Jessica Heygate
2022年11月25日

インスタリール、YouTubeショート、TikTok:どう予算配分する?

インスタグラム「リール」やユーチューブ「ショート」が収益化で後れをとるなか、Campaign USは、各動画プラットフォームへの広告予算に影響を与える要因(パフォーマンス、オーディエンス、成熟度、信頼性など)について、掘り下げて考察した。

(写真提供:左からインスタグラム、ユーチューブ、TikTok)
(写真提供:左からインスタグラム、ユーチューブ、TikTok)

グーグルとメタは、いずれも自社の短尺動画プロダクトであるユーチューブ「ショート」インスタグラム「リール」について、マネタイズのペースがユーザーの増加に追いついておらず、2022年第3四半期は、売上が伸び悩んでいることを認めている。

ユーザーが、短尺動画の視聴や投稿に時間を使えば使うほど、プラットフォームの主力である、フィードやストーリー、動画プロダクトがもたらすインプレッションは減少する。こうしたジレンマにより、メタは四半期ごとに5億ドル(約700億円)以上の売上を失っており、また「ショート」はユーチューブの第3四半期の広告収益を、おそらく史上初めて赤字に転落させた(グーグルは2019年以降、ようやくユーチューブ単独の売上を発表するようになった)。

一方、TikTokは相変わらず右肩上がりだ。イーマーケターとインサイダー・インテリジェンスによれば、バイトダンスが所有するプラットフォームTikTokは2022年、米国における広告売上を昨年の21億ドル(約2965億円)から59億6000万ドル(約8415億円)へと、約3倍に伸ばす見込みだ。グーグルの年間広告売上2100億ドル(約29兆6500億円)や、メタの1150億ドル(約16兆2370億円)と比べれば、はるかに小さな数字ではある。しかし短尺動画市場に限ってみれば、TikTokは広告費の最大のシェアを手にしていると、Campaign USの取材に応じたメディアバイヤーたちは語る。

「多くのブランドが明確にTikTokへの乗り換えを図っている」と、バイトデプト(Byte/Dept)でメディアディレクターを務めるニッキー・メレス氏は言う。

こうした状況の最大の要因としては、TikTokが最もサービス提供開始が早く、ユーザーの滞在時間シェアも最大であることが挙げられる。TikTokは2018年、世界で4番目に多くダウンロードされた非ゲームアプリとなった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックもTikTokの成長を促し、2021年にユーザー数は10億人を突破し、米国人ユーザーも1億人を超えている。

「TikTokの飛躍的成長は、誰もが自宅から出ることができず、エンターテインメントのための新しいプラットフォームを探していた時期に起こった」と、メレス氏は言う。「このような成功を、他の新興プラットフォームが再現するには、もっと長い時間を要するだろう」

TikTokの台頭に対抗し、メタは2020年8月にリールを導入した。その1カ月後、ユーチューブショートもこれに続いた。リールへの広告配信が始まったのは2021年1月だが、ショートでの配信開始はつい最近だ。したがって、ユーチューブショートは広告配信に関して、3つの中では、最も小規模だと考えられる。

TikTokはまた、滞在時間でも最大のシェアを有している。世界のアンドロイドユーザーは、2022年の第2四半期には、1日に平均95分もTikTokを利用していた。フェイスブック(49分)とインスタグラム(51分)の合計に匹敵する数字だ。

滞在時間は、広告パフォーマンスに影響を与えるため、メディアバイヤーが広告費の予算配分をする上で重要な要素となる。ユーザーがプラットフォーム上で過ごす時間が長いほど、広告に触れる機会も増えるからだ。

ただし、オーディエンス属性や広告フォーマット、プラットフォームの成熟度、ブランドセーフティ、クリエイターの市場規模など、他にも考慮すべき点は多々ある。

オーディエンスの属性

各プラットフォームのユーザーベースとそのユーザー属性は、メディアバイヤーが予算配分を考える上で、最初に注目する要素の一つだろう。

それは要するに、ある特定のオーディエンスが最も多いのはどのプラットフォームか、そのオーディエンスはどのように時間を使っているかといった情報だ。オーディエンスの質は、プラットフォームがインプレッション価格を決定する上で大きな影響力をもつ。

