Tatsuya Mizuno
2021年8月20日

Z世代の憂鬱:マッキャン調査

マッキャン・ワールドグループが世界のZ世代に関する調査を実施した。その結果浮き彫りになったのは、日本の若者の消極性だ。

(Shutterstock)
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この調査結果は「日本のZ世代の真実」と題し、国際青少年デー(8月12日)に合わせて発表された。マッキャンは今年3月、世界各国で2年間かけて行ったZ世代の調査を発表。その結果に基づき、改めてアジア太平洋地域諸国で調査を実施した。対象となったのは日本・中国・インド・シンガポール・マレーシア・香港・フィリピン・タイ・韓国・オーストラリアの10の国と地域、15歳から24歳までの5000人のZ世代。

日本の若者の特徴をよく表したのは、以下の3つの結果だ。

  • 「自分が住む地域社会に積極的に貢献する責任がある」と答えた日本のZ世代は48%。世界平均は79%で、調査対象国中、最低値。
  • 「自己表現は他者に不快な思いをさせないよう、気を使うべき」と答えた者は42%。世界平均は59%で、同じく最低。
  • 「世界をポジティブに変えた人物として人々に記憶されたい」と答えた者は11%。世界平均は26%で、同じく最低。

さらに日本のZ世代の特徴を見てみよう。

「周囲との調和よりも真実の追求が大切」と答えた者は47%(世界平均は58%)。また、「感覚的な言葉」を優先し、上の世代とは「速さ」に関してギャップを感じていることがわかった。

「ジェンダーは流動的概念」と答えた者は57%。世界平均の64%とさして大きな隔たりはなかった。また「抗議活動に参加したことがある」と答えた者はわずか1%で、世界平均の19%を大きく下回った。ただし「企業には社会善のための行動をとってほしい」と考える者は多く、自らは行動しない傾向がわかった。


ベビーブーマー世代(1946年から64年頃までに生まれた世代)との比較も興味深い。「スマートフォンが発明されなければよかった」と考える日本のZ世代は34%であるのに対し、ベビーブーマーでは24%。世界平均も同様の結果で、意外にもZ世代の方がスマホに対して否定的な考えを示した。また、53%の日本のZ世代が「友人や家族といても孤独を感じる」と回答。この数値はどの他の世代よりも多く、メンタルヘルスが若者の間で重要なテーマであることを示す。

「安心感を与えてくれるブランドがほしい」と答えた者は87%。世界平均の76%よりも10ポイント以上高かった。コロナ禍で、ブランドへの依存は世界的に増加傾向にある。

これらの結果をまとめ、日本のZ世代の特徴は以下の6つにまとめられるとマッキャンは指摘する。

  • 「速い」は当たり前
    若者にとって「速さ」が重要というより、「速いのは当たり前」。ユーザビリティーが低い、あるいは対応が遅いブランドは避ける。特に「対応の遅さ」には、上の世代とのギャップを感じる。
  • 感覚的
    カギとなる言葉は「バイブ(=vibe、気分や雰囲気)」。これは言葉で説明できるコンセプトではなく、感じるもの。その理由を求めるのはナンセンスと考える。上の世代にバイブを理解してもらおうとは思っておらず、自分に合ったものは自分で選ぶ。企業やブランドのバイブには、ソーシャルメディアを通して触れる。
  • オーセンティシティー(=authenticity、真実・信頼性)」を好む
    ソーシャルメディアとともに生きてきた若者は、これまで多くの「炎上」を目撃してきた。したがって誇張やフェイクには否定的で、完璧さよりも嘘のないリアルさ、等身大を好む。企業やブランドのメッセージに対しても同様。一方で周囲からはみ出ることを恐れ、他者の視線を気にする。
  • ボーダーレス、タイムレス
    ソーシャルメディアの登場で、今では時代や場所にかかわらず自分の好きなものを見つけられるようになった。日本では特に伝統文化や数十年前のカルチャーの人気が高い。予測の難しい、変化の速い時代を生きるからこそ、トレンドにとらわれないものを好む傾向がある。
  • 「違う」は当たり前
    異なる考えや属性、性格を持つのは当たり前で、それによって周囲から異なる扱いを受けることに疑念を抱く。ダイバーシティーに関して特に強い興味を抱いているのは、ジェンダーとセクシュアリティー(性的志向・性自認)。日本は同質社会なので、人種問題は身近に感じづらい。社会的課題への意識はあるものの、行動を起こすのはあくまでも少数。それゆえ大多数は、企業やブランドに社会変革を促す行動を求める。
  • 「つながること」の矛盾
    メンタルヘルスの改善は最重要課題の1つ。「常時接続」が当たり前の時代だからこそ、つながることへのストレスや深い孤独感に悩まされる。ブランドにとって重要なのは、こうした若者に安心感を与えること。それも、真正面からこうした悩みに向き合うのではなく、ユーモアを前面に出し、若者同士の対話のきっかけをつくるようなアプローチが支持を得る。

マッキャンのプロジェクトプランナー、上坂あゆみ氏は以下のように総括する。「『速さ』の捉え方やオーセンティシティーへの姿勢、メンタルヘルスの悪化などは世界の若者に共通する傾向です。日本で際立ったのは、上の世代に対する大きなギャップ、そして他者とのコミュニケーションや社会的活動にためらいを感じていることです」

(文:水野龍哉)

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Campaign Japan

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