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電通グループ、海外事業の売却を検討
電通グループが海外事業の売却を検討していると、8月末にフィナンシャル・タイムズ紙が報じた。複数の関係筋の話では、同社が少数株の売却から海外事業の撤退まで複数の選択肢を検討しており、三菱UFJモルガン・スタンレー証券と野村證券を通じて売却候補先を打診。年末までに具体的な計画を策定する意向だという。
同社は2012年に英広告大手のイージス・グループ(Aegis Group)を買収し、海外事業を拡大、2020年に名称からイージスを外した。2016年には米マークル・グループ(Merkle Group)も傘下に収めている。
報道を受けて、電通グループの代表執行役社長 グローバルCEOである五十嵐博氏は社内宛ての文書で「憶測は飛び交っていますが、決定した事実はまだありません」と伝え、今後決定した場合には速やかに知らせるとした。
「当社の最優先事項は、グループ全体を成長軌道に戻すこと」であり、収益性の回復には単年でのコスト管理以上のことを要し、「業績不振な事業の見直しや、事業基盤の再構築など、難しい決断を伴う」とも記している。
「当社は海外事業の自力での再建を目指していますが、根本的な再構築には大胆な措置が必要。その一環として、第三者との包括的かつ戦略的な提携を含むあらゆる選択肢を検討しています」。
五十嵐氏はCampaign Asia-Pacificが2023年に実施したインタビューで「売却は全く考えたことがないし、今も考えてはいない。ひとえにOne Dentsuの推進に注力しています」と答えていた。だが「事業の大規模化は最終目標ではありません。追求するのはあくまでもクライアント・ファーストの姿勢。弊社の規模が自然と大きくなり、その上で商談が成立するのであれば、そういうことも起こり得るかもしれません」と、可能性を完全には否定していなかった。
そして先月行われた決算発表では、同社の海外事業の業績が大変厳しいことが明らかに。質疑応答で他社に売却する可能性をアナリストから質問された際にも、五十嵐氏は「現時点での決定事項はない」と回答している。
グーグルのChrome売却は不要 米連邦地裁
米連邦地方裁判所が、米グーグル(Google)による独占状態の是正措置としてChrome(ブラウザ)やAndroid(OS)の売却を求めた米司法省の要求を退けた。検索データの一部を競合他社と共有するよう同社に命じたが、事業の分割は回避した。この裁判は2020年10月に司法省などが提起したもので、昨年8月には反トラスト法(独占禁止法)違反の判決が下されている。
一方、欧州では自社の広告サービスを優遇しているという欧州出版社評議会からの申し立てによって調査が進められ、2023年には欧州委員会が同社を提訴していた。関係筋によると、今後数週以内に少額の制裁金を科せられる見込みだという。
同社にはこれまでも、自社アプリに対する不当な優位性に対して43億ユーロ、商品比較サービスの優先的表示に対して24.2億ユーロ、オンライン検索広告事業の優位性に対して14.9億ユーロと巨額の制裁金が課されてきた。
(文:田崎亮子)