David Blecken
2018年11月20日

パーソナライゼーションへと歩み出す、日本の柔軟剤メーカー

ケーススタディ:ライオンが、アロマオイル配合の柔軟剤のプロモーションで、香りをパーソナライズ。個々人に合わせた、世界に一つだけの商品づくりも視野に入れる。

パーソナライゼーションへと歩み出す、日本の柔軟剤メーカー

ライオンは、服装やアクセサリーなどの色彩をもとに、オリジナルの香りと扇子を作成してプレゼントする企画を開催。同社の香りつき柔軟剤「ソフラン アロマリッチ」の、コモディティー(差別化が困難な日用品)からの脱却を図る。

柔軟剤をよりパーソナライズしていくことを視野に入れたキャンペーンが展開されたのは、暑さが厳しかった8月。企画したのは、AKQA東京オフィスだ。

ターゲットは30代女性で、全身写真をアップロードすると、ぴったりのアロマミストと扇子が抽選500名にプレゼントされるというもの。写真をもとに、服装や小物などの色を解析し、その人らしい柄や配色のオリジナル扇子が作成される仕組みだ。

解析された色彩は、香りにも反映されている。同社はキャンペーンに先立ち、香りによってどのような色を連想するか、使用者を対象にブラインドテスト(目隠しテスト)を実施。調査結果は、服装などの配色から「自分らしい香り」を導き出す際に活かされた。香りはアロマミストとしてプレゼントされ、これを扇子に吹きかければ、あおぐたびに好きな香りが楽しめるというもの。

プロジェクトを率いたAKQAのアソシエイト・クリエイティブ・ディレクター兼クリエイティブテクノロジスト、泉秀幸氏によると、当初の目標の倍近い、1万人もの応募があったという。

同時期に、表参道(港区)でも4日間のポップアップギャラリーも開催した。ライオンのコンサルタントが、その日の服装や気分に合わせた香りを提案。アロマミストと扇子は7分間で作られるが、最長2時間待ちと大盛況だったと泉氏は振り返る。合計1,500人が来場し、671本の扇子が作られた。(当初の目標は300本)。

キャンペーンによって売上にどの程度の影響があったのかは明かされなかったが、「コンバージョンを主眼に置いたものではなかった」と泉氏。ライオンが目指していたのはブランディングと知見の獲得であり、コンバージョンを主目的としたフォローアップ策を現在準備中だという。今回のキャンペーンで得られたデータは今後、柔軟剤のパーソナライゼーション版の開発に役立てていくとのことだ。

パーソナライゼーションは今まさに伸びているトレンドなのだとか。「製品がコモディティー化した業界はどこも、差別化に苦悩しています」と泉氏。「そのため多くのクライアントは、パーソナライズを何らかの形で実現したいと考えています。パーソナライズによって生活者を引きつけ、ブランドのファンになってもらうことができるためです。香りのパーソナライズに必要なデータが無かったため、信用できるデータを自ら集める必要がありました」

プロジェクト最大の難関は、扇子のカスタマイズに必要な出力機の準備だったという。制作はAKQAだが、知的財産権はライオンにある。キャンペーンの認知度を上げるため、ライオンは表参道に屋外広告を掲出。またインスタグラムのインフルエンサー6名の協力も得た。

ダウニー(P&G)など海外ブランドの健闘もあり、柔軟剤は競争が激しい市場だ。日本のメーカーはより特徴的な、持続する香りを重視するようになった。ライオンは以前、同社の柔軟剤2種類を3対1の比率で混ぜ合わせ、好みの香りを作ることも提案している。

同社は「柔軟剤を高度にパーソナライズすることに意欲的です」と泉氏。「そのためには、より多くのデータをいかに収集するか、そしてさまざまなテクノロジーをいかに活用するかが問われるでしょう」

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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