Matthew Keegan
2022年4月28日

グーグルからの提言:プライバシー対策のギアを上げよう

グーグルのジェシカ・マーティン氏が、マーケティング担当者はプライバシーにどう対応すべきか、「Topics」の将来性、プライバシー意識でタイが先行する理由などについて語った。

ジェシカ・マーティン氏
ジェシカ・マーティン氏

グーグルとBCGによる最近の調査から、APAC(アジア太平洋地域)のブランドの7割が、プライバシーの重要性を理解している一方で、新たなソリューションを試したり実験したりしているブランドは4割に過ぎないことが明らかになった。

プライバシーファーストとCookieレスへの対応という点では、APACも他の市場に追いつきつつあるが、それでも期限は否応なしに迫ってきている。2023年末までに、グーグルがChromeブラウザでのサードパーティCookieの利用を終了する、という計画を受け、この地域でもデータプライバシーに関する新たな法律と規制が適用されつつある。具体的には、今年タイで個人データ保護法(PDPA)が正式に施行され、中国でも個人情報保護法(PIPL)が2021年11月に施行されている。インドでは個人データ保護法案(PDPB)が審議中だ。

グーグルでAPACのプライバシー責任者を務めるジェシカ・マーティン氏は、プライバシーへの備えは一夜にして完了するものではないので、マーケターは今すぐにでも、最初の一歩を踏み出すべきだと警告する。

APACのブランドと広告主は、プライバシーにどの程度対応していますか?

良い知らせは、この地域でもプライバシーの重要性に対する認識が高まっているということです。例えば、私たちが実施した調査では、APAC企業の70%以上が、プライバシーに配慮していないとビジネスに重大なリスクがあるということに同意しています。その中には、信頼の失墜、コンプライアンスリスク、さらには技術的なリスクも含まれます。もし2年前に同じ調査を行っていたら、市場全体でこれほど高い数値を示すことはなかったでしょう。ですから、このように意識の向上が示されたことは、私にとって非常に嬉しいことでした。

対応状況は市場によって異なっていますか?

今回の調査結果で意外だったのは、PDPAが施行されたために、課題認識において、タイがこの地域でトップになったということです。タイはこの規制の導入を契機に、同意に基づく改革を促進すべく一層の準備を進めています。しかし、規制への準拠を超えた次の段階。つまり、現代的なプライバシー慣行の浸透や、実験的な取り組みの実施については、実はタイはそれほど順調ではなく、まだ一層の努力が必要です。つまりタイは、意識は高いものの、次の段階への現実的な取り組みは――前向きに動き始めているとはいえ――十分にやり遂げたとは言えないのです。

総じて、私たちは市場を大きく3つのグループに分けて考えるようになりました。1つ目は、新興国でありながら急速に発展している市場。2つ目は、変化は起きつつあるが、まだ発展途上の市場。そして3つめが、オーストラリアなどの歴史的に成熟した市場です。最後のグループは、既にプライバシー改革が実施されており、プライバシー慣行もかなり成熟しているものの、プライバシー規制の変更や、対応する持続可能なソリューションがどのようなものになるかについては、まだ試行錯誤を続けている状況です。概して、APACにおける対応状況とプライバシーが意味するものは、APACそのものと同じくらい多様です。それでも、企業のプライバシー意識や、対応の必要性の認識には、間違いなくポジティブな変化が起きているといえるでしょう。

APACの消費者のプライバシーに対する姿勢はどうでしょうか。同じように多様でしょうか?

消費者に関しては、プライバシーに関する見方は人それぞれです。日本、インド、オーストラリア、中国について、それぞれの国で、次のような質問をしたらどんな答が返ってくるか考えてみて下さい。「利用を許容できるデータは何ですか?」「公正な価値交換とは何ですか?」「それはどのようであるべきですか?」。回答はそれぞれの市場によって異なるでしょう。タイの人々は、明確なメリットがあれば、データを共有することにも積極的です。しかし、オーストラリアや日本のような市場では、どんなデータがどんな理由で使われるのかについて、明確で分かりやすい説明が求められています。また、データのコントロールと同意についても求められます。これは、私たちがこの地域全体に期待する良好な傾向です。なぜなら、人々がデータを共有することに前向きであると同時に、何を共有しているのか、その見返りは何かを明確にすることを望むという、次のレベルにあると言えるからです。

現時点で、「準備完了(ready)」とはどのような状態を指すのでしょうか?

