Staff Reporters
2020年1月24日

2020年代、注目のブランド

これからの10年間、アジア太平洋地域を牽引するブランドは −− 4人のエキスパートが占う。

2020年代、注目のブランド

2020年代は、アジア太平洋地域で展開するブランドにとってタフな時代となろう。この地域には、やがてGDP(国内総生産)で米国を抜き世界一の経済大国になる中国、世界で最も急速な経済成長を遂げるインドやカンボジア、バングラデシュといった国々が存在する。今後10年間の成長を目指す新旧ブランドにとって、主戦場になることは間違いない。

いくつかのブランドは既にアジアで飛躍的成長を遂げ、企業価値が10億米ドルを超えた。その一方、早い時期から市場を開拓し、確実に利益を上げてきたグローバルブランドもある。だが、全てのブランドが勝者となるわけではない。競争が激化すれば投資を断念したり、撤退を余儀なくされるブランドも現れるだろう。

刺激的な時代の幕開けに、Campaignは各クリエイティブ / ブランドエージェンシー(アナログフォーク、ランドー、1HQ、スーパーユニオン)のスペシャリストに、どのブランドが2020年代に躍進を遂げるのか、またその理由は何かを尋ねた。中国の家電メーカーXiaomi(シャオミ)の名が2度あがったのは興味深い結果だった。



フレディー・ルシュターハンド–デール(ランドー、地域戦略ディレクター)

1. 広州恒大淘宝足球倶楽部

サッカーは常にビッグビジネスだ。その中でスーパーブランドと言えば、これまでは欧州のビッグクラブに限られていた。だが、そうした一方的な状況が変わるかもしれない。既に小さな兆候が現れ始めている。中国では初めて、国内チームがマンチェスター・ユナイテッドやチェルシーの人気を凌ぎつつあるのだ。政府の肝いりで、中国代表チームは2030年までにアジアNo.1、2050年までに世界一の座を目指す(かなり高い野望だが……)。その困難な目標を達成するために力を入れるのが、官民挙げてのサッカー投資。中でも今後10年の台風の目になりそうなのが、広州恒大淘宝足球倶楽部だ。親会社はアリババで、昨年は中国スーパーリーグを制覇。アジアチャンピオンズリーグの常連でもある。これからはチーム名やロゴを冠した商品が更に出回り、ファンやタイトルも増え、新たなヒーローや「悪役」を多く輩出していくだろう。サッカー人気が高いことで知られるアジアで、「目覚めつつある巨獣」が存在感を高めていくはずだ。

2. BYD

2020年代は、環境問題がますますクローズアップされていく。2019年が森林火災とグレタ・トゥンベリの話題で終わったことは、決して驚きではないのだ。企業もこうした流れを大きなビジネスチャンスにつなげていくだろう。その一例が、電気自動車メーカーとして驚異的な発展を遂げ、世界一の規模となった「目に見えぬ巨人」BYDだ(ブランドとしては、どちらかと言えばまだ無名だが)。今も環境に配慮した車をクリーンな交通手段として市場に投入するが、そうした戦略もやがて変わるだろう。2020年代終わりまでに誰もが知るブランドに変貌するため、BYDは政府との提携や電気自動車タクシーへの投資、(移動手段に対する消費者の不変のニーズに合わせた)消費者行動の変革といった取り組みを目指す。そのターゲットは中国市場だけにとどまらない。「Build Your Dreams」の頭文字の通り、BYDが今後10年で目指す「ドリーム」は米国市場で米国企業と肩を並べること。米国ではイーロン・マスク率いるテスラとの競争が避けられないが、その目標は堅固だ。BYDの米国での成功は、急増する多国籍ブランドにとって確かなバロメーターとなろう。

3. ベトナム

一国の評価は、その構成要素によって形作られる。この何年か、韓国が「K〇〇」の名称で成し遂げたように、これからはベトナムというブランドが消費者の想像力を刺激していくだろう。それは、困難な歴史を乗り越えたベトナムの復興の象徴でもある。1980年代の改革政策に端を発する経済的安定は、間違いなくこの国の発展の基盤となった。国産のメガブランドがいくつか育ち、それらの商品を購入するテクノロジーに通じた若い中間層も確立。スタートアップも興り、電子機器やクリエイティブ、製造業といった分野も急成長を遂げた。そして今、この国独自の文化の輸出が始まっている。その一例が、アジアのコーヒー人気にひと役買うベトナムコーヒーだ。ハノイ発祥のカフェチェーン「コンカフェ(Cong Caphe)は、初の海外店をシアトルではなくソウルに出した。ベトナムコーヒーへの需要は、この国全体に対する需要の縮図とも言えよう。アジアの統合化が進み、航空会社も路線を拡張したことで、ベトナムを訪れる観光客は急増。ベトナムは2020年代に7%の経済成長率を達成し、輝かしい10年を送る −− そんな予測も、こうした点を考慮すれば大いにうなずける。



カレン・コール(1HQシンガポール、マネージングディレクター)

1. Xiaomi(シャオミ)

今年、10機種の5Gスマートフォンの販売を開始するシャオミ。5Gデバイスを4G並みに普及させようという戦略は、北京に拠点を置くこのブランドを一躍注目の的にした。最初に発売される機種は2000元(約3万2千円)以上のものになる予定だが、創業者のレイ・ジュン氏(写真上)は後に続く機種を「買い換えを予定する消費者が購入しやすいよう、あらゆる価格帯で設定する」と発表。成長の加速化とユーザーの増加を目指し、5G・AIoT戦略も既にスタートさせた。現存のユーザー数は300万人だが、その数は一気に増えていくだろう。

