Ryoko Tasaki
2023年5月26日

世界マーケティング短信:メタに巨額の制裁金

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:メタに巨額の制裁金

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
 

12億ユーロと過去最大規模の制裁金を科されたメタ

アイルランドのデータ保護委員会(DPC)は、フェイスブックを運営する米メタ社(Meta)が欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)に違反したとして、12億ユーロの制裁金を科すと発表した。EUから米国への個人データ移管を5カ月以内に停止することも併せて求めた。

これに対しメタ社はブログで「正当性を欠く決定であり、EUと米国の間でデータ転送を行う数多くの企業にとって危険な前例となる」と反論。「データへのアクセスに関する米国政府の規制と欧州のプライバシーの権利には根本的な矛盾があり、政策立案者には夏までにこの問題の解決を期待したい」と述べ、巨額な制裁金は「不当かつ不必要」であり、不服を申し立てるという。併せて、欧州でのフェイスブック事業に直ちに影響は出ないことも表明した。
 

米ビオレ、銃撃事件に言及したインフルエンサーの投稿が炎上

花王のスキンケアブランド「ビオレ」は米国で、メンタルヘルスへの支援を続けてきた。今年も5月のメンタルヘルス月間に合わせ、不安や抑うつなどを経験したソーシャルメディアのインフルエンサーと共に、偏見をなくす活動に取り組む。

だが、起用されたインフルエンサーの一人が動画内で、自身の通うミシガン州立大学で今年2月に起きた銃撃事件に居合わせたことに言及した。銃撃事件や、大学卒業後の進路が決まっていないことなどへの不満を述べた直後に、唐突に鼻用パックを紹介し、「毛穴に詰まっているものだけでなく、心の中にあるものをすべて取り除いてもらえれば」とコメント。銃撃を目の前で見たことの影響に最近苦しんでいると語り、このキャンペーンへの参加を呼び掛けた。

すると動画を視聴した人々の間で、銃撃事件の話題をスキンケア製品のプロモーションに用いることを疑問視する声が上がった。インフルエンサー本人は、投稿は不安との闘いについて認識を広めるために行ったもので、不安を解消するための製品として紹介する意図は無かったという説明と謝罪を掲載した。

米ビオレも公式アカウントに、謝罪文を掲載した。最も重要度が高いことの一つがメンタルヘルスだという消費者からの声を受け、有意義なサポートを提供することを大切にしてきたが、「今回はそれを間違った方法で行ってしまいました。信じがたいほどの深刻な悲劇に対する配慮に欠け、トーンはまったく不適切なものでした」。そして怒りのコメントはインフルエンサーに向けず、ビオレ側に向けてほしいとも併記した。


キャセイパシフィック、乗客の英語をからかった乗務員を即解雇

香港のキャセイパシフィック航空で先週末、乗務員が英語をうまく話せない乗客をからかったことがネット上で拡散し、批判が巻き起こった。成都発香港行きの便で、毛布を頼もうとして間違えて「カーペット」と言ってしまった乗客に対し、「カーペットならば床に敷かれている」「英語で毛布と言えないならば渡せない」と笑いながら対応したという。

これを録音した音声ファイルが微博(Weibo)や小紅書(RED)など中国のソーシャルメディアに公開され、急速に広まった。キャセイパシフィックは月曜日に公式アカウントで謝罪し、火曜日には同社CEOの林紹波氏が、関与した乗務員3名を解雇したことを声明で発表した。
 

介護者に光を当て、支援サービスの利用を促進

家族や身近な人を無償で介護する人の中には、自身が介護者だと考えていない人が少なくないようだ。シンガポールの統合ケア庁(AIC)の調査によると、少なくとも一人の家族の介護を負担する回答者のうち、介護者だと自認していたのはわずか約半数(49%)だった。

そこでAICは介護者が負担を抱え込まず、支援を受けてもらいやすくなるようキャンペーンを開始した。3本の動画には、認知症の妻を支える74歳の男性、16歳の娘のメンタルケアを担う46歳の女性、自宅で闘病する父親を支える十代の青年といった、さまざまな年代の介護者が登場する。介護者に対する固定観念を助長せず、できるだけ現実感を持たせた自然な表現にするため、ワンカットで撮影し、感情を揺さぶるような音楽も使用していない。企画・制作はザ・シークレット・リトル・エージェンシー。

「私たちの伝えたいメッセージは明確でした」と語るのは、同庁の介護&コミュニティ・メンタルヘルス部門で副部門長を務めるシーイェン・セン氏だ。「私たちは、介護者が確実に認知されるようにしたかった。介護者が自分自身を見つめ、自身が重要な役割を果たしていることを認識し、介護支援のリソースを利用できることを理解してほしいと考えました。そしてその過程で、共感的な社会を構築したいのです」。

【お知らせ】

Campaign Asia-PacificPRWeekが主催する第22回「PRアワード・アジア」のショートリスト(ファイナリスト)が発表され、59カテゴリーで266作品が選ばれました。各賞の発表は6月14日、セントレジスホテル(香港)で行われます。詳しくはこちら(英語)

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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