Ryoko Tasaki
2021年9月24日

世界マーケティング短信:大胆なアイデアで、気づきから行動へ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:大胆なアイデアで、気づきから行動へ

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
 

今するべきことを、付箋紙で目立つところへ

国連が2015年に採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」は、「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「気候変動に具体的な対策を」といった17の目標を、2030年までに達成すべきものとして掲げる。だがCOVID-19の拡大によって取り組みが停滞するなど、達成に向けた具体的な行動がますます重要になってきている。

そこでカーマラマ(Karmarama)と非営利団体「プロジェクト・エブリワン(Project Everyone)」は9月20~26日のグローバル・ゴール・ウィークに合わせ、「世界のToDoリスト」というキャンペーンを展開。タスクを付箋紙に書いて目立つところに貼るように、SDGsで取り組むべきことが書かれた巨大な付箋紙をビル壁面に貼った動画を公開した。

この企画を支援するグーグルやユニリーバ、マーズ、ディアジオなどは、付箋紙を用いたビジュアルをウェブサイトやSNS、社屋、配送車などに掲出して認知促進を図る他、SDGs達成に向けた具体策を挙げ、組織内で積極的に取り組んでいく。カーマラマのベン・ビルボウルCEOは次のようにコメントする。「我々に残された時間は、無くなりつつあります。2030年までに達成するには、議論を行動へと移さねばならず、企業の参加も必須。『世界のToDoリスト』は地球を守るために誰でも支持でき、ビジネスの力を活かせるシンプルなアイデアなのです」

 

食品廃棄物と飢餓、キャンペーン第2弾はごみ箱や収集車で訴求

街角のごみ箱や収集車、ごみ袋に貼られているのは、米国の栄養成分表(nutrition facts)と似た体裁のラベル。そこに示されるのは、ニューヨーク州の廃棄物全体のうち18%が食品であること、そして米国の子どもの6人に1人が十分な食料を手に入れられないというデータだ。

これは食品大手ドールが、9月の飢餓撲滅月間に合わせて展開したキャンペーンだ。グローバル担当マーケティング責任者のルペン・デサイ氏は「持てる者が食品の1/3を無駄にする一方で、持たざる者は食料不安や飢餓に苦しんでいます。世界中で認識を十分に高め、対話や行動を生み出すことが最終目標です」とコメント。制作に携わったL&C NYCの共同創立者兼チーフ・クリエイティブ・オフィサー、ジャン・カルロ・ランフランコ氏はCampaignに対し「ごみを目の前に、人々に立ち止まって考えてもらう。メッセージを載せるのに最適な場所だと考えました」と語る。

なお、今年2月に実施された第一弾では、同様のラベルが建物の壁面に投影された。

 

オンラインとオフライン、ハイブリッド型のイベントスペース

モメンタム・ワールドワイドは、イベントを対面式とオンラインのハイブリッドで開催できるプラットフォーム「ホワイトボックス(WhiteBox)」を作成した。昨年6月に発表した「モメンタムVXi」を基盤としており、「3D環境を構築するたびに巨額の投資費用が発生しないよう、簡単に変えて使えるものをVXi技術で作りました」と、モメンタム・ワールドワイドのクリス・ウェイルCEOはCampaignに語った。既にジョンソン&ジョンソンやアメリカン・エキスプレスがバーチャルカンファレンスを開催している。

今後は対面式とオンラインで併用できるアバターの開発も計画している。「アバターをリアルライフに組み込んでいくことが、次の段階となるでしょう」とウェイル氏。「カクテルパーティーが開かれる休憩スペースに、アバターのための場も用意し、そこに歩み寄っていけるような場を作れないかと、今取り組んでいるところです」

 

ワクチン接種に反対する葬儀屋の広告、実は接種を後押し

COVID-19のワクチン接種をめぐり推進派と反対派の対立が深まる中、「ワクチンを接種するな」と書かれたトラック広告が米ノースカロライナ州シャーロットのスタジアム周辺で目撃され、SNS上で話題になった。広告主は「ウィルモア葬儀場」とある。

だがウェブサイトを訪れてみると、表示されるのは「ワクチンを接種しよう」、そして「もし接種しないならば、近いうちにお目にかかりましょう」というメッセージ。クリックして進むと、医療センターのワクチンに関する情報サイトへと移動する。このキャンペーンを誰が企画したのかは不明(広告の下部にある電話番号は、屋外広告を扱う広告会社のもの)。


「ワクチン反対派をターゲットに設定して興味や関心を喚起し、ウェブサイトを訪れてもらう。それができれば、おそらく彼らが目にすることが無かったであろう情報に触れ、視点を変えてもらうことにつながります」と、CMIメディアグループの検索メディア&新興メディア担当シニア・バイス・プレジデント、アンドリュー・ミラー氏は語る。「オーディエンスを見つけてくるのは必ずしも簡単なことではないので、このように衝撃的で目を引く事例には刺激を受けます」

ただ一方で、多くの人が亡くなった非常にデリケートな話題であり、「クレバーなアイデアかもしれないが、面白いというものでは全くない」と付け加える。「これは一部の企業やブランドが、メッセージを伝えようとする際に進んでとるリスクといえます」

 

製品の手入れをサボった人にプレゼントを贈呈

ひと夏(あるいはそれ以上の期間)酷使し続けた空気清浄機は、フィルターを掃除する必要がある。分かっていてもつい怠けてしまうこの手入れを呼びかけるべく、シャープはホコリが溜まった製品背面の写真を募る「お掃除おサボリ王決定戦」をツイッター上で展開。条件は、同社の空気清浄機を使用していることで、上位5名には機種に対応したフィルターが3年分贈られる。


すると、「思わず『おっふ』と声が出ました」「見せていいものでしょうか……」とコメントの添えられたホコリだらけの写真や、逆に「思ったより綺麗だった」「しまった!こまめに掃除してしまった!」と残念がる人も。寄せられた投稿に対して公式アカウントも「これはなかなか」「これはむしろキレイ」「この企画においてはまだまだひよっこですね」とユニークに返し、製品の不調を訴える人には参考になるサイトを紹介している。

なお、「言うまでもありませんが」と前置きした上で「こういう風にお掃除してください」と掃除機で吸う写真、さらに手入れ方法が詳しく紹介されたサイトへのリンクも添えられている。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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