Brandon Doerrer
2023年3月16日

サステナビリティの取り組みを正しく伝える方法

グリーンウォッシングとの批判の懸念から、ブランドがサステナビリティ活動の公表を躊躇する、グリーンハッシングの新たな時代が到来している。

サステナビリティの取り組みを正しく伝える方法

広告業界は、サステナビリティ活動に注力し始めている。これは、ブランドやエージェンシーが、炭素排出量の削減に向け果たすべき重要な役割に目覚め、オープンに取り組んでいることを示すものだ。

だが、地球を存続させるために明確で効果的な対策が求められている一方、サステナビリティに関するコミュニケーションは現在、グリーンハッシング(環境への取り組みを隠す)状態に陥っている。グリーンウォッシング批判や社会からの詮索の目から逃れようと、企業が自社の取り組みに口を閉ざしているからだ。

ESG(環境・社会・ガバナンス)レポートを公表する企業は、消費者のリアルな反発に、脅威を感じているのかもしれない。しかし、広告業界のサステナビリティ推進派は、測定フレームワークの標準を策定するには、こうしたレポートの公表が不可欠だと話す。

企業の取り組みが消費者に受け入れられるかどうかを保証する方法はない。しかし、正しいステップを踏めば、企業は自信を持って、持続可能性への取り組みを実践し、責任をもって公表できるようになるだろう。

第三者の専門家と連携する

環境への取り組みを公表しやすくするには最初が肝心だ。第三者の気候専門家との協力は、環境保護プロジェクトを順調に進める上でベストな方法の一つだと、アドテクプラットフォームのOpenXで最高経営責任者(CEO)を務めるジョン・ジェントリー氏は言う。

「この分野にはグローバルスタンダードが存在するが、我々はそのことをまったく理解していなかった」と、同氏は述べている。

プログラマティックSSPのOpenXは2022年5月、コンサルティング企業のナチュラル・キャピタル・パートナーズ(現在は合併によりクライメート・インパクト・パートナーズに改称)のカーボンニュートラル認証を自主的に取得し、測定の進捗状況や検証手順について指導を受けた。また、同社は継続的な品質保証のパートナーとして、ロイズ・レジスター・クオリティ・アシュアランスと提携している。そして、2022年6月にはスコープ3と提携し、自社のアドエクスチェンジを通じて行われるデジタル広告キャンペーンの炭素排出量の測定に着手した。

「我々は、自社で測定を行っているが、測定結果は、第三者機関に検証してもらう必要があった」と、ジェントリー氏は語る。

セブンス・ジェネレーション、ベン&ジェリーズ、ウォルマートといった他のブランドも、ピュア・ストラテジーズをはじめとするコンサルティング企業と提携し、科学的根拠に基づく目標設定や目標達成の計画策定で支援を受けている。

何年も前から、科学者は炭素排出量を削減するにはどうすれば良いか分かっていたが、広告業界に即したサステナビリティのフレームワークはいまだ確立されていない。だが、コンサルティング企業は、世界中で行われているサステナビリティ活動を、広告ビジネスに適用するためのガイド役になれると、ジェントリー氏は言う。

「何十年も前から存在している業界標準に(サステナビリティを)根付かせる必要がある」と、ジェントリー氏は述べ、自社の取り組みについて公表する企業が増えれば増えるほど、炭素排出量の測定に関するコンセンサスも確立しやすくなるはずだと付け加えた。

また、DE&I(多様性、公平性、包摂性)チームが、ESGフレームワークに信頼性を与えることもできる。優れたサステナビリティ活動は、社会から疎外されてきたコミュニティが気候変動から受ける過大な影響に対処する環境正義の要素を包含していると、メディアコンサルティング企業のイービクイティで最高製品責任者を務めるルーベン・シュルース氏は言う。

同氏は、「戦略説明や、パーパス、声明などから大切なメッセージを省いたり、トーンを落としたりすることなく、目指すべき柱があることを認めることが重要だ」として、「持続可能な社会のためには、人種的不公平の課題も避けて通れない」と述べた。

