David Blecken
2016年10月03日

「ウナギ擬人化」批判に見る、女子高生の広告への飽和感

養殖魚のプロモーションがこれほどの物議を醸そうとは、誰が想像しただろうか。

「ウナギ擬人化」批判に見る、女子高生の広告への飽和感

鹿児島県志布志市がふるさと納税のPRのために特産のウナギを取り上げた動画への批判がソーシャルメディア上で相次ぎ、炎上する事態に至った。市は既にこの動画を削除している。

動画には、志布志市の養殖ウナギが黒い水着姿の少女として登場する。夢の中の出来事のようなストーリー展開で、少女はプールで泳ぎ、日差しを浴びて楽しく暮らしているが、しばらくすると別れの言葉とともに水に入り、ウナギに姿を変えてしまう。ここでシーンが切り替わり、ウナギの蒲焼きを調理する様子が映し出される。



これが誘拐や監禁、歪んだ性的志向、カニバリズム、女性蔑視などを連想させるとして、ソーシャルメディア上で批判が相次いだ。高校生くらいの年齢と思われる少女が黒いスクール水着で登場する設定が嫌忌されたようだ。この動画は日本の視聴者をターゲットにしていると思われ、海外の視聴者には細かいところまでは伝わりにくいかもしれない。(余談だが、ウナギは環境によって性別が決定する。養殖ウナギのほとんどは雄である)

ある業界関係者はこの動画について、どこの国でも基本的には否定的に認識されるはずで「視聴者の受け止め方や社会問題に対して、担当者はもっと慎重に配慮すべき」と指摘する。

この動画のコンセプトは奇妙かと問われれば、その通りと言える。作風は誤解を与えるか、という問いに対しても同様だ。しかし、ありとあらゆる批判を受けて当然だろうかと問われれば、そうとも限らない。擬人化の手法を用いた広告はいくらでもあり、それに倣っただけのことだ。純粋に良かれと思って企画したものの、実行段階でつまずいたというのが実情だろう。市の担当者は「志布志の養殖ウナギは大切に育てられていることを強調したかった」と説明しているという。

世の中にはこの動画よりも重要な、批判されるべきさまざまな問題がある。それでも多くの批判が集まった今回の件から透けて見えるのは、商品を売るために女子高生を起用した広告のあまりの多さに、視聴者が辟易している様子だ。「キャンペーン」では、日本の広告でなぜこれほどまでに女子高生が多用されるのかを問い続けていく。大人の視聴者にとって「純真だったころを思い出すため」との説明もあるが、いまひとつ納得感がない。そろそろ女子高生に替わるアイコンを探す時期ということなのか? そして何よりも大切なのは、制作過程にもっと多くの女性が関与することであろう。

擬人化という観点では、敬老の日に合わせてリリースされた「カルカン」の高齢猫向けキャットフードのプロモーションは成功例と呼べるだろう。動画の年老いた男性は、実はかつて拾われた猫という設定だ。幸いにしてこの動画は、飼い主による猫の不法監禁を連想したといった批判の声は上がっていないようだ。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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