2. TikTok(ティックトック)

世界的なブームを起こしたこのプラットフォームは昨年後半、ひと月のアクティブユーザー数が5億人を突破、ツイッターとスナップチャットの合計数を上回った。その数は更に増えていくだろう。2020年に企業からの需要が増えるのは、まだ飽和状態になく、よりコミュニティーに根差したティックトックのようなプラットフォームだ。その中で存在感を確立したいブランドにとっては、ティックトックがファイヤーワークのようなアプリとの競争を乗り切るため、ペイドメディアとの関係をどのように変えていくか興味深いところだろう。

3. WeChat(ウィーチャット、微信)

昨年、ウィーチャットの成長は減速したものの、ユーザーは3.2%増加。依然、高価格帯のデバイスで最もよく利用されるチャットアプリだ。今年は広告価格を下げたり、専用のCRMツールでブランドと顧客との関係を強化したりと、様々な刷新でユーザーとブランド双方に新たな機会を提供、更なる成長を図る。今年は中国のキーオピニオンカスタマー(KOC)が、キーオピニオンリーダー(KOL、中国版インフルエンサー)よりも重要な存在になるだろう。その影響力を高める上で、ウィーチャットは非常に大切な役割を果たすと予想される。



クリス・ライアン(アナログフォーク・アジア共同創業者、MD

1. 未定

いきなり責任逃れをするわけではないが、2020年代はまだ存在していないブランドが少なくとも一つ、大きな注目を集める。2008年からのブランドの勢力図の変化を考えてみてほしい。その速さは呆れるほどだ。今は精神的な健康や社会のプレッシャーが大きな話題になる時代。今後出現するブランドは、福祉や健康に関わるサービスを提供することだろう。瞑想アプリの「ヘッドスペース(Headspace)」然り、「カーム(Calm)」然りだ。

2. インポッシブル・フーズ

アジア太平洋だけでなく、他の地域でも強いインパクトを放つインポッシブル・フーズ。人工肉に対する我々の考え方を変え、製造過程で環境への負荷を減らし、集約農業の根絶を目指しと、その活動は画期的だ。ビジョンとして掲げる「To Save Meat. And Earth(肉の消費を抑えるため、そして地球を救うために)」という言葉が私は大好き。10年前には存在すらしていなかった企業が、2020年代は時代の推進役となろう。

3. ディズニー

三つめは、エンターテインメントの世界を牽引するとても古いブランド。特にアジアの人々はディズニーへの愛着が深い。所有する素晴らしいコンテンツの数々、ストリーミングサービスの開始、テーマパークの拡大 −− 同社は2020年代も「マジカルなエクスペリエンス」を提供し続けるだろう。



アンブリッシュ・チャドリー(スーパーユニオン、マネージング・ストラテジー・ディレクター)

1. Lazada(ラザダ)*

ラザダは、更なる高みにのぼるあらゆる要素を備えている。ロジスティックスのきめ細かいネットワークを作り上げ、消費者の親近感を強め、東南アジアにおけるeコマースの敷居を下げた。テクノロジーのノウハウなど、アリババグループによるバックアップもメリットだ。ラザダのオンラインショッピングへのアプローチは、ますます体験重視型になっている。「ショッパーテインメント」であるゲームやグループディスカウントの提供、ライブストリーミングなど、消費者のモチベーションを利便性からエンゲージメントへとシフトさせている。また、ブランドパートナーシップの強化や小規模な小売業者を意識したより良いツールの開発にも注力。カテゴリーが細分化されれば、ブランドはオンライン上で差別化を強め、消費者が求める大幅なディスカウントはしなくなる。こうした点全てを考慮すると、ラザダは今後10年を牽引するキーブランドになろう。

2. Grab(グラブ)

この原稿を書いている最中にも、私のスマホにグラブのクレジットカードを勧める広告が表示された。東南アジアで展開するグラブは単なる配車アプリを超越し、人々の日常をあらゆる方法で快適にしようと努める「生活のコンシェルジェ」だ。既に東南アジアのほとんどの国で利用されているが、1日単位、月単位のユーザー数はますます増加傾向にある。顧客ロイヤルティを高めるため、月毎の請求や還元システムなどサービスも多角化。インドネシアのGojek(ゴジェック)がシンガポールに参入した際もこうしたサービスが奏功し、料金の値下げなどをせずビジネスを堅持した。今後はどう変わっていくのか。東南アジアにおけるアプリ間の覇権争いはもう始まっているが、いずれにせよ、グラブが良いポジションにいることは間違いない。

3. シャオミ*

シャオミは既に過去10年で大きな足跡を残した、という人もいるだろう。だが、その将来は更に明るい。シャオミの成功の大きな要因は、極めて幅広い品揃えで価格に合ったクオリティーの高さを忠実に維持していることだ。ただしそれは成長市場での拡大だけを狙った戦略ではなく(例えばインドでは、スマホとウェアラブルでシェアが首位)、米国や英国といった市場での成功も視野に入れている。競合他社と比較しておそらく優れている点は、ハードウェアとソフトウェアの専門知識を等しく持ち合わせていることだろう。大抵の企業はどちらか一方に長けているが、シャオミは一貫して両面で優れた能力を発揮してきた。今では低価格のイメージを脱却し、高価格帯の品揃えで高級ブランドとしての側面をアピールしつつある。より明確なブランド作りとコミュニケーションを実現すれば、2020年代がシャオミの時代になる可能性は十分だ。

*ラザダとシャオミはスーパーユニオンのクライアント

(翻訳・編集:水野龍哉)

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