Matthew Keegan
1 日前

AI、著作権、そして創造性:イノベーションと搾取の微妙な線引き

テック大手が著作物を用いたAI学習を政府に働きかけ、アーティストが作品を守るために訴訟を起こす中で、広告業界は著作権、クリエイティビティー、そしてクリエイターの仕事を尊重しながらAIを組み込むという課題に直面している。

AI、著作権、そして創造性:イノベーションと搾取の微妙な線引き

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

「生命に対する侮辱」「極めて不愉快」――。アニメーション界の巨匠、スタジオジブリの宮崎駿監督が2016年にAIについてこのように表現した動画が、最近話題となった。「僕はこれを自分の仕事とつなげたいとは全然思いません」、さらに「極めてなにか生命に対する侮辱を感じます」という宮崎の発言が、著作権で保護された創作物によってAIツールが学習することへの倫理的な懸念、そしてこれが人間のアーティストやクリエイティブ産業の未来にとって何を意味するのかという議論を再燃させた。

そして先月、有名なインターネットミームや個人の写真をスタジオジブリ作品のような画像にできる新しい画像生成ツールをChatGPTが提供し、インターネット上にジブリ風のポートレートが大量に投稿されたことで、この議論はさらに激化した。ChatGPTを開発するオープンAIのサム・アルトマンCEOも、SNSのプロフィール画像をジブリ風のものに変更。しかし、ChatGPTがジブリ風のスタイルを学習するライセンスを取得していたのか、あるいは著作権侵害に該当するのかは依然不明だ。

アーティストのカルラ・オルティス氏はAP通信の取材に対し、「ジブリのブランドや名前、作品、評判を利用して(オープンAIの)製品を宣伝している。侮辱であり搾取です」と強い非難を表明した。

人工知能について「生命に対する侮辱」「極めて不愉快」と評したアニメーション界の巨匠、スタジオジブリの宮崎駿監督
 
 
著作権法の改正

一方、オープンAIやグーグルといったテック大手は、AIへのフェアユース(公正利用)の適用は「国家安全保障の問題」だと主張し、AIモデルが著作物で学習することを認めるよう政府に働きかけている。日本やシンガポールなど一部の国では既に、AI学習に著作物の使用を認めるよう法改正を行い、英国や香港も同様の措置を検討中だ。しかし、これはフェアユースではないと主張する者もおり、参照する作品ごとにアーティストに報酬を支払う必要が生じることでAIプラットフォームのコストが上昇しても、それはそれで構わないという意見だ。

台湾を本拠とするマネジメントとデジタル著作権のコンサルティング会社「APAC GATES」のマネージングディレクター、セス・ヘイズ氏は「一部の政府はテキストデータマイニング(TDM)を、著作権侵害の例外として認める選択肢を検討しています。これはAI業界に利益をもたらし、この分野への投資とイノベーションの促進を目的としています」と説明する。また、著作権所有者によるオプトアウトを含む提案もあるが、技術的な実現可能性には依然として課題があるという。

法的な例外に加え、一部の立法者や業界団体は創造物を保護する新たな権利を提唱している。例えば日本アニメフィルム文化連盟は、作品の特定の「作風」を保護する法整備を求めている。別のアプローチとして、著作権管理団体(CMO)が権利者に代わって著作権料を徴収するという仕組みも提案されている。

ヘイズ氏は、知的財産(IP)関連の既存の法を強化することが最善の道だと考えている。特に重視しているのは、パブリシティ権や肖像権(ディープフェイク対策)、トレードドレス(製品の外観やイメージの保護)、商標の希釈化、パッシングオフ(詐称通用)、不正競争といった未整備な分野への対応だ。「多くの国はこれらの種類のIPを認識しておらず、発展させるべきです」と同氏は述べ、特に英国普通法(コモンロー)の法域では21世紀に合わせたアップデートが必要だと強調する。

