Alison Kanski
2020年6月17日

広告界の黒人スタッフ、改革を要求

ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動には多くの広告エージェンシーが賛同した。だが、米国広告界の黒人従業員たちは「偽善だ」と批判する。

広告界の黒人スタッフ、改革を要求

米国の200社以上のエージェンシーに勤務する黒人従業員たちが、業界のダイバーシティ(多様性)や包摂性の向上、賃金の平等などを求める嘆願書を公表した。

「我々の日々の経験からすれば、BLM運動への連帯を示した業界のメッセージは単なる見せかけ」。こう唱える嘆願書には、若手クリエイターから幹部クラスまで600人余りの署名が記されている。

米・ミネアポリスでジョージ・フロイド氏が白人警官によって暴行され、死亡した事件をきっかけに起きたBLM運動。これを受けて米国の多くのエージェンシーは共同声明を発表、黒人従業員のための社内フォーラムやプログラムの設置、寄付などを行った。

だが嘆願書は、「クリエイティブプロセスにおける黒人従業員の意見の反映や上級管理職への重用といった課題は、ほとんど改善されていない」と批判。「広告界における『メンズクラブ』的体質が女性や黒人のキャリアアップ、自己表現を妨げている」。

「広告エージェンシーは米国で最も進歩的なビジネスリーダーを複数輩出しているが、業界内に蔓延する人種差別主義と不平等に対しては盲目だった。この問題に関してはこれまで多くの論説やコラムが発表されたが、具体策は何ら実行されなかった」「嘆願書に署名した我々は、直接行動で是正を要求する。変革を訴えてきた女性やノンバイナル(第3の性を持つ者)、LGBTQ+、障がい者、そして他の有色人種の仲間たちと連帯し、立ち上がるものである」

グループは米国の広告エージェンシーに対し、12項目に及ぶ人種差別主義への対策を要求した。

  • あらゆるレベル、特に上級管理職における黒人の登用を促す明確かつ公的な誓約を行い、その監査を定期的に実施する。
  • 自社及び業界への説明責任を果たすため、全従業員の多様性に関するデータを記録し、毎年公表する。
  • 労働環境の公平性、従業員のバックグラウンドや考え方の多様性を包摂するため、企業方針・文化の監査を行う。
  • 従業員並びにすべての管理職に対し、バイアストレーニング(偏見を除去する学習)を実施する。
  • 大学やアートスクールにおける多様性を促進するため、支援活動を拡充する。
  • 従来型の広告業界向け教育を受けなかった業界志望者に対し、研修と実習を拡充する。
  • 黒人のための従業員リソースグループ(ERGs)の設立と資金提供、支援を行う。
  • 黒人向けのメンターシップ、スポンサーシップ等のキャリア開発プログラム(CDP)や管理者教育に投資する。
  • すべての管理職に、社内における多様性と包摂性を向上させる取り組みへの積極的関与を求め、良い結果を出した者には報酬を与える。
  • 黒人と有色人種で構成された、多様性・包摂性を向上させるための委員会を設立し、その進捗状況を監査する。
  • ステレオタイプ的なクリエイティブワークの蔓延や、侮辱的ないし文化的配慮に欠けたクリエイティブワークの制作を防ぐため、多様性に関するパネルを設置する。
  • 黒人及び有色人種の男女が公正な支払いを受けるよう、賃金の平等を実現する。

この嘆願書に署名した人々が所属するPR会社はバーソン・コーン&ウルフ(BCW)、デブリースグローバル、エデルマン、ゴリン(Golin)、ヒル アンド ノウルトン ストラテジーズ、ICFネクスト、ケッチャム(Ketchum)、マリア・メア・コミュニケーションズ、MSL、ウェーバー・シャンドウィックなど。

またデジタスヘルス、ハバス・ヘルス&ユー、GSW、クリックヘルス、マッキャンヘルス、レイザーフィッシュヘルス、TBWA\ワールドヘルス、サーチ アンド サーチ ウェルネス、ワンダーマン・トンプソン・ヘルスといった大手ヘルスケア専門広告エージェンシーの従業員たちも参加している。

(文:アリソン・カンスキー 翻訳・編集:水野龍哉)

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