予算を公表する

クリーンな主張の裏付けとして多額の投資を行っている企業には、グリーンウォッシングとの非難はしづらいはずだ。そう話すのは、業界における活動団体であるクリーン・クリエイティブズでエグゼクティブディレクターを務めるダンカン・マイゼル氏だ。

「『金がものを言う』という表現があるように、自社の取り組みを公表する際は、その予算も同時に明らかにするのがベストだと思う」と、マイゼル氏は言う。「PR活動では、実際に投資を行っている取り組みだけを対象とするべきだ。そうすれば、PR内容にも信憑性が増し、人々が活動に賛同してくれる源泉にもなりえるだろう」

イービクイティのシュルース氏もこうした見方に同意し、遠大な目標を大々的に発表するよりも、サステナビリティの成果に焦点を当てたコミュニケーションの方が、消費者に受け入れられやすいはずだと話す。

シュルース氏は、「ブランドは、将来行う可能性があるに過ぎないことを、声高に宣伝しないように留意すべきだ」と述べ、「今、我々に必要なのは、実際に取り組みを始めることだ。我々は気候変動の危機に瀕している。サステナビリティは、ブランディングやマーケティングの手段ではない」と指摘した。

また、PRチームはその専門知識を活かして、企業がESGレポートを公開するタイミングについてアドバイスすることもできる。ただし、批判を恐れて、公表する準備ができている活動までひた隠しにすべきではないと、シュルース氏は忠告した。

環境を汚染するクライアントに注意する

エージェンシーは、仕事をする企業の選択に注意する必要があると、クリーン・クリエイティブズのマイゼル氏は言う。例えば、化石燃料企業と仕事をしていれば、発表したサステナビリティ戦略がいかによく練られたものであっても、批判にさらされる可能性はある。

排出量削減に取り組む広告団体も、化石燃料を利用しているクライアントやそのエージェンシーが、サステナビリティ関連のワーキンググループやプロジェクトへ参加することを許可するかどうかを決めかねている。これは、サステナビリティへの取り組み方に関して、業界コンセンサスが得られていない課題のひとつだ。

クリーン・クリエイティブズなどの団体は、化石燃料企業の仕事を請け負いながらサステナビリティに関して耳に心地よいストーリーを語ろうとするブランドやエージェンシーに批判的だ。クリーン・クリエイティブズは、カーボンフットプリントの削減を目指す業界団体アド・ネット・ゼロの米国支部の発足当日に、ソーシャルメディアで、化石燃料企業と仕事をしている会社が同団体に加盟していることを批判した。

もっとも、企業にサステナビリティ強化を求める消費者や支援団体が、活動の進捗に対して度を越えた批判を繰り返し過ぎると、企業が取り組み自体を放棄してしまう可能性もあると、イービクイティのシュルース氏は警告している。とはいえ、ブランドは世間から、いかに反発を受けようとも、努力し続ける必要がある。

報告が欠かせない理由

OpenXのジェントリー氏が言うように、広告業界が測定のフレームワークの標準化に一歩でも近づくには、各企業が自社の取り組みを公表することはとても重要だ。進捗を公表する企業が増えるほど、他の企業にとっても道筋ができ、取り組みの敷居が大きく下がる。

いずれにしても、企業はサステナビリティへの取り組みを公表することに慣れる必要がある。大企業に対し、サステナビリティ活動を投資家等のステークホルダーに報告するよう義務付ける、欧州連合(EU)の「Corporate Reporting Sustainability Directive(企業サステナビリティ報告指令)」が2024会計年度に施行され、2025年の決算発表から適用される予定だ。その対象は、従業員が250人以上、売上高が4000万ユーロ(約57億7800万円)以上の計5万社に及ぶとみられる。また、EU域外を拠点とする企業であっても、域内における売上高が1億5000万ユーロ(約216億円)以上ある場合はこの指令が適用される。

米国でも証券取引委員会(SEC)が、2022年3月に同様の法律を提案している。企業や投資家の反発がありながらも、年内にもこの法律の成立に向けた進展がみられそうだ。

一方、米連邦取引委員会(FTC)は、1月末、環境をテーマとした虚偽的広告の氾濫を防止するための、マーケター向けガイダンス「グリーン・ガイド」について、パブリックコメントの受付期間を延長した。

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Campaign; 翻訳・編集:

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