一方、SaaSやテクノロジーを得意とし、AIや著作権法が専門のカリフォルニア州の弁護士、マーク・ホーグ氏はAI学習によってクリエイターが損害を被るという主張は誤りだと反論する。「AIは作品を保存したり検索したりせず、パターンを重みへと変換します。真の損害は、エンドユーザーがAIを意図的に悪用して複製や侵害を行う、出力の段階で発生します。規制は、まさにそこで行うべき。(AIによる)学習は複製ではないということを私たちが認識しない限り、問題を見誤り、イノベーションを危険にさらすことになります」。

さらに、AI学習は作品の複製や保存を、固定的な意味で行うものではないと主張する。「インプットされたデータを統計的な重みに変換するだけで、アウトプットではありません。ここでライセンスを強制するというのは、自分の意見が形作られる前に読んだ全ての記事についてライセンスを取得しようというようなものです」。原則として報酬の支払いを求めるのであれば、AI学習を著作権から完全に除外するという例外規定を設けることが唯一の賢明な解決策だと同氏は述べる。

イノベーションと搾取の微妙な線引き

イノベーションと搾取の間にある緊張感を、アーティストやクリエイターは肌で感じている。著作物を用いてAIモデルを学習させることは違法ではないという主張に、多くの人々は反発。ビジュアルアーティストや、ニューヨーク・タイムズなど出版社は、オープンAI、マイクロソフト、ステーブル・ディフュージョン(Stable Diffusion)、ミッドジャーニー(Midjourney)、デヴィアンアート(DeviantArt)といったAI企業に対して著作権侵害で提訴した。ある訴訟では、AI画像生成ツールが膨大なデジタル画像を読み込み、オリジナルと競合する派生作品を生成することで何百万人ものアーティストの権利を侵害していると問題視している。

クリエイティビティーに大きく依存する広告業界では、スクレイピング(ウェブサイトから大量のデータを自動的に収集)されたデータをAI学習に使用することの法的不確実性から、多くのエージェンシーは慎重に対応している。R/GAのアジア太平洋地域担当CEOであるマイケル・ティッツホール氏によると、同社では著作権侵害を防ぐシステムや原則が適切に機能していることを担保するため、会社単位で契約を結んだプラットフォームのみを使用しているという。「プラットフォーム、ブランド、エージェンシー間での契約は、権利と責任がすべて明確になるため不可欠です」。

クライアント向けの作品制作において重要なのは強固な指針だと同氏は強調する。「スタジオジブリ風画像の例のように、一般の人々が制限なく何でも生成できるようなツールは注意すべき。10年前にスタジオジブリの作風を許可なく模倣しなかったのと、同じルールが現在も適用されます。私たちは独創的で敬意を表し、なおかつ法的にも問題の無い作品を生み出すため、クリエイティブの著作権を理解する経験豊富な人材を頼りにしています」。

ChatGPTのサム・アルトマンCEOは、ソーシャルメディアのプロフィール画像をスタジオジブリ風のポートレートに変更した
 

AI学習のためのTDMを支持するティッツホール氏だが、広告業界は長きにわたって掲げてきた独創性へのコミットメントを守るべきだと説く。「AI学習のためのTDMはフェアユースとみなすことができると考えています。しかし、ここでも重要になるのが意図です。もしアウトプットが明らかに特定のアーティストの作風やクリエイティブ・アイデンティティーを模倣するよう設定されているのであれば、それは一線を越えています」と同氏。「クリエイターの権利を守るために、これまで常に従ってきた原則を適用することが極めて重要です。ブランド、エージェンシー、そしてクリエイティブコミュニティーの一員として、私たちはこれらの基準を守る責任がある。これは私が心から大切にしていることです」。

コンプライアンスだけでなく、クリエイティブの信頼性の問題でもある

BBDOは最近、グローバル・イノベーション&AIコミュニティー・カウンシルを設立した。これは、従業員が知見を共有し、ベストプラクティスを遵守しながら新興のテクノロジーで創造性を高める方法を探求するフォーラムだ。

