David Blecken
2016年8月26日

「バズ動画にありがちな要素」が満載なチキンラーメンの動画

発売58年目を迎えた日清食品のチキンラーメン。ネット上で話題となるバズ動画にありがちな要素を盛り込んだ動画「侍ドローン猫アイドル神業ピタゴラ閲覧注意爆速すぎる女子高生」が公開以来、話題を集めている。制作の経緯を、電通のクリエーティブプランナー、「クドウ ナオヤ」さんに聞いた。

日清食品からは、どのような要望がありましたか?

チキンラーメンは元祖インスタントラーメンとして、58年間愛され続けているブランド。ともすれば、古いブランドであると思われてしまうという課題があり、これを打破して常に時代にマッチしたブランドとして新しく見えていくブランディングが必要でした。これまでのマス中心の広告展開の他にも、WEBで「バズる」ような、今の時代に合わせたコミュニケーションのチャレンジが求められていました。

このアイデアが生まれた経緯を教えてください。

今の時代に合わせたチャレンジがテーマでしたが、ブランドの保守的やおとなしいキャラクター性と、WEBでバズを起こすということには、正直なところギャップを感じていました。目新しいことをして話題化を図らずとも半世紀以上愛されている、ある意味硬派なブランドなので。

そこで、バズを起こすようなことを目的とするのではなく、ネタ的に手段として寄せ集めて扱い、そのギャップを生かした逆説的な企画を立てました。一時的な話題をとるよりも、ブランドが長く愛されることのすばらしさを伝えようと考えたのです。

日清食品の広告は、ユニークなセンスとシンプルなメッセージが異彩を放ってきました。そこにはどのような哲学が貫かれてきたのでしょうか?

日清食品の安藤徳隆社長には、世間からクレイジーと呼ばれるような人にしか世界は変えられないという思いがあります。その考えから、さまざまなユニークな表現に挑戦しながらも、掲げる「Beyond Instant Foods」という指針のもと、食品にとどまらない本質的で普遍的な価値を問うてきた。その姿勢が、シンプルかつ強いメッセージにつながっているのだと思います。

本題からそれる質問かもしれませんが、なぜ日本の広告には女子高生が多く登場するのでしょうか?

女子高生は多くの日本人が原体験として持つ、青春のモチーフとして受容性が高い。また、規律ある制服を着たその清廉性と、突飛なアイデアと組み合わせることで、面白いギャップが生み出しやすいからだと思います。

日本人にとって女子高生は、いつでも懐古したい心のロマンなのです。

広告主はトレンドを容易に追いかけすぎると考えますか? また、次にくると予想しているトレンドは何がありますか?

どんなに歴史のあるブランドだとしても、時代のトレンドを捉えて柔軟にコミュニケーションを変化させようとする姿勢は素晴らしいと思います。ただし、トレンドを取り入れたり話題をつくったりすることは、あくまで手法。それが目的化しないよう、本質的なところまできちんと伝えられる設計にすることが、我々の仕事だと思っています。

次のトレンドは分かりませんが、いつの時代もトレンドは人の普遍的な欲求が紐づいているものだと思います。見たいとか知りたい、知らせたいといった欲から逆算して設計された広告や商品は、トレンドまで昇華しやすいのではないかと思います。

この広告の制作について、他に何かコメントがあればお願いします。

クライアントはもちろん、広告業界に身を置く我々としてもチャレンジングな企画であったと思います。バズムービーを企画する側としては、マジシャンのタネ明かしのような、今後の自分の首を締めかねない企画であったと思うので、プランナーとして本当のチャレンジはこれからなのかもしれません。

(編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

1 日前

世界マーケティング短信:グーグルがCookie廃止方針を撤回

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

3 日前

リテールメディアネットワークが、アジア太平洋地域で人気を集めている理由

小売や流通の企業が、リテールメディアネットワーク(RMN)を続々と立ち上げている。アジア太平洋地域におけるRMNの機会や懸念、有効性を探る。

3 日前

ほとんどの大企業が「グリーンハッシング」をしていることが判明

FTSE100のうち63%がESGの進捗状況を控えめに開示し、積極的なコミュニケーションを展開していないことが、調査で明らかになった。

3 日前

日本に注目する、世界のスポーツ市場

アスリートたちの世界的活躍、安定性・持続可能性の高い投資環境……今、世界のスポーツ市場が日本に熱視線を送る。