Maria Iu
2021年3月05日

コロナ禍よる景気後退の中、消費財大手のマーケティング投資は増加

ユニリーバ、クラフト・ハインツ、モンデリーズ、RB、P&G、ディアジオは、2020年、いずれもマーケティング投資を増加させた。

コロナ禍よる景気後退の中、消費財大手のマーケティング投資は増加

Campaignの分析によると、2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがあったにもかかわらず、FMCG(日用消費財)の世界的大手企業はマーケティングへの投資を増加させた。各社が発表した第4四半期の業績からは、より回復傾向が強まってきていることがうかがえる。

厳しいビジネス環境のなかで、ユニリーバ、クラフト・ハインツ、モンデリーズ・インターナショナル、レキットベンキーザー(Reckitt Benckiser:以下RB)はいずれも、広告・マーケティング費用を増加させた。

ユニリーバは2019年と比較して、為替変動の影響を除いた恒常為替レート(CER)で1.6億ユーロ(約206億円)の支出増となった。同社によると2019年の支出総額は72.7億ユーロ(約9,380億円)なので、2020年は約2%増えたことになる。

クラフト・ハインツの支出は、1億ドル(約107億円)増の12億ドル(約1,281億円)で約11%増となり、特に重要ブランドについては18%増加し、デジタルへの支出も40%増加したという。

モンデリーズは14%増の14億ドル(約1,494億円)で、RBは7%増の1.38億ポンド(約206億円)だった。

プロクター&ギャンブル(以下P&G)とディアジオは、6月に決算期を迎えるため、まだ通年の業績を発表していない。しかし両社とも、最新の業績発表ではマーケティング費の増加に言及している。

P&Gは2020年10~12月期の支出が7%増加した(純売上高に対する割合はわずかに減少)。ディアジオは2020年下半期の支出が1%増の11億ポンド(約1638億円)だった。同社によると、2020年4~6月期に支出を「大幅に削減」したが、これが以前の水準に戻ったのだと説明している。

他の業界を見てみても、ペプシコは、2020年の広告およびその他マーケティング活動への支出が46億ドル(約4909億円)だった。このうち広告費は30億ドル(約3,201億円)で、2019年とほぼ同等の規模だった。「我々は既存の大きなブランドをイノベーションし続けなければならない。しかし同時に、カテゴリーの成長分野への投資も必要であり、時には新しいブランドを立ち上げることも必要だ。そのためにはブランドを立ち上げて軌道に乗せるための、資金面での十分な支援策が必要だ」としており、マーケティングを重視していることは明らかだ。

同じく清涼飲料大手のコカ・コーラは、広告支出を2019年の43億ドル(約4,589億円)から削減したが、2020年の正確な数字については、次の年次報告が公表されるのを待たなければならない。

コカ・コーラは2020年4月、パンデミック第一波のピーク時にマーケティング支出をすべて停止した。会長兼最高経営責任者のジェームズ・クインシー(James Quincey)氏は第4四半期の決算発表で、「我々はマーケティングに投資する確かな理由がないのであれば(中略)投資はしないという決断を下した」と述べたものの、「2021年に回復が進むのにあわせて、支出は戻していくつもりだ」と付け加えている。

支出の最適化

とはいえ、マーケティング投資をより効果的に活用しなければならないという考えは広く支持されている。ペプシコとコカ・コーラは支出の「最適化」を重視する考えを強調しており、実際、コカ・コーラは、グローバルにおける広告で「プロセスの改善、重複の排除、効率の向上」を目指している。また、モンデリーズは「効率のよいメディア」に力を入れるとしており、RBは「効率のよいメディアと悪いメディアに対する支出の比率を見直そう」としている。

2020年まで投資銀行リベルム・キャピタル(Liberum Capital)に勤務していた独立系アナリストのイアン・ホイッタカー(Ian Whittaker)氏は、パンデミックの中で「消費者がより信頼できるブランドに移行するという心理要素は確かにある」としたうえで、「ほかには社会構造的な要素もある。モンデリーズは社会実態から見てニーズの低い「移動・出張費」や「オフィス投資」から広告投資に予算を移すことを明らかにした」と述べている。

「こうした要素が(パンデミック後に)変化する理由はないだろう。特にeコマースが成長し、消費者との直接的なつながりが重要性を増している中では。各グループが競合グループの支出に反応し、軍拡競争のような様相さえ呈している」(ホイッタカー氏)

これはおそらくエージェンシーにも影響を与えている。ダウゲート・キャピタル(Dowgate Capital)のエグゼクティブディレクター兼リサーチ担当責任者のポール・リチャーズ(Paul Richards)氏は、オムニコムは第4四半期の減収を報告しているものの、同グループの最大カテゴリーである食品・飲料は「持ちこたえた」と指摘する。

「ロックダウン中、外出できない消費者は、不景気時のように安価なプライベートブランドに乗り換えるのではなく、むしろ高級ブランドの商品を購入することや快適な食事を楽しむことにお金を使う傾向が高い」(リチャーズ氏)

マグナ(Magna)でグローバル市場情報担当のマネージャーを務めるミシェル・ボベー(Michelle Bovee)氏が見たところ、食品・飲料カテゴリー全体では、需要の高まりが広告支出の増加にはつながらず、美容カテゴリーも支出が落ち込んだ。その一方で、家庭用品やパーソナルケア用品については、「トップ・オブ・マインドを維持するための、ブランドの認知度向上キャンペーンの増加」により、テレビ広告への支出が増えたという。

