Campaign Asia-Pacific
2019年3月22日

エージェンシー・レポートカード2018: ADK

組織再編に力を入れるADKは、数々のすぐれたクリエイティブを制作。従来型の収益モデルからの脱却を目指すイニシアチブも発揮してきた。

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Campaignでは毎年、アジア太平洋地域の主要な広告会社の実績を評価。今年はADK、電通、dentsu X、博報堂の国内広告会社4社を評定していく。第一弾は、ADKだ。

社名:ADK
社長:植野伸一(日本)、片木康行(ADKグローバル)
持株会社:ベインキャピタル
2017年の評価:C
2018年の評価:C+

ADKの自己評価:B+/A

「ADKがカンヌライオンズやアジア太平洋地域の多くの広告祭で大きな賞を受賞したことを評価した。特に宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共に実施した「未来レストラン いぶき」と、絶滅危惧種を支援するWWF ジャパンとの「WITH STAMP」プロジェクトは、その社会的テーマや発想が広く賞賛を浴びた。同社のクリエイター2人は、2017年クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞のメダリストに選ばれた。またADK台湾は数多くの賞を獲得しており、中国では大きな賞のほとんどを勝ち取っている」

評価内容の詳細
1) 経営/リーダーシップ  C+
2) クリエイティビティー  B-
3) イノベーション  C+
4) 新規事業と既存顧客維持  C+
5) 人材と多様性   C

2017年のベインキャピタルによる買収を受け、ADKは新たな方向に大きく舵を切るだろうという楽観的な見方があるが、その一方で、社員の抵抗を前に大きな変革は無理だろうとみる向きもある。実際のところ、これまではその中間といったところだった。同社にとっての課題の一つが、「真のコンシューマー・アクティベーション・カンパニー」になるという目標が、実現にはあまりにも大まかすぎて、理解が難しいという点だ。実際には、軸足をメディアバイイングからイノベーションへと移した運営方法の模索を意味している。

この実現のためADKは、ADKホールディングス、ADKマーケティング・ソリューションズ、ADKクリエイティブ・ワン、ADKエモーションズ(コンテンツ事業に特化)の、4つの異なる事業体への再編を進めている。他の広告代理店グループが部門統合を模索する一方で、ADKは逆の方向に向かっているようだ。だが同社は、これがさらなる専門性の強化につながるとみている。

ADKはまた、多彩な「クリエイティブブティック」の立ち上げを開始。これはもっと「メディアニュートラル」になり、若手社員が「巨大な機械」の一部として働くのではなくクリエイティビティーを発揮できる、より魅力的な場を設けるというもの。従来の顔ぶれとは少し異なる、できれば新興のクライアントを引き付けるという目的もある。その第一弾がCHERRYだ。現在のところは収益源というよりも、見込み顧客の獲得としての役割を果たしているが、ADKは近い将来、同じような事業を立ち上げる予定だ。次に設立予定のクリエイティブブティック「Fact」は、8月にジオメトリー・グローバルからエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターとして移った三寺雅人氏が率いる。ADKによれば三寺氏は、これまでにないタイプのクリエイティブの人材として、同社が求める代表的な存在。中途採用が日本でも当たり前になってきているとはいえ国内の3大広告代理店では珍しいことだが、ADKは大山俊哉氏(電通デジタルでCEOを短期間務めた)を招き入れた。

案の定、ADKのいまだ抽象的な新しいビジョンに、誰もが居場所を見つけたわけではない。また希望退職制度が導入され、その結果多くのベテラン社員がADKを後にした(ADKによればその数はこれまでのところ約100人。退職者よりも多い人数を雇用する予定で、これはコスト削減ではなく「人材の入れ替え」なのだとか)。ITやデータ分析、クリエイティブの分野で、より「専門性の高い人材」を雇用する予定だ。

ベインキャピタルによる買収に伴い、不可避な混乱が生じたが、ADKの既存事業は堅調だ。同社はまた、収益性の低い韓国事業を売却(ADKブランドとして事業を継続)。日本ではケンタッキーフライドチキンの事業を一部手放すことにはなったが、一般消費者向けのテック産業、ラグジュアリー分野や化粧品分野で新規顧客を獲得した。日本国外では、事業のさらなる成長は果たせなかったが、コスト削減により収益を増加させた。中国とシンガポールでの事業はまずまずだが、アジア最大のビジネスの中心地であるメコン地域での不振が足を引っ張っている。明るいニュースとしては、2年前に始まったトヨタとの関係は継続しており、これがシンガポール拠点で最大の事業の一つとなっている。

クリエイティブの面では、ADKにとって例年よりも好調な年となった。カンヌライオンズやスパイクスアジア、アドフェスト(アジア太平洋広告祭)でJAXA、WWFジャパン、セブンイレブンの作品が審査員から高く評価された。同社によれば、国際的な成長戦略をいまだ策定中で、今年その結果が現れてくるとのことだ。それを別にしても、広告分野以外で目覚ましい動きを見せており、新たなチャンスを切り開いている。その一例が、統合型リゾート(IR)に関するニュースやインサイトを提供するウェブサイトだ。IRは日本では論議を醸す産業だが、これに対する好意的な世論形成を図り、潜在的なIRクライアントを引き付けることが目的だ。

ADKはまた、広島で開催された日本初の都市型スポーツの国際大会「FISE(フィセ)」 に投資し、プロデュースにも関与。通常であればアプローチしにくい若手オーディエンスに訴求できる場として、同イベントのマーケティング権やスポンサーシップ権をクライアントに販売している。

ADKの働き方改革プログラムは、残業時間削減を人事部の指揮で達成したとのこと。従業員の在宅勤務も、さまざまな理由によるものを認めている。だが男女平等化の点では、いまひとつ物足りない。ADK初の地域担当CFO(最高財務責任者)に就任したメイ・チュア氏を含め、シニアポジションに就いた女性は数人いるが、ADKの規模の会社ならば、能力ある女性を適正に登用するための方策を積極的に講じれば、得るものが多いはずだ。

SCHEMA(スキーマ)

  • 新規事業開発支援プロジェクト「SCHEMA(スキーマ)」は、日米のアクセラレーター(起業直後の会社を支援する組織)や大学などとの共同プロジェクトで、スタートアップ企業の支援や、最先端技術についての洞察を得ることを目指す
  • ADKはイノベーションの中でもゲノム編集に興味を示しており、ビジネスやサービスに取り込みたいと考えている
  • ADKは早稲田大学とも共同で、ビジネスの世界にデータサイエンスをより良い形で応用する開発を実施している

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