Olivia Wedderburn
2022年5月05日

アンチソーシャルを掲げるBeRealは、TikTokを超えられるか

BeRealは、「フィルターのない」ソーシャルメディアを標榜し、インスタグラムやTikTokを超えようとしている。

アンチソーシャルを掲げるBeRealは、TikTokを超えられるか

ソーシャル上の存在感がより本物らしいことを賞賛する声が聞こえてこない日はないようだ。撮りためた写真を、インスタグラム上にまとめて投稿するフォトダンプや、TikTokの「My taste in music is your face(私の音楽の好みはあなたの顔)」トレンドなど、「メインアカウントでは誠実」であることが流行となっている。

この流行は、多くのインフルエンサーに活躍の場を開放した。ブランドは大規模なフォロワーを避け、ニッチなソーシャルタレントを求めるようになった。これは決して新しい現象ではなく、数年前から水面下で起きていたことだ。ただ、従来のインフルエンサーへの失望によって、それがさらに表面化しただけだ。

また、ソーシャルメディアの新たなアプリも次々と誕生した。撮った写真がそのまま投稿されるDispoや、思っていることをそのままストリームするClubhouseなどだ。これらのアプリも大きな注目を集めたが、BeReal(ビーリアル)ほど爆発的に盛り上がったアプリは他にないだろう。

BeRealのタグラインは、「Your friends for real(あなた友達のリアルな姿)」だ。そして、次のように続く。「毎日違う時間に、2分以内に写真を1枚撮影して共有するよう、全員に通知が届きます。これは、あなたの友達が、本当はどのような日常を送っているのかを発見できる新しいユニークな仕組みです」

これは魅力的な代替案に聞こえ、間違いなくアーリーアダプターの興味をそそるだろう。だからこそBeRealは、2022年だけでダウンロード数が315%も増加したのだ。

BeRealは、既存のソーシャルメディアへのアンチテーゼとして、2020年2月に公開された(なんと絶妙なタイミングだろう)。この時はまだ、インスタグラムがソーシャルアプリのリーダーで、インフルエンサーがピークに達し、バブルがはじける寸前だった。

当時は、有意義な時間の使い方やデジタルデトックスなどが盛んに論じられており、既存SNSの代替手段を発表するための機は熟していた。しかし、パンデミックが発生し、BeRealはスタートでつまずくことになった。なぜなら、本当の自分を見せたいと思っても、普段の私たちの生活は、週末に比べると明らかに面白みに欠けていたためだ。

しかし、人生の平凡で退屈な側面に目を向けることは、若い世代にとっては刺激的だったのかもしれない。TikTokはこのような慣行を、洗練された美学として、大いに取り入れていた。だからこそ、TikTokユーザーはBeRealを称賛し、このアンチソーシャルプラットフォームに最大のトラフィックを送り込んでいるのだろう。

プラットフォーム間のクロスポストは目新しくはないが、アルゴリズムを突破して、競合アプリへの称賛が波及するのは珍しいことだ。しかもBeRealは、TikTokをソーシャル間のつながりのための究極のファシリテーターと位置づけており、競合他社がニッチ路線を歩んでいる限り、その成功にも動じることはない。これは、Meta(メタ)には決してできないことだ。賭けてもいい。メタは今、そっくりの機能を開発しているはずだ。

BeRealは消費者ファーストに設計されてはいるが、このアプリの世界に最初に足を踏み入れる勇気あるブランドは一体どこだろうと、疑問に思う人もいるだろう。BeRealの世界では、本当の友達だけを登録して、その日常を見ることが推奨されている。しかし、人気のインフルエンサーたちも、後れを取るわけにはいかない。彼らも自身の2分間を収益化するために準備を整えているはずだ。

多くのeコマースブランドにも参入機会はある。ユーザーの作成したコンテンツを再利用したように見えるブランド広告の多くは、実は全くそうではない。インフルエンサーやエージェンシーが撮影し、本物であるような錯覚を抱かせているだけのものが大半だ。

これらの企業が用いる手口はほかにもある。例えば、メイクアップブランドのカジャ(Kaja)は、サイトのUXにアンバサダープログラムを組み込み、サイトで購入した商品をTikTokで紹介してほしいと呼び掛けている。報酬は紹介ビデオが100回再生されるごとに1ドルだ。いずれのケースも、ブランドがコミュニティを通じて、BeRealの世界にひそかに入り込む可能性を示唆している。

そして、新興のソーシャルプラットフォームがすべてそうであるように、BeReal自身にとっても、コミュニティは最終目標だ。BeRealは、世界中の大学生が最も利用するアプリの座を目指して、今もアンバサダープログラムへの応募を受け付けている。

このプログラムに参加することで得られる報酬は明らかではないが、少なくとも、パーティーを開催したり、マーケティング予算を管理したりするためのツールの提供が約束されている。人々とのつながりを買うことはできないが、人々にインセンティブを与えることはできそうだ。

多くのアプリが挑戦し、失敗に終わるなか、BeRealは妙に説得力のある方程式を編み出し、その結果、勢いに乗っているように見える。オーガニックで、本物志向で、飽和のピークにある若年層に強いこと。これらはすべて成功を示している。もしBeRealが成功すれば、ブランドは、この若年層に偏ったソーシャル空間で、どのように立ち回ればよいかという新たな課題に直面するだろう。

しかしそれに伴い、ソーシャルメディアマーケティングの実施方法がよりクリエイティブになる可能性が増すかもしれない。1つだけ確かなことがあるとすれば、コミュニティと真正性こそが、今後も最高位に君臨し続けるということだ。真実らしさの時代はもう終わった。今は、真実であり続けることこそが重要なのだ


オリビア・ウェダーバーン氏はTMWアンリミテッド(TMW Unlimited)のソーシャル、インフルエンス担当ディレクター

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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