Anil Pandit
2021年10月01日

ファーストパーティデータをめぐる混沌に終止符を打つには

ファーストパーティデータをめぐる混乱のなか、いくつかの対策を講ずるべき時が来た。ピュブリシス・メディア・インディアのプログラマティック専門家は、今こそ「ゼロパーティ」データについて考えるべきだと言う。

ファーストパーティデータをめぐる混沌に終止符を打つには

「顧客中心主義」は常にマーケティングの要であり、今後もそれは変わらない。多くのブランドは、「顧客中心主義」は自社の事業プロセスや組織、ツール、アプローチ、企業文化などに深く組み込まれていると主張してきた。しかしCookieが崩壊し、デバイスがIDレスに向かうなかで、その主張と実態とのギャップが浮き彫りになってきた。多くのブランドが、顧客のファーストパーティデータ(FPD)が新たなデジタル時代の万能薬になると期待し、その収集に躍起になっている。しかし、こうした混沌とした状況においては、正しい方法論がなければならない。

顧客データとは、FPDや個人を特定できる情報(PII)だけを意味するものではない。また、PIIデータは、顧客を理解する手段にはなるが、データ自体が目的ではない。多くのブランドが、PIIデータを収集する方法や、さらには購入する方法さえも必死に探している。しかしこうした動きは、Cookieレス、デバイスIDレスの未来に備え、顧客中心主義に立ち返る手段としては、あまりに近視眼的かつ未熟で、その場しのぎの試みではないかと考える。

将来を見据える

「顧客を知る(Know your customers :KYC)」という言葉が、昨今、急に身近になったようだ。しかし同時に、顧客のプライバシーを尊重し、信頼を築くことこそが重要だ。なぜなら今日において、プライバシーはもはや特権ではなく、当然の権利だからだ。多くのブランドがKYCを急ぐあまり、顧客の信頼が低いサードパーティCookieに頼り過ぎた。その結果、デジタル広告のエコシステム全体がこれを中心に構築されてしまった。しかし、そうした時代は終わり、今はブランドにとっても顧客にとっても良い方向に向かいつつある。今後、ブランドにとっては、「本物」を手に入れることが重要な要素になるだろう。

Cookieは常に不安定で、透明性と永続性に欠け、相互運用性もなかった。慌てふためいてFPDを収集するよりも、Cookieへの依存から脱却し、顧客との直接的で本物の関係を構築すべきなのだ。また、デバイスIDにも依存しないようにと伝えたい。さもないと、同じ過ちを繰り返すことになるからだ。私見では、デバイスIDはプライバシーの点で問題があり、iOSのアップデートが示唆しているように、程なくCookieと同じ運命をたどるだろう。代わりに、今こそ「ゼロパーティデータ」の収集を始めるべきなのだ。

ゼロパーティデータ(ZPD)

ZPDとは、顧客自身が何らかの価値と引き換えに、自ら進んで共有する個人情報全般(欲求、嗜好、好き嫌いなど)のことを指す。また交換する価値は、当然、金銭的なものでも、金銭以外のメリットでも良い。こうしたZPDは、消費者に関するインサイトを豊かにし、製品やサービスの開発にも有用な情報をもたらす。私たちがこれから向かう世界は、消費者のプライバシーと同意によってけん引されることになる。パーソナライゼーションを行う上での、規模や関連性の濃淡は、同意を得られた顧客データの量と質によって決まるだろう。

ブランドは、ブランドコンテンツの制作予定を立てるのと同じように、価値交換プログラムの構築も始めるべきであり、それらのためにこそ投資すべきだ。ブランドは、顧客に対して責任を持ち、共感と信頼を築きながら、プライバシーを尊重した顧客中心主義のアプローチを取るべきなのだ。これを適切に行えば、有益なデータが自ずと入ってくるようになるだろう。

Cookieレスのスケジュールと準備

グーグルがサードパーティCookieの廃止時期を2023年まで延長すると発表したことで、エコシステム内のすべての企業にとっても(Cookieレスの状況に対応するための)準備期間が延長されたことになる。ただし、これで得られたのはつかの間の安堵にすぎない。いずれにしても、CookieとデバイスIDは刻一刻と廃止に向かっているのだから。

このCookieレスの未来への準備は、2つのクライアントのタイプによって、それぞれ異なったものとなる。第1のタイプは、これまでサードパーティデータに大きく依存していて、FPDの基盤を持たない事業者だ。これは主に日用消費財(FMCG)や消費財(CPG)のクライアントで、彼らは、価値交換プログラムを介してFPDを取得するプロセスに全面的に移行して、D2C(Direct-to-consumer)やeコマース、小売と、ロイヤルティプログラムとのバランスを見直す必要がある。 さらに重要なのは、アドテクとマーテクのスタックを再編成することだ。ただし、議論は始まっているものの、行動のペースはまだ頼りなく感じられる。

第2のタイプは、膨大な量のFPDを抱えているクライアントで、小売業者、D2Cブランド、eコマース企業、アプリ企業、金融機関などが該当する。これらの企業は、ユーザー同意の観点からFPDを見直すことが必要になる。すべてのFPDについて同意を監査し、データをプライバシーに適合したものにしなければならない。これにはまた、同意管理プラットフォームを導入して技術スタックを見直し、デバイスIDレスのオプションに対応するソリューションをテストし、リターゲティングとパーソナライゼーションを大規模に行えるようにする必要がある。このカテゴリーのクライアントは、全体的な状況についても深く理解しており、必要な機敏さを備えている可能性が高い。

広告主は、世界がCookieレスになるかどうかにかかわらず、ZPDとFPDに注力する必要がある。悲しいことだが、ほぼ20年を無駄に費やし、ようやく眠りから覚めたばかりという人がいることも事実だ。とはいえ、適切な顧客データ管理を今度こそ正しく実行するなら、まだ手遅れではない。

顧客を、携帯電話番号やメールアドレスで表すのはもう終わりにしよう。今すぐ、顧客に「こんにちは」と話しかけ、一人一人に寄り添った1対1の関係を築いていくべきなのだ。


アニル・パンディット氏は、インドのグルグラムに拠点を置くピュブリシス・メディア・インディアのプログラマティック担当シニアバイスプレジデント。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

関連する記事

併せて読みたい

9 時間前

スパイクスアジア2022、エントリー始まる

35回目を迎える「アジアのカンヌ」こと、スパイクスアジア。来年は「クリエイティブデータ」と「ソーシャル・アンド・インフルエンサー」の2部門を新設。タングラムスアワードはスパイクスアジアに統合され、「ストラテジー・アンド・エフェクティブネス(戦略と有効性)」として生まれ変わる。

3 日前

最先端D2Cブランドから学ぶべきこと

成功したD2C(Direct-to-Consumer)ブランドは、直販事業者だけにとどまらず、しばしば一般の消費者ブランドをもインスパイアするような、最先端のマーケティングを実践している。

3 日前

TikTokワールドへようこそ

私たちは10年以上前から、ソーシャルメディアが大きな影響力を持つ世界で暮らしている。だが、マーケターのゲームを一変させるTikTokのようなプラットフォームが現れることはめったにない。

3 日前

世界マーケティング短信:働き方の大転換

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。