TikTokのパフォーマンスが良好なのは、他のプラットフォームよりもZ世代の割合が高いからだと、メディアバイヤーらは指摘する。3つのプラットフォームはいずれも若いオーディエンスを引きつけているが、Z世代が最も活発なのはTikTokだ。米国のTikTokユーザーの3人に1人は10~19歳であり、また30%が20~29歳であるという推定もある。ピュー・リサーチ・センターによれば、13~17歳のティーンエイジャーのあいだで最も人気のあるプラットフォームはユーチューブであり、インスタグラムのオーディエンスに10代が占める割合は相対的に小さい(8.5%)。

広告インプレッションが増加しているにもかかわらず、直近の四半期において、メタが設定する広告あたりの平均単価が低下している理由は、これで説明できそうだ。

「インプレッションが増加する一方で、広告単価が低下しているなら、それはオーディエンスあるいはインベントリー(もしくはその両方)の価値が低下していることを意味する」と、PwCでテクノロジー・メディア・通信コンサルタントを務めるC・J・バンガー氏は述べている。

パフォーマンス

広告パフォーマンスと効果もまたメディアバイヤーにとって重要な要素だ。TikTokとユーチューブはコンテンツ主体のプラットフォームであるため、インスタグラムと比べて高いエンゲージメントが得られるという。

「TikTokで人々が触れるコンテンツは、本当の意味で彼らの関心に合っているものであり、そのため我々と我々のクライアントにも確かな結果がもたらされている」と、メレス氏は言う。

インスタグラムはアルゴリズムを変更し、TikTokで数十億ビューを集めるような短尺動画を優先的に表示するように切り替えた。しかしこれによって、かつてインスタグラムの代名詞だった、写真コンテンツを主体とするブランドやインフルエンサーのエンゲージメントは低下した。

「インスタグラムで多くのフォロワーを集めてきた人々は、プラットフォームのこの変化を認識している。この変化によって、彼らのインスタグラムに対する投資も転機を迎えるかもしれない。TikTokのアルゴリズムは、ペイドメディア契約外であっても、彼らにとって極めて有利に働くことを実感しているからだ」と、リプライズでソーシャルメディア戦略およびパートナーシップ担当シニアバイスプレジデントを務める、セイディー・ミラー氏は言う。

「インスタグラムは、従来はつながり主体のプラットフォームであり、だからこそ人々に好まれてきた。しかし今は、コンテンツ主体に切り替えようとしており、大勢の人々がこうした変化に不満を抱いている」と、メレス氏は指摘する。

他のプラットフォームと比べて、TikTokではオーガニックなオーディエンスにリーチするのが容易だ。そのため広告主は、まずTikTokを前提としたキャンペーンを制作し、それを他のプラットフォームに転用する傾向にあると、メディアバイヤーは言う。

「とりわけクリエイターが主体となったキャンペーンでは、TikTokで“バズる”傾向にあり、どのクリエイターを起用するかは、TikTok上でのプレゼンスを基準に決定されることが多い」(ミラー氏)

「インスタリールはたいていTikTokの使い回しだ」(メレス氏)

しかし、メタとユーチューブにはスケールメリットがあり、これにより損失の埋め合わせができる。

広告主は通常「包括的アプローチを採用」し、メタのプラットフォーム全体で広告を展開する。リール広告は20の選択肢の一つでしかないと、リプライズでペイドソーシャル担当シニアバイスプレジデントを務めるエリン・ロジャーズ氏は言う。

「ブランドは、広告について、リールやニュースフィードといった特定のプロダクト単位では考えない。できるだけ多くの広告枠に配信できるクリエイティブを制作し、アルゴリズムの恩恵を受けられるようにする」(ロジャーズ氏)

