David Blecken
2017年12月06日

JALは時間の正確さを訴求するだけでよいのか?

グローバルブランディングのための新CMは安心感を与えるものの、面白さに欠ける内容となった。

JALは時間の正確さを訴求するだけでよいのか?

M&Cサーチが制作した日本航空(JAL)の新しいグローバルブランディングキャンペーンは、時間に正確であることが主たる訴求ポイントとなっている。

そのコンセプトの根拠となっているのは、JALがこれまで何度も表彰されてきたという事実だ。国際線の運行情報に特化する米フライトスタッツ社はこれまでJALを過去5回(2009年、2010年、2012年、2013年、2015年)、定時到着率の高さで表彰しており、CM内でもこのことは紹介されている。「搭乗する人にとっても、到着を待つ人にとっても時間は貴重なもの」や、「The Airline, On the Dot(時間に正確な航空会社)」というキャッチフレーズにも、信頼性の高さが表現されている。

M&Cサーチの代表である越野民雄氏は声明の中で、人々の感性と理性の両方に訴えかけることを目指したと述べている。時間や約束を必ず守る几帳面さは世界中で評価される価値であり、これは「日本人にもともと備わった国民性で、それが信頼性のシンボルとなった」という。

グローバルキャンペーンがターゲットとするのはアジア、欧州、北米の市場で、キャンペーンは今後3年間展開していく予定。JALはいくつかの広告会社と契約しているが、今年の初めにM&Cサーチも指名している。

Campaignの視点:
航空会社のブランディングは難しい、というのが本音だ。「日本は時間に正確なことで有名」という前提は、理にかなっているだろう。11月には、電車が20秒早く発車したことについて鉄道会社がお詫びのプレスリリースを発表し、このニュースが海外でも話題になったほどだ。

重要なのは、時間に正確な国はドイツやスイスなど、日本の他にいくつもあることだ。フライトスタッツ社の2016年の調査では、定時到着率が一番高かったのはKLMオランダ航空で、次点はスペインのイベリア航空。JALは3位で、前回の受賞は2年前にさかのぼる。

消費者は、高付加価値を売り出す航空会社を評価する際に、時間の正確さを「特典」ではなく、むしろ不満な気持ちにさせないための必要最小限な「衛生要因」だと捉える。JALは他の航空会社よりも、このセールスポイントを力強く訴求できる立場にあるかもしれないが、どんなに優れた航空会社であっても遅延や欠航は避けられない。そのため、必ず守れるとは限らない約束をJALが結ぼうとしているようにも見えてしまう。そして、サービスの信頼性の高さの他にも、例えばユーモアのセンスやユニークなおもてなしなどといった、別の要素が必要なのではと思えてならない。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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