2021年以降について、ホイッタカー氏は次のように述べている。「広告支出の見直しを唱えてきたP&Gが通年の売上高の見通しを2期連続で引き上げたことは注目に値する。蓄えた予算の再投資のタイミングでは、他社も追従するだろう」

全体的な広告市場について、ボベー氏は次のように語った。「今後について、CPG(消費財)部門では全般的に広告支出が緩やかに増えるだろうが、他のセクター(旅行を除く)では、期待される2桁成長を促すような「2020年回復」効果は、ほとんど、あるいはまったくないだろう」

リチャーズ氏の予測によれば、マーケターは「先ごろモンデリーズがS4キャピタル(S4 Capital)を指名したケースが示すように、デジタル主導でパーソナライズされた広告を大規模に展開し続ける」ことになるだろうという。

オーガニックグロースは好調

全般的に見ると、日用消費財大手の中では、四半期決算が最も好調だったRBが、LFLベースの売上高で10.2%増となり、記録的な年間決算となった。これは、新型コロナウイルス感染症によって清掃用品と健康製品の需要が急増した衛生用品部門の貢献によるところが大きい。

次はP&Gで、事業規模ではこちらがはるかに大きい(2020年第4四半期の純売上高は、P&Gの197億ドル[約2兆1,022億円]に対し、RBは36億ポンド[約5,361億円])。そのP&Gは、2021会計年度の第2四半期、売上高のオーガニックグロースは8%だった。

美容製品やグルーミング用品など多くの主要部門が1桁成長のなか、ヘルスケア部門は9%成長で、ファブリックおよびホームケア部門は12%もの成長だった。これはホームケア部門の売上が「約30%」向上したことによるものであり、P&Gはこれを「マーケティング支出の増加」によるものだとした。

ペプシコとユニリーバは、大きな比重を占める食品事業が業績の鍵を握った。

ペプシコは、発表によると第4四半期のオーガニックグロースが6%で、食品が最も大きな伸びを見せた。特にフリトレーには、「ブランド全体における広告とマーケティングの支出増」の恩恵があったとしている。

ユニリーバは同四半期のオーガニックグロースが3.5%だった。これは、家庭内食品の売上高が13%増加したことが大きかったが、衛生用品部門も11%の成長と好調で、手洗い石鹸ブランドのライフボーイも50%を超える成長を遂げた。

これらの企業は、第4四半期の成長率が年間の成長率を上回っており、これは2020年の終盤に消費者の信頼感が強まったことを示している。2020年通期の売上高のオーガニックグロースは、ペプシコが4%でユニリーバは1.9%だった。

一方で、年間成長率のほうが第4四半期を上回った企業もある。モンデリーズの発表によると、売上高のオーガニックグロースは2020年通期で3.7%、第4四半期では3.2%だった。

クラフト・ハインツも、2020年通期のオーガニックグロースが6.5%で、第4四半期の6%を上回った。同社はこれを、「食品サービスの減速が続いていること」と、マックカフェのライセンス契約が終了したことによるものだとしている。RBは2020年通期のオーガニックグロースが11.8%だった。

一方、飲料が主要事業であるコカ・コーラとディアジオは業績が悪化した。コカ・コーラは、四半期売上高のオーガニックグロースが3%のマイナスで、年間では9%ものマイナスだった。同社によると、自宅外での消費者の活動が減少したためだという。

ディアジオは、四半期ごとの数字を公表していないが、2020年7~12月期(2021会計年度の上半期)の決算では、オーガニックグロースが1%だった。店内消費と旅行者向け小売りで売り上げが伸び悩んだためだという。

 

小売業界全体の状況と同じく、eコマースはほとんどのFMCG企業で大きく成長した。ペプシコ(90%)、ユニリーバ(61%)、RB(56%)、クラフト・ハインツ(100%以上)と、2020年のeコマースについてはいずれも大幅な成長だと発表している。

しかし、eコマースが売り上げ全体に占める割合はまだ小さく、さらなる発展の余地があることがうかがえる。

P&Gでは、eコマースが第4四半期の2020年10~12月期に50%「近く」成長し、この四半期の同社の総売上高の14%を占めた。一方、コカ・コーラは、オンラインで直接注文できる「MyCoke」と、地域の店舗が地元住民からの注文を受けるアプリ「Wabi」について、広がりを見せているとしている。

ディアジオは、同社のアルコール飲料分野はほかの消費者向けカテゴリーと比較してeコマースの役割が小さいと指摘するが、成長はしており、特に米国と英国で大きく伸びているという。

 

Campaignの「Advertising Intelligence」のデータによると、FMCGセクターにおける2020年の新規広告取引請求額は、世界全体で30%減の145億ドル(約1兆5473億円)となっている。

但し、2020年は新規取引が抑えられていたことや、またFMCG企業が業績を伸ばしてマーケティングに投資を続けていることを勘案すれば、今後ワクチン接種の拡大に伴って経済の回復基調が強まり、消費者が「通常」に戻るならば、2021年はエージェンシーにも大きなチャンスがあるかもしれない。

実際、すでにユニリーバは世界全体でメディアレビューを開始する準備を進めており、これは2021年で最大のものになる見込みだ。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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