「準備完了」がどのような状態か、また準備するためにどのようなステップを踏めばいいのかは、市場ごとに異なります。ファーストパーティデータ戦略を強固に推進している市場もあるでしょう。彼らは、持続可能なソリューションを考え、より少ないコストでより多くのことができる方法、例えば機械学習や自動化などを検討し、すでに着手しています。その一方で、何かをしなければならないことは分かっていても、緊急性や次の段階を考えると、まだ先には進めていない市場もあります。そこで私たちは、彼らがエコシステムの中で試行錯誤し、持続的なソリューションを検討できるようにサポートしているのです。

即効性のある良い解決策はありますか?

特効薬はないでしょう。私もよく「何が正解なのですか?」と尋ねられますが、「いえ、正解はありません」と答えます。しかし、強固なファーストパーティデータ戦略のように、ユーザーに何を何のために収集しているのかを周知し、その上で構築される、同意ベースの優れたベストプラクティスはあります。マーケティング担当者は、プライバシーに配慮した方法で次の段階に進むために、何種類かの手段を試す必要があるでしょう。私は多くの市場で、さらに多くのことがなされる必要がある、との思いを強めています。

ブランドとマーケティング担当者は、将来に備えるために今何をすべきでしょうか?

現在、サードパーティのソリューションに依存している場合、それが今、どのような状況なのかを把握する必要があります。つまり、サードパーティCookieの影響を受けるような技術、例えば、リマーケティングなどを使用しているかどうかということです。グーグルの「プライバシーサンドボックス」で行われている作業は、そのための有効なユースケースを発展させていくことが目的です。企業が次の開発や投資を行う際には、持続可能なソリューションとはどんなものか、何を求めるべきなのかを問う必要があります。どうすれば優れたファーストパーティデータ戦略を構築できるでしょうか?それは決して、すべてのデータを集めるということではありません。まず、どのようなデータを、なぜ収集する必要があるのかを理解する必要があります。そして、プライバシーを重視した方法で明確な同意を得た上で、人々が選択肢とコントロールを確保し、同意を管理できるようにすること。そうした配慮と手続きが真に重要だと私は考えています。優れたファーストパーティデータ戦略を構築できれば、それが次のステップに進むための踏み台になるでしょう。AIや機械学習などを活用することで、より少ない労力でより多くのことができるようになります。ともあれ、ブランドは今すぐ最初の一歩を踏み出す必要があります。一朝一夕にファーストパーティデータ戦略を構築することはできません。

Topics」はソリューションになりますか?

Topicsは次の段階のものです。そして「興味/関心に基づく広告」に関するものです。Topicsは、Chromeが取り組んでいるサンドボックスプロジェクトからの提案であり、一般参加型のプロセスとなっています。つまり、興味/関心に基づく広告の、代替APIのあるべき姿についての、次の新たな提案となります。これは現在、初期トライアルの段階に移行しており、今後、世界中に展開される予定です。この件に関しては近くお知らせできる情報がありますが、今後Chromeでアップデートが行われる度に、順次発表されるでしょう。ただし、これは単独で使えるものではありません。興味/関心に基づく広告ではTopicsのAPIを用いますが、コンテキストなど他の広告情報も利用します。それらを組み合わせることで、プライバシーを重視、保護した方法で、優れたパーソナライゼーションを実現し、ユーザーには選択肢とコントロールを提供できるのです。なお、Topicsは現段階では、まだ単なる提案であり、将来、変更される可能性があることをお伝えしておきます。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

関連する記事

併せて読みたい

2022年9月23日

次のCMOは、チーフ・ミュージック・オフィサー?

最高音楽責任者が経営に参画するケースが増えている。ブランドがサウンドの戦略的重要性に気づき、投資に乗り出すという、最近の広範なトレンドを象徴しているのだろうか?

2022年9月23日

セマフォーが進めるデジタルニュースの「抜本改革」とは

グローバルニュースパブリッシャー、セマフォー(Semafor)でCEOを務めるジャスティン・スミス氏と、エグゼクティブエディターのジーナ・チュア氏が、報道の「再考」について語った。

2022年9月23日

「パタゴニア株譲渡」は、究極のブランドパーパスか?

先週、米アウトドア用品大手パタゴニアの創業者イボン・シュイナード氏が、同社の全株式を環境団体などに寄付したことを明らかにした。この大胆な決断は、他企業にとって社会貢献の手本となるのか。コミュニケーションの専門家たちに聞いた。

2022年9月23日

世界マーケティング短信:ショート動画の収益化、PRの気候変動への責任

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。