BBDOアジアでエージェンシー・コミュニケーションズ責任者を務めるカミラ・グレディッチ氏は、このように強調する。「これはコンプライアンスだけの問題ではなく、クリエイティブの信頼性の問題でもあります。AIは、優れた考えをサポートするものであって、短縮するためのものではありません。私たちはAIを、単に生成の量を増やすために利用しようとしているのではありません。AIが生成する『ごみ』のようなコンテンツがあふれる世界を、なんとか通り抜けなくてはならない時代が、既に到来しています。そして私が『ごみ』と表現するのは、適切な意図や整合性、適切なマインドセットなしに作成されたコンテンツであることが多いからです」。

新たな法律がクリエイター、AI開発者、そして消費者の利益のバランスを効果的にとることができるかは不明なままだ。技術とビジネスモデルが急速に進化する中、個々の商取引の細部にまで踏み込む法律となることは考えにくいだろう。「裁判例がライセンス契約を促進する可能性はあります」とヘイズ氏。「実際にシンガポールと日本の姿勢は、ライセンシングによる自主的かつ円満な解決を政策立案者が望んでいることを示しています。もちろん、企業が学習データに含まれるすべての著作権者に十分な報酬を支払うという方法は、経済的に不可能かもしれません」。

こうした課題にもかかわらず、クリエイターの作品が学習に利用される際にAI企業が公正な報酬を支払うことに対して、支持の声が広がっている。「モデルが誰かの創作物から利益を得ているのであれば、その価値は認められるべき」とグレディッチ氏。「報酬モデルは単純ではないかもしれませんが、原則としては正しい。長期的に見れば、広告のクリエイティビティーを高める可能性もあります。より優れたAIツール、より倫理的な利用、そして作品の根底にある本来の輝きを尊重するようなパートナーシップを促進するでしょう。すると、自動化が行き過ぎてクリエイティビティーがその魂を失うような未来を避けられるかもしれません」。

一方、著作物を用いた学習はフェアユースに該当するというAI業界の主張に、賛同する者もいる。VCCPのイノベーション責任者で、自身の書籍やブログ記事がAIモデルの学習に利用されたクリエイターでもあるピーター・ガストン氏は「AIモデルは単に受け売りにしているのではなく、学習データを関連性のあるものへと変換します」と説く。映画『アバター』のジェームズ・キャメロン監督もこの違いを認識し、多様なデータでの学習を支持していると同氏は指摘する。

学習データごとに支払いを求めることで、少数の大企業に権力が集中するのではないかというのがガストン氏の懸念だ。「それは広告業界にとっても誰にとっても、健全な状況ではありません。オープンソースとして無料で公開されるAIモデルには、学習データへの自由な使用を認めるべき。そうすることでクリエイティビティーとイノベーションが促進されるというのが私の意見です」。

一方、R/GAのティッツホール氏は、ツールがクリエイターの作風やアイデンティティーを模倣するよう設定されている場合、そのクリエイターは従来の制作と同様、自身の条件に応じた報酬を得るべきだと考えている。「AIが登場する前は、特定の意匠や雰囲気を求めるならば単にそれを真似するのではなく、その人を雇う必要があったものです。イラストレーター、ナレーター、映画監督などそれぞれが独自のスタイルを持ち、それに応じた報酬を得ていました。現在も同じことが当てはまるはずです」。

AIは広告の根幹を揺るがすものではないというのが、同氏の見解だ。「これまでと同じ論理で報酬を扱い、慣れ親しんだクリエイティブのワークフローにAIプロセスを組み込めば、公正かつ持続可能な方法で前に進むことは可能」とティッツホール氏は結論付ける。「突き詰めると、常に注意するべきなのは権利の侵害です。この分野における信頼性の未来は、企業間の契約、AIプロバイダーからの透明性のあるコミットメント、そしてプロバイダーとエージェンシー両者による責任の明確化などにかかっていると思います」。

 

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