Zac Martin
2025年4月03日

マーケティングで優先すべきは、正しいことよりも興味を引くこと

広告制作の際には、正しくあることよりも注目を集めることを優先すべきだ。たとえそれが一風変わった奇妙なものに感じられるとしても。TBWAメルボルンのザック・マーティン氏は、このように述べる。

写真:ザック・マーティン氏
写真:ザック・マーティン氏

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

1870年、リキュール「アンゴスチュラ・ビターズ(Angostura Bitters)」の開発者が亡くなり、その事業は息子たちに引き継がれた。兄弟の一人がラベルをデザインし、もう一人がボトルの作成を担当し、リブランディングを行った。すると彼らは互いに協力しなかったため、ボトルに対して大きすぎるラベルとなってしまった。

だが「ラベルをトレードマークにしてはどうか」と、賢明なアドバイスを与えた人がいた。

1世紀半が経ち、それは特徴的なブランド資産と呼ばれるようになった。彼らが「適切に」デザインした場合よりもはるかに興味を引く、価値のあるエラーだ。そして、今でもバーの棚で存在感を発揮している。

戦略家からすると矛盾しているように聞こえるかもしれないが、正しくあることよりも面白いことの方が良い。私たち面白いことよりも正しいことの追求に、あまりにも多くの労力を費やしている。その結果は、退屈だ。そして私たちの仕事は、退屈ではない広告を作ること、つまり退屈とは反対のものを作ることなのだ。

戦略的に正しくても面白くない広告は無視され、忘れ去られてしまう。1870年代とは異なり、今では何十年にもわたるマーケティング科学の蓄積がある。これが最も効果的な方法ではないことは明らかだ。注目を集め、名声を求め、記憶に残ること――これほど明確な原則はないだろう。そして慣習を理解した上で、それを打ち破るのだ。

退屈な広告は、面白い広告と同じ結果を出すには6.1倍のメディア費を投じなければならないと、システムワン・グループ(System1 Group)の2023年のレポート『The Extraordinary Cost of Dull』は指摘する。これは、「正しくない」広告に出資する理由として、CFOさえも納得するほど説得力のある理由だろう。

マーケターが平凡な選択をしてしまった最近の失敗例を、以下にご紹介する。まず挙げたいのが、ロゴの没個性化だ。モバイル画面で読みやすくするために、テクノロジー業界、自動車業界、ファッション業界のロゴが独自性を失っている。

二つ目は、ライルズ(Lyle’s)のゴールデンシロップ。世界で最も長く変わらないブランドだったが、140年を経て、腐りかけたライオンの死骸を描いたロゴを現代的なもの(つまり、他社と同じようなもの)へと変わった。

三つ目は、シドニー港にあるこの建物。

これは最近のものでも、実在するものでもない。デザインコンペの審査員たちが無難な案を選んでいたら、シドニー・オペラハウスはこのような姿になっていたかもしれないという画像だ。しかし審査員は、当時多くの批判を浴びながらも斬新なデザインを採用し、その名を世界に知らしめた。

いわゆる「正しい」とされる決定は、つまらない結果につながる。その結果、ブランドはより無視されやすく、忘れられやすくなる。

そのことを、デイビッド・オグルヴィは理解していた。ハサウェイ・シャツ(Hathaway Shirts)の広告を撮影する際、彼はモデルに眼帯を付けてもらった。そこには何の理由も、説明も無い。単に、眼帯が無いよりも有る方が興味を引くからだ。

同様に、ベアーズ・ミーツ・イーグル・オン・ファイア(Bears Meets Eagle on Fire)とプラス61(+61)が手掛けたテルストラ(Telstra)の最近のキャンペーン「Better On a Better Network」は、少し荒削りで、このブランドが長年築き上げてきたイメージとは全く一致していない。 だがそれが、このキャンペーンが非常に優れている理由なのかもしれない。

現実の世界では、人々はあなたのブランドや広告など気にも留めない。正確さだけでは、魅力は生まれないのだ。

もちろん、注意点もいくつかある。完全に間違っていることはできない。しかし、正しいことの反対は間違っていることではなく、正しさの度合いが低いことだ。また、単に攻撃的なだけの広告にする必要もない。TBWAでは「破壊(destruction)ではなく混乱(disruption)を」と言っている。

私たちの業界では、多少正しくない状態でも差し支えない。時には常軌を逸しても、それが戦略的でブランドにふさわしいものであれば構わない。しかし、退屈で「正しい」広告と、完璧ではないが興味を引く広告のどちらかを選ばなければならないとしたら、私は常に後者を選ぶ。

両方を達成できる場合もあるだろう。しかし私たちは往々にして、一方を他方と引き換えに、しかも間違った方法で引き換えにしてしまう。だから、ブランドに面白さを注入しよう。嬉しい偶然を逃さないように、あるいは、自ら創出しよう。たとえ普通ではないように感じたとしても、あるいはそう感じたのであればなおのこと、少しだけ奇妙なことをしよう。


ザック・マーティン氏は、TBWAメルボルンのプランニングディレクター。

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