Campaign Asia-Pacific
2018年3月20日

エージェンシー・レポートカード2017:電通

日本の広告界トップである電通は、抜本的な改革の真っ只中。だが、同社の国内外での事業規模は今なお、国内の他エージェンシーを凌駕する。

エージェンシー・レポートカード2017:電通

Campaignでは毎年、アジア太平洋地域を代表するエージェンシーやメディアの総合的な査定「エージェンシー・レポートカード」を発表している。以下は電通の、日本およびアジア太平洋地域における2017年の功績を、業績やイノベーション、作品、受賞歴、人材、リーダーシップといった観点から評価したものだ。

代表:山本敏博(電通)、日比野貴樹(電通イージス・ネットワーク アジア太平洋地域担当)
所有主:電通
2017年の評価:B-
前年の評価:C+

電通の事業構造は他の広告大手2社と同様、本社を日本に構えて海外事業を展開するというものだが、その中で最も国際的に成功した企業だ。売上総利益における海外事業比率は55%を超える。

電通イージス・ネットワークでアジア太平洋地域を統括する日比野貴樹氏は、電通の執行役員も兼務している。些細なことのようだが、これは電通がアジア市場に本腰を入れている証といえるだろう。同社のアジア太平洋地域の事業は、中国とインドでの好況が牽引する形となり、前年比117%となった。日本の多くのエージェンシーが日本企業の海外進出時のサービスに特化している中で、電通は国内ブランドと海外ブランドにバランスよく携わっている。実際にアジア太平洋地域では、6割超が地元企業からの事業だという。

国際広告賞でも輝かしい実績を残しており、昨年はカンヌとスパイクスアジアで合計3つのグランプリを獲得した。また、都内の電通本社で始まった、同社で働く母親たちによる調査研究部門「MamaLab」もアジア太平洋地域で広く展開し、子どもを持つ女性たちのインサイト獲得に務めている。規模はまだ小さいものの、いくつかの大手クライアントとのビジネスにつながっている。

2015年の社員過労自殺は、昨年も引き続き大きな影響を及ぼした。11月には、未払いとなっている残業代約24億円を社員に支払うことを決定。労働環境改革本部を設置し、基盤整備や増員を行うなど、過重労働の是正策を強化している。

グループ全体の中でも特に、国内本社のイノベーティブな動きは目覚しい。いち早くAIを導入したマッキャンに続き、昨年は電通も「AIコピーライター」を開発した他、テレビ番組での活用を視野に入れた黒柳徹子のアンドロイド「totto」も発表した。このような取り組みや、オリジナルコンテンツへの投資などといった姿勢が、同社を広告代理店以上の存在として際立たせている。

電通は長らく、十分な透明性を確保していないとして批判されてきた。しかし楽天と新会社「楽天データマーケティング」を設立したことで、より開かれた事業の推進が期待される。

課題となるのは、電通デジタルを電通の品質水準に引き上げることだろう。電通デジタルは今も成長中だが、電通から移ってきたスタッフが大部分を占めており、デジタルスキルの不足もあるだろう。今年は1000人規模への拡大を目指す同社だが、優秀な人材が不足しているデジタル分野での人材確保は、容易ではないだろう。

概況報告:電通の労働環境改革

・AIを活用した「ロボティック・プロセス・オートメーション」を導入し、作業を自動化して業務を効率化
・移動時間の削減のため、大手クライアントの近くにサテライトオフィスを設置
・労働環境整備の、2018年末までの完了を目指している。このことで営業利益は減る見通し

(文:Campaign Asia-Pacific 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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