだろう。

もちろんジェネレーティブAIの進化は、業界にとってもメリットがある。効果的に使えば、広告主はパーソナライズされた広告コンテンツを大量に自動生成することもできるだろう。しかし、消費者の信頼やプライバシーが損なわれるリスクもある。広告主は消費者データの収集と使用については透明性を確保し、公正でバイアスのないAIアルゴリズムを維持しなければならない。イーロン・マスク氏をはじめとするテクノロジー業界のリーダーたちが、AI研究の一時中止を呼び掛けているように、皆が、ジェネレーティブAIプロジェクトの行く末を慎重に見守る必要があることは確かだ。

全く新しいインターネット

Web3マーケティングでは、分散型マーケットプレイスや報酬型広告システムを構築するために、ブロックチェーン技術を利用する。インターネットの第3段階とうたわれるWeb3は、サーバベースの中央集権型インターネットの概念を根底から覆し、「パーミッションレス」な分散型ブロックチェーンネットワークとスマートコントラクトの世界を生み出した。

まだ始まったばかりではあるものの、マーケターはすでに、消費者とエンゲージする新たな方法や広告パフォーマンスを追跡する新たな能力について検討し始めている。しかし、グーグルやメタのような巨大テック企業が存在感を高めていることで、ブロックチェーンの拡張性や相互運用性、フラウドやハッキングの危険性について、懸念の声が上がっている。

また、ブロックチェーン技術は平均的なメディアバイイングツールよりはるかに複雑だ。ブロックチェーン上の偽情報を見分けるのは意外に難しい。間違いなく、詐欺師がすぐに増えるだろう。Web3の世界に踏み込むには、綿密な計画、トレーニング、準備が必要となる。マーケターは全く新しいこの世界でいったい何に直面することになるのかを知っておくべきだろう。

目下のところ、アドフラウドの防止と制御は依然として困難な課題のひとつだ。しかし、マーケターが現在、そして、将来にわたってアドフラウドを阻止するための重大なヒントがひとつある。

本物か偽物かにかかわらず、キャンペーンのトラフィックフローを理解するには、データに基づくインサイトが重要だということだ。データ分析ツールを用いれば、キャンペーンのパフォーマンスを追跡し、広告費を最適化することができる。さらにトラフィックフローに異常を見つけられれば、潜在的な不正行為を発見することもできる。その上で、機械学習やAIをデジタルマーケティング戦略に応用するといいだろう。特に、機械学習を活用すれば、刻々と進化する詐欺の手法にもうまく適応できるだろう。

2023年も引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、人々の消費行動や経済活動に影響を及ぼしている。デジタル空間では競争が激化し、データプライバシーに対する懸念が高まるなか、ブランドはさまざまなチャネルやプラットフォームに広告費を分散させる必要がある。

新しいトレンドや現象に出会うことは、広告業界では常に歓迎されることだ。新しい技術や新しい環境はイノベーションを後押しする。しかし、こうしたイノベーションは、必ず不正行為も後押しする。アドフラウドのような不正行為に対処できなければ、マーケターは、詐欺師のターゲットになり続けるだろう。

パトリシア・フレイジョ氏はトラフィックガード(TrafficGuard)のカスタマーグロース担当バイスプレジデント。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

関連する記事

併せて読みたい

4 日前

世界マーケティング短信:日本の総広告費が過去最高を更新

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2024年2月28日

「ハイリスク・ハイリターン」のWhatsApp

パーソナライズ化が重視される時代、マーケターは世界で最も人気が高いコミュニケーションチャネルの1つを見逃していないだろうか。

2024年2月27日

スポティファイ、社内に音楽コンサルティング事業「Aux」を設立

オークスは、キャンペーンでの音楽の使い方やアーティストとのペアリングについて、ブランドを支援していく。

2024年2月27日

クリエイターがDOOHを選ぶ理由は「ストーリーテリング」と「測定可能性」

3Dサイネージからラスベガスの「スフィア」まで、デジタルOOHの進化に伴い、ブランドは消費者の関心を引こうと新たなチャンスを見出している。