Meghan Barstow
2024年4月24日

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

費用の高騰や建設の遅れ、人手不足 −− 2025年大阪・関西万博の課題は枚挙にいとまがない。開催まで1年を切ったが、日本のメディアは今も万博に対して懐疑的な報道を続ける。

開催延期や中止を求める識者は少なくなく、加えて万博のための政府資金を能登半島地震の救援・復興に振り向けるべきだという意見も。さらには、大阪府が運営する高齢者向け生成AIチャットボット「大(だい)ちゃん」が、誤って万博の中止を認めるような発言をする珍事まで起きる始末。この話題は即座にメディアやSNSによって拡散された。

しかし岸田首相は、万博を予定通り成功させることに政権の命運を賭ける。日本政府・関係機関の総力をあげて、大阪万博は確実に、予定された2025年4月13日に開幕する。

地政学的テーマも見落とせない。日本政府は万博を、ポストコロナにおける国際社会との再交流の手段と位置付ける。国際社会の緊密化を図るアジアにおけるグローバルイベントで、日本はホスト国として中心的役割を果たすことに意欲的だ。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東における戦争の勃発で、国際協調の必要性はかつて以上に高まっている。

最新情報によると、3月中旬までに万博に参加表明をしたのは161の国や地域と、9つの国際機関(EUや国連など)。出足は鈍かったが、現時点で撤退を発表したのはロシアだけだ。

様々な課題を抱えつつ開催される大阪万博。こうした状況でも、他国やグローバルブランドが参加すべき理由を5つ挙げてみたい。

       1.「世界トップ20」の大経済圏で、ビジネスコネクションを

まず、参加によって受ける大きな恩恵を挙げたい。大阪・京都・神戸を中心とする関西地方は日本の巨大な産業基盤の中心地だ。関西地方を国に例えると、経済規模は世界のトップ20に匹敵し、オランダやスイスとほぼ同等。任天堂やパナソニックは関西を拠点とする日本のトップブランドであり、ネスレやP&G、イーライリリー(医薬品)など世界的規模の多国籍企業もこの地域に日本の本社を置く。万博会場には50以上の日本のトップブランドがスポンサー契約を結ぶ、企業パビリオンのエリアが設けられることも見逃せない。

参加計画を立てる際には、この重要な経済拠点で新しい有益なコネクションをつくれる可能性を考慮すべきだ。これら国内外のプレーヤーと協働することは、市場に対して真剣に取り組んでいることを表す明確なメッセージになろう。

  1. 政府との有益な関係性の構築

「地方創生」は日本政府の継続的政策の要であり、政党間で明確なコンセンサスが得られている数少ないものの1つだ。政府は人材や投資を首都圏から関西など他地域に振り分けている。万博を東京や隣接する横浜ではなく、大阪で開催することはこうした政策が実行されていることの証だ。

ゆえに大阪万博への参加は国策の重要な目標と合致し、首相官邸から関西の市議会に至るまで、日本の行政機関に影響力を行使できる貴重な機会となる。

あわせて万博は、国や企業にとって下記の3点を喚起する強力なプラットフォームになり得ると弊社では考える。

  1. 日本人観光客の誘致

日本へのインバウンド観光が活況を呈し、すでにコロナ前の水準を超える回復を示している一方、日本人によるアウトバウンド観光の回復ははるかに遅い。日本政府観光局によると、2023年の日本人観光客のアウトバウンドはコロナ前、2019年の水準のわずか半分ほどだ。

日本人旅行者は海外旅行におけるリスクを嫌う。大阪万博のパビリオンは予想される2800万人の来場者(主催者発表)に対し、あなたの国が安全な目的地であることをPRする絶好のプラットフォームとなる。記憶に残るパビリオンの出展は、潜在的な旅行客にあなたの国を訪れたいと思わせる重要な機会になるのだ。

「海外に行くにはお金がかかるが、万博ではパスポートなしで世界を知ることができる」。日本国際博覧会協会の石毛博行事務局長は朝日新聞にこう述べている。

逆に言うなら、もし参加しなければ、数十億ドル規模の市場と渡航先で1人当たり平均1,500ドル以上を支出する日本人観光客を、競合国に譲り渡すことになる。

  1. 留学生の促進

昨年、日本政府はインバウンド、アウトバウンド双方の留学生に関する野心的目標を発表した。コロナ禍以前に海外で学んだ日本人留学生は22万人。政府はその倍以上に当たる50万人を送り出す意向を示しており、日本の大学もより多くの留学生や交換留学プログラムの誘致に力を入れる。

その一環として、文部科学省は令和6年度予算で114億円の留学生支援制度を打ち出した。こうした留学プログラムの促進も、大阪万博のパビリオンにおける重要な役割の1つだ。

  1. 投資の促進

企業ブランドにとって最大の魅力は、おそらく潜在的な投資機会だろう。相対的に低いベースではあるものの、インバウンドとアウトバウンド双方の投資は勢いを増している。

昨年、政府は対日直接投資 (FDI) の目標額を大幅に引き上げ、2030年までに100兆円 (約6743億ドル) にするとした。確かにこの野心的目標は、昨年の270兆円に及ぶアウトバウンド投資 −− インバウンド投資の5倍以上 −− に比べれば小さい。しかしこの額は2022年のFDI総額の倍以上であり、以前の目標より25%も高い。投資機会はかつてないほど大きいのだ。大阪万博は国や企業が結集する世界最大規模の場となる。日本は国をあげて壮大な舞台を設置しようとしている。

大阪万博で独自性を発揮するには入念な計画と投資、さらに幅広いステークホルダーへの賢明かつ効果的なコミュニケーション戦略が必要だ。国家や多国籍企業にとって、大阪万博はまたとない好機となる。用意周到に計画を練り、最大限の活用をしてもらいたいと切に願う。


メイゲン・バーストウ氏は、エデルマン・ジャパン代表取締役社長を務める。Profile photo of Meghan Barstow

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