David Blecken
2019年3月06日

日本では未だに曖昧な、「ジェンダー平等」という概念

ジェンダーのバランスがとれた職場を、なぜ実現しなくてはならないのか。その意義を理解しない人が非常に多いことが、マッキャン・ワールドグループの調査で明らかに。

日本では未だに曖昧な、「ジェンダー平等」という概念

職場のジェンダー平等を推進する目的や利点が十分理解されておらず、このことが日本での格差是正を阻害していると、マッキャン・ワールドグループの調査は示唆している。

調査対象2,000名のうち、日本の職場環境は男女平等であると考えているのはわずか22%。だが、自分の職場は平等であると考えている割合は、38%にまで増えた。

とはいえ、ジェンダーの平等を重要視しているのは、全体の54%にとどまった。29%が「重要だと思わない」、17%が「分からない」と回答。また「ジェンダー平等による恩恵を受けるのは誰か?」との質問に対し、30%が「誰も受けない」と回答している。

独身女性の64%が「重要だと思う」と回答した一方で、そのように回答した独身男性はわずか42%であった。また、「ジェンダー格差」について話しづらいと感じている人は多く、女性の64%、男性の61%がこのテーマについて話したくないと答えている。

男性と女性のどちらもが、性別に基づいて評価されることを好んでいないことも明らかになった。男性上司からのジェンダーバイアス(性差による偏見)を経験した女性は71%。だが72%が、それに対して何らかの行動に移せなかったという。

男性上司からのジェンダーバイアスの経験があった男性は59%だが、女性上司からの偏見を感じたことのある男性は20%であった。

調査結果を発表したマッキャンのプランニングディレクター、松本順氏によると、調査実施前は「ジェンダーの問題について、それほど関心がなかった」が、調査を経て、今は興味を持つようになった。「予想外の発見が数多くありました」

この調査はまた、子どもが生まれた後の職場復帰時に直面するさまざまな課題についてもスポットを当てている。ある回答者は、子どもが幼いうちは「仕事をペースダウンして」、子どもが育ってきたら「第一線に戻る」のが理想だが、「それが可能なのか分からない」と不安を見せたという。

社員は「自分らしさやライフステージに合わせた、多様な方法で」働きたいと考えている。企業は性別に関係なく、もっと柔軟な働き方を社員に提供するべきだと松本氏は話す。

ジェンダーの平等は女性だけでなく、すべての人に影響を与えることを認識することが重要だ、と松本氏。調査発表に先立ち、「男女の雇用格差解消により日本のGDPは13%近く増加する可能性がある」とするゴールドマン・サックスの提言を紹介した。また、メディアの中で描かれるジェンダーは時代遅れだと感じている人が5割もいることに触れ、「ブランドは、人々の考え方を変える重要な役割を担っている」とも。

広告主へのアドバイスとして、松本氏は以下を挙げる。

  • 女性を登場させる際には自立した女性像か、男性と協力し合う女性像とすること
  • 可能であれば男女両方に語り掛けること
  • ジェンダー関連のテーマを扱う際にはネガティブになりすぎたり、深刻になりすぎないようにすること
  • 過去への批判よりも、未来に焦点を当てたものにすること
  • ある集団と別の集団とを対抗させないこと
  • 説教くさくならず、「ともに気付き、考えよう」という姿勢であること

調査発表に引き続き、パネルディスカッションが実施された。登壇したRIZAPグループ取締役の松本晃氏は、ジェンダー平等の推進者として有名だが、「経営トップは果たして、ダイバーシティー(多様性)に関心を持っているのでしょうか?」と格差是正を望む者たちに厳しい現実を突きつける。「おそらく関心はあるでしょう。でも優先順位は非常に低い。彼らの最優先事項は経営パフォーマンス。週末のゴルフや、銀座のクラブに行くことなどが、それに続きます。ダイバーシティーは経営パフォーマンスと同じくらいに優先されるべき事項ですが、推進していくためには政府の改革と共に行うべき。誰もが改革について語っているのに、うまくいかないのは、手を携えて動いていないからです」

また日本は戦後のマインドセットに固執しており、企業の就労形態は融通が利かず、女性が能力を発揮しにくい環境になっているという。「労働時間は週何時間、といった考え方が良いとは思いません」と松本氏。「時間でなく、パフォーマンスによって仕事をするべきです。職務を遂行すれば、どこでどのように働いても構わないはず。女性の幹部を何人に増やすか、というだけの議論ではありません。我々の働き方を、変革する必要があるのです」

また、若手は経営層にプレッシャーをかけるよう促す。「経営層が明確なビジョンやプランを考えてコミットするよう、(若手が)一丸となって働きかけなければなりません。多くの人はただ文句を言うだけですが、団結しなければ何も変わりません。このような状況を変える気があるか、経営層に突きつけるのです。もし変わりそうになければ、会社を辞める。そんな会社は将来的にうまくことはないでしょうから」

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

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