ユーチューブ広告の販売担当者も、ショート広告だけに力を入れることはなく、広告プロダクトのラインナップ全体を売り込んでいる。しかし、バランスを考えて売らなければ、マネタイズの苦難は続くかもしれないと、ベイナーメディア(VaynerMedia)で投資担当シニアバイスプレジデントを務めるジョン・モーゲンスターン氏は指摘する。

「グーグルやユーチューブとの会話のなかでは、ショートの話題はあまり出てこない。リールやTikTokとは違って、『これをショートで配信してくれ』という話にはならない」からだと、モーゲンスターン氏は言う。

同氏はまた、TikTokはブランディング用にも利用されるが、ショートはパフォーマンスマーケティング用途に限られているとも述べている。

それでも、ユーチューブの月間アクティブユーザーは20億人を超え、最大のユーザー基盤という強みがある。インスタグラムは約14億4000万人、TikTokは10億人だ。

メレス氏は「ユーチューブには、ユーザーをメインのアプリからショートに誘導するチャンスがある」として、「私見だが、これに関しても、インスタグラムはやや苦戦しそうだ」と指摘した。

広告フォーマット

多様な広告フォーマットを提供することは、プラットフォームの利点となる。とりわけ中小規模の広告主との関係構築には、有利に働く。

「ブランドやエージェンシーが、広告費をどこに投じるかを判断する決め手に着目すると、しばしばフォーマットが関係していることがわかる」と、バンガー氏は言う。「動画には参入障壁がある。高品質な動画広告に投資できるだけのリソースを有する企業ばかりではないからだ」

クリティカルマスのメディア担当バイスプレジデント、サム・バロン氏も、多様なフォーマットがあれば、広告主は比較的容易にテストでき、配信規模も拡大できると述べている。

「我々もまた、いつもコスト効率をテストする機会を探している。そして学び続けることで、時代の先を行くことができる。クライアントは、新しい広告フォーマットのパフォーマンスを事前に検証してから、そのフォーマットに特化した高度なクリエイティブの制作に予算を投じることができる」(バロン氏)

メレス氏によれば、TikTokの広告プロダクトは選択肢こそ少ないが、かなり革新的だという。ブランデッド・ハッシュタグチャレンジやトップビュー(ユーザーがアプリを開いて最初に見る動画の広告枠)は、「コミュニティをブランドに引き寄せる」新たな手法の実例だと同氏は語る。

信頼性とブランドセーフティ

ブランドセーフティは、すべての投資判断において考慮されるものだ。つい最近まで、ブランドセーフティに関しては、確立されたプラットフォームであるインスタグラムとユーチューブのほうが、TikTokよりも望ましいとされてきた。

しかし、TikTokは「もはや初期の段階ではない」とミラー氏は言う。

「このプラットフォームに適応するブランドが増えてきた。2022年までは、多くのブランドが1つのキャンペーンでテストしながら様子を見ていたが、いまでは持続的なプレゼンスを示すために、投資額を引き上げるケースが増えてきている」(ミラー氏)

TikTokは測定分野で、サードパーティーベンダーとのパートナーシップに投資し、業界スタンダードを導入することで、広告主の信頼を勝ち取った。

サードパーティーCookieの廃止やモバイル識別子といった、測定をめぐる状況の変化も、プラットフォーム間の対等な競争を促す結果になったと、PwCのバンガー氏は言う。とりわけ、AppleがIDFAに関してオプトインを義務付けるように方針を転換した影響が大きいという。

「今では誰もが、測定とアトリビューションを再定義している」と、バンガー氏は言う。「業界の主要プレーヤーは、モバイル識別子やより広範なインターネット識別子をめぐる状況が変化した早期の段階ですでに、パフォーマンスに一定の影響が及ぶことが予想されると警告を発していた」

TikTokの規制に対する課題や中国政府との関係を、一部のブランドは依然として懸念材料に挙げている。TikTok pixelと呼ばれる、ユーザーのアクションやコンバージョンを追跡するためのコードをウェブサイトに埋め込むことに難色を示すブランドも多い。

「米国政府が懸念を示しているように、一部のクライアントは、データがどこと共有されるのかを心配しているのだ」と、メレス氏は述べた。

執筆協力:Brandon Doerrer

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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