Daniel Farey-Jones
2022年8月19日

WPP、大量採用に伴うコスト増だが、業績予想は上方修正

コカ・コーラ案件の獲得が追い風となり、WPPは2022年上半期、8.9%のオーガニックグロースを達成した。

「スプライト」は、WPPが2021年11月にコカ・コーラから獲得したグローバル案件の一つだ。
「スプライト」は、WPPが2021年11月にコカ・コーラから獲得したグローバル案件の一つだ。

景気の雲行きが怪しくなるなか、オグルヴィやグループエムを傘下に持つWPPは、持株会社の中で、力強い成長を報告した最新の事例となった。同社は「クライアントの需要は、あらゆるサービスで順調に推移している」として、市場の不安払拭に努めている。

WPPは8月5日に発表した2022年上半期の決算報告で、純売上高(売上からパススルーコストを除外した金額)がオーガニックで8.9%増加し、55億ポンド(約8940億円)に達したと明らかにした。報告書によれば、純売上高は、2021年上半期比で12.5%増となる。

また営業利益は、前年同期比11.4%増の5億3900万ポンド(約876億4000万円)、税引前利益は、前年同期比6.1%増の4億1900万ポンド(約681億3000万円)だった。資産売却等の影響を除くヘッドライン収益では、営業利益が8.2%の増加、税引前利益は12%の増加となっている。

WPPの最高経営責任者、マーク・リード氏は、「クリエイティブ、メディア、PRの各事業で幅広く成長できたおかげで、上半期は好調に推移した」と述べている。

第2四半期だけを見ても、WPPは世界市場で8.3%のオーガニックグロースを記録している。ただし、他の多くのライバルと比べればそれほど良好な結果とも言えない(ハバスは11.5%、オムニコムは11.3%、ピュブリシスグループは10.3%だった)が、7.9%の伸びに留まったインターパブリックグループは上回った。電通グループの決算報告は8月12日だ。

WPPは、ピュブリシスやインターパブリックグループ、オムニコムに続いて、2022年通年の売上見通しを上方修正した。ワンダーマン・トンプソンやエッセンス・メディアコムの親会社でもあるWPPは、オーガニックグロースの予測を従来の5.5~6.5%から6~7%へ上方修正した。

また、ヘッドライン営業利益率も約0.5ポイント上方修正した。インセンティブを除く人件費コストが、16.7%増の38億ポンド(約6180億円)に増加しているにもかかわらずだ。

このコスト増は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に減った人員を回復させようと、昨年6月30日以降、従業員を1万1000人増やしたことによるものだ。今年6月30日時点の、WPPの従業員数は全世界で11万5000人に上る。

さらにWPPは、2021年6月に実施した給与水準見直しの影響を通年で反映させた。ただし、2021年上半期に合計2億ポンド(約325億円)もの金額に達していた賞与は、9350万ポンド(約152億円)にまで減額している。

ここで注目すべきは、人件費の増加ペースが収益を上回っていたことだ。同じ現象に見舞われたS4キャピタルは、これを理由に利益予測を3000万ポンド(約48億7800万円)下方修正している。S4キャピタルは、WPPの元最高経営責任者であるマーティン・ソレル卿が設立した新会社だ。

だがWPPは対照的に、利益見通しを上方修正したが、投資家らによる決算分析が進んだ結果、WPPの株価はこの日の朝に7%も下落した。

最高経営責任者のリード氏は、第2四半期にアウディ(子会社のオグルヴィが米国で獲得)、オーディブル、ダノン、ネイションワイド相互保険から「重要な案件を獲得」したと述べるなど、WWPの新規案件の業績を評価した。

また、昨年11月にマーケティング予算を抜本的に見直したソフトドリンク大手のコカ・コーラから40億ドル(約5370億円)規模の契約を勝ち取った件にも触れ、「コカ・コーラ案件は順調に進んでいる」と強調した。

「上半期にはスプライト向けの、初めての一貫したグローバル広告プラットフォームを発表し、『Heart Happens』キャンペーンを200の市場で展開した」と、リード氏は述べた。

さらに、WPPを「世界で最もクリエイティブな会社」にするという野心を改めて示したリード氏は、体験、コマース、テクノロジーという「高成長」分野で成果を上げたことをアピールした。

これらの分野が、グループエムを除く、WPP傘下のグローバル総合エージェンシーの売上に占める割合は39%となり、2019年の35%から着実に増加している。

提供:
Campaign UK

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