David Blecken
2019年3月19日

「地球へようこそ」 無名航空会社の奇抜なCF

航空会社の広告が退屈である必要はない。ロシアの無名企業がユニークなキャンペーンを公開した。

「地球へようこそ」 無名航空会社の奇抜なCF

「クオリティーの高さ」という点で、ロシアの航空会社は決して人々の話題に上らないかもしれない。だが少なくとも、上質のエンターテインメントを提供しようという意欲に溢れる会社がある。

S7航空(別名・PJSCシベリア航空)が発表したCFシリーズは、何とET(地球外生物)に地球の魅力をアピールするというテーマ。「Visit Earth」と銘打ち、「初の異星人向け旅行動画、初の宇宙向けシリーズ」という触れ込みだ。

このCFは昨年初めてロシア語で制作され、現在は6本の英語版シリーズ(1本の長さは12分)が公開されている(そのうち2本は日本語字幕付き)。それぞれの作品でフィーチュアされるのは自然(下記URL)やアートスポーツ食べ物パーティーといった「人間」が興味を抱く主な分野。ロシア、アイスランド、イタリア、タイ、日本が撮影地として選ばれている。

制作はワイデン+ケネディ アムステルダムで、監督したのは東京在住のマッケンジー ・シェパード氏。これまで約2400万回のPV(ページビュー)数を記録した。

S7のユーチューブチャンネルで公開されているこれらコンテンツには、はっきりとしたブランディングが施されていない。「S7が望んだのは前例のないようなCF。コンセプトは『各地を題材に面白いものを作る』という実にシンプルなものでした」と、日本育ちのカナダ人シェパード氏。

スケールの大きなことをやりたいというS7の要望を聞き、「他のクライアントよりもっと自由に映像を作れることを期待した」。結果的に「何よりもクリエイティブを優先でき、ブランディングをまったく意識しないでよかったのが鍵になりました。制作中に言われたのは、『奇抜なものにしてくれ』のひと言だけ。私に全幅の信頼を置いてくれたおかげで、全ての面で良い結果が出せた」。

こうした制作手法はクリエイティブにとって満足のいく結果となっても、見る側にはアピールしないということが往々にしてある。だが視聴者がこれまでに示した高いエンゲージメントは、クリエイティビティーと宣伝効果が両立したことを表す。

各話を12分とした理由については、「ストーリーテリングには10分ほどの長さが最適」。「いま主流のエンターテインメントコンテンツは、コマーシャルの挿入で多くが冗長になっている。もっと煮詰めて短くするべきでしょう」。

「視聴者は、フォーマットがなぜそのようになったかという制作側の都合を知る由もない。15〜20秒の広告も同じこと。50〜100万ドルの予算を注ぎ込むのであれば、視聴者に敬意を払うためにも壮大なスケールのものを作って広く公開すべきでしょう。制作側の仕事は増えるかもしれませんが、スタッフは誰もが『なぜこの長さで作っているのか』という意識を持つべきです」

Campaignの視点:
万人受けを狙う大概の航空会社のCFに比べ、このシリーズは間違いなくオリジナリティーとユーモアのセンスに溢れている。ただし誰もが楽しめるものではなく、また最後まで見る忍耐を持ち合わせているかどうかは疑問だ。それでも、この作品を気に入る視聴者にとっては長く記憶に残るものになろう。ただ、S7というブランドも記憶に止めるか、また旅行の際に同社のフライトを選ぶかどうかということは